皆様、こんにちは。U5swです。
今回は最近明らかになった、東武東上線と直通運転用に導入が発表された、新型車両90000系の今後の導入計画が明らかになったので、その紹介と、従来車の今後の行方を予想していきます。
東武90000系は、東武東上線(池袋〜小川町間)とその直通先である東京メトロ有楽町線・副都心線、東急東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線に乗り入れるために導入される新型車両です。
90000系導入発表時の導入両数は70両で、10両編成7本となります。これは、未だ東上線と直通先で爆音モーターを撒き散らしながら走り続けている9000型の10両編成7本を置き換えるための両数と合致します。
90000系の導入発表に関する詳細は、こちらの記事で紹介しています。
そんな東武90000系に関する増備計画ですが、去る2025年11月17日に東武鉄道株式会社が発表した、”2025年度 第2四半期(中間期)決算説明資料”において、新型車両導入計画に気になる情報が入っていました…
↓2025年度 第2四半期(中間期)決算説明資料
https://www.tobu.co.jp/cms-pdf/explanatory_materials/20251114175151WZvPXgMGzoSCWaE8oimkKw.pdf
この資料p.36の中期経営計画の推進→持続的な鉄道事業の確立を目指して→快適性・環境性能に優れた新型車両の導入の欄に、新型車両90000系の説明が書かれており、そこには、
90000系の導入(東上線)
2026年春以降、9000系の代替として7編成導入するほか、
10000系・30000系の代替として順次導入
と明記されていました…
“10000系はおろか、30000系まで置き換え!?!?!?”
この記事を見た時、私は衝撃を受けました…
10000系列に関してはここ最近廃車が進んでいるためまだ理解できますが、まさか30000系まで置き換えの対象だとは思いませんでした…
後のニュースによると、東武東上線の池袋〜小川町間は、最終的に自社車両を50000系列と90000系に統一する模様です。更に、90000系は導入する全編成において、”地下直対応”を行う予定であり、50000型と50070型みたいに地下直の有無を判別することはしないようです。この理由として、
“90000系に統一することで、機器の共通化やメンテナンス方法の統一化が行えるというメリット”
があるためと述べています。
これからは、東上線に在籍している10000系列と30000系に関して、現状の陣容と今後の予想に関してまとめていきます。
10000系列には、コルゲート車体の10000型と、ビードプレス車体の10030型の2種類に大きく分類できます。また、10030型には、10両固定編成と6+4両分割編成(半固定化)や、未リニューアル編成とリニューアル編成、更にはリニューアル編成の中にVVVF化改造編成と未改造編成がいるなど、細かく分かれています。
10000型は2025年12月現在、10両固定編成が3本在籍しています。なお、3編成とも未リニューアルです。
10030型は2025年12月現在、10両固定編成が2本、6+4両分割編成(半固定化)が10本在籍しています。
30000系は2025年12月現在、6+4両分割編成(半固定化)が15本在籍しています。
次に、90000系が導入されて置き換えられる場合の10000系列と30000系の予想に関してまとめていきます。
まず、10000型ですが、現在生き残っている10両編成3本とも、登場時から既に35~40年が経過しており、リニューアルもなされていないため、全て廃車が濃厚と言えます。
実際10000型では、東上線にもう1編成10両固定編成があった11004Fが重篤な故障により廃車されています。また、本線系統の10000型では、余剰によって”リニューアルされた編成”が既に廃車となっています。
このことから、10000型はほぼ100%でお役御免になってしまうでしょう。
次に、10030型ですが、こちらも基本的には廃車される方向であると見ています。特にリニューアルされていない編成はほぼ確実に廃車、リニューアルした編成も、制御装置がチョッパ制御のままの車両は廃車になるでしょう。
実際、10030型にも廃車が発生しており、経年が30年経たないまま既に廃車となってしまった編成もいます。また、VVVFインバータ制御の試験車両として4両編成1本が導入された10080型は、その後機器更新やリニューアルがされつつも、2023年に廃車となってしまいました。
また、現在80000系の導入と5両編成化が進む野田線系統に在籍する10030型も、最終的に60000系と80000系で統一されることから、10030型も撤退対象となることが決定しており、リニューアルの有無に関わらず廃車対象となるでしょう。
このような流れから、東上線の10030型も90000系の増備によって廃車となるでしょう。
但し、製造が終了していた界磁チョッパ制御の部品確保を目的に、リニューアルと同時に日立IGBT-VVVFに換装された11032Fと11639+11443Fに関しては、処遇が不透明です。
少数派でインバータ車とはいえ廃車という可能性もありますが、90000系の製造数によっては東上線に残る可能性もありますし、本線系統に転属、6両編成2本と8両編成1本に編成組替を行って、浅草ローカル(浅草〜北千住間)、館林ローカル(久喜〜館林間)、区間急行、区間準急用として活躍する可能性もあります。
| 編成 | 10号車 (クハ) | 9号車 (モハ) | 8号車 (モハ) | 7号車 (サハ) | 6号車 (モハ) | 5号車 (サハ) ※暫定 | 4号車 (サハ) ※暫定 | 3号車 (モハ) | 2号車 (モハ) | 1号車 (クハ) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 11032F | 11032 | 12032 | 13032 | 14032 | 15032 | 16032 | 17032 | 18032 | 19032 | 10032 |
| 11639+ 11443F | 11639 | 12639 | 13639 | 14639 | 15639 | 16639※ | 11443※ | 12443 | 13443 | 14443 |
| 編成 | 8号車 (クハ) | 7号車 (モハ) | 6号車 (モハ) | 5号車 (サハ) | 4号車 (サハ) | 3号車 (モハ) | 2号車 (モハ) | 1号車 (クハ) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 118??F (11032F) | 118?? (11032) | 128?? (12032) | 138?? (13032) | 148?? (16032) | 158?? (17032) | 168?? (18032) | 178?? (19032) | 188?? (10032) |
| 編成 | 6号車 (クハ) | 5号車 (モハ) | 4号車 (モハ) | 3号車 (サハ) | 2号車 (モハ) | 1号車 (クハ) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 11639F | 11639 | 12639 | 13639 | 14639 | 15639 | 16639(クハ化) |
| 116??F (11443F) | 116??(クハ化) (11443) | 126?? (12443) | 136?? (13443) | 146?? (14032) | 156?? (15032) | 166?? (14443) |
元々は東京メトロ半蔵門線・東急田園都市線直通用として本線系統の半直車で活躍するも、田園都市線の混雑と6+4両の分割編成の弊害により、2編成(31606+31406F、31609+31409F)を除き早々に50050型に置き換えられ、6両と4両それぞれ離れ離れになって本線の至るところの普通列車を中心に活躍することとなりました。
しかし、2016年に東上線の池袋〜小川町間の信号保安装置がデジタルATCに切り替わることから、元半直車でATCを搭載して運行していた実績のある30000系が東上線へ転属となりました。転属と同時に再度10両固定化がなされ、連結面は前照灯等の灯具類やマスコンハンドルは取り外されています。そして、2020~21年に半直車として残り続けていた2編成を、東上線の50000型51008F,51009Fとトレードする形で東上線へ転属したことで、30000系全編成が東上線に集結しました。
但し、東武の通勤型車両としてはまだ”若い”部類に属している(主観)30000系においても、90000系導入の置き換え対象であることが発表されました。
10000系列同様廃車になるのでは?と思う方もおられると思いますが、30000系は登場年が1996年、最終増備車は2003年に登場と、現段階では製造から30年未満の車両しかおらず、制御装置も全てVVVFインバータ制御の車両です。また、30000系は6両と4両の分割編成でもあることから、私の予想としては、
このように各々転用するものと思われます。
まず、本線系統の6両編成は2025年12月現在、
という陣容を敷いています。この10000系列に30000系の6両編成15本を注ぎ込むと、全体の5/6を置き換えることが可能です。残りの3編成に関しては、先述した10030型VVVF車を組み替えて転用すれば2編成分置き換え可能です。
なお、本線6両の運用数は2025年3月改正時点では平日14運用となっています。そのため、現状維持だと30000系6両と10030型VVVF車6両だけで賄える算段となります。
次に、寄居ローカルと越生ローカルの4両編成は2025年12月現在、
8000系:11編成
という陣容を敷いています。この8000系に30000系の4両編成11本を注ぎ込むと、全編成を置き換えることが可能です。8000系は東武の最古参形式で1番老朽化が進行している形式で、10000系列以上に早急な置き換えをしなければならないため、ここに30000系を入れて置き換えることが濃厚です。
最後に、先述した4両編成は11本で置き換え可能なため、4両編成4本が余ることとなります。この4本に関しては、6両編成同様本線系統へ転属、合わせて2編成を繋いだ8両編成を組成して、6両編成と同様の運用をするものと思われます。
本線系統の8両編成は2025年12月現在、
これだと、30000系のみでの8両編成は2編成分しか組成できず、10030型10032Fを8両編成化して転用しても1編成分しか供出できません。
なお、本線8両の運用を賄うために必要な編成数は、2025年3月改正時点で平日9編成となっています。但し、本線8両の運用は朝夕時間帯に限定されており、半直系統の急行・準急運用と合わせて調整される可能性も十分考えられます。こればかりは今後のダイヤ改正で状況を見ないとわかりませんが、現状のままだと既存の10000系列を完全に置き換え切ることはほぼ不可能とみていいでしょう。
ここまで、地上専用車の10000系列と30000系の行末を予想してみましたが、地下直車でも真っ先に置き換えられる9000型以外に、9050型と50070型に関しても大きな転換期になるのではないかと考えています。ここからは9050型と50070型の行末についても予想します。
まずは9000型のマイナーチェンジ車で、東上線系統、その先の地下直系統で唯一東洋GTO-VVVFを搭載している9050型です。全2編成とも1994年製と製造から30年が過ぎていること、2編成という少数派形式ということもあり、90000系の増備でこちらも地下直系統から撤退はほぼ確定と言えるでしょう。
そして今後の処遇に関しても、9000型同様廃車が濃厚かなと見ています。まだまだ使えそうな感じはしますが、GTO-VVVFの製造は終了しており、機器更新を行うのも手間暇かかることから、お役御免となりそうです。
同じ東洋GTO-VVVFを搭載している車両として、日光線系統の普通列車用の東武20400系があり、その部品取りとして供出する目的もあるでしょう。
2007年より東上線系統と地下直系統で活躍を続けている50070型。90000系の置き換え対象範囲が広めであり、製造能力を考えると、50070型と90000系の2形式体制で東上線系統と地下直系統を引き続き担っていくと考えられます。
しかし、地下直系統の中で唯一未踏の地となっている路線が存在しており、今後90000系の導入により、その未踏の地への進出を行うのか否かで、50070型の運命も変わってくるかもしれません。その未踏の地とは、
相鉄線
です。2023年3月18日に相鉄・東急直通線が開業したことで、東急東横線と相鉄線の相互直通運転が開始され、併せて東急東横・新横浜線と東京メトロ副都心線を介して相鉄線と東武東上線を1本で結ぶ直通列車も運行されています。
しかし、相鉄線と東武東上線の両路線を走る直通列車には、両路線の乗り入れに対応した車両が東急車(5050系4000番台)のみとなっており、相鉄車は東武東上線への乗り入れが不可、メトロ車と東武車は相鉄線への乗り入れが不可な状況となっています。この状況下で日中時間帯に毎時1本直通列車が走っていることもあり、特に東急車運用はカツカツの運用を強いられています。
ところが、東武90000系の設計イメージ図の中に、相鉄線で使用されるであろうアンテナ(?)が設置されているため、相鉄直通の準備工事はされる状態で出場されるものと思われます。また、相鉄20000系は製造時から東武東上線へ乗り入れできる準備工事が施工されています。
以上のことから、東武90000系と相鉄20000系双方に直通対応工事を施工することで、相鉄〜東武直通列車に対応する車両を増やし、東急5050系4000番台の負担を軽減、直通列車の増発にも繋げることができます。
この場合、東武50070型に相鉄直通対応工事を施工し、90000系と共に相鉄線へ乗り入れる可能性も考えられますが、先述の通り、
これらを実現させるために、
“地下直車を90000系に統一し、50070型を地上専用車にする”
ことが濃厚かなと考えています。こうすることで、50070型に直通改造工事を行う手間暇が省けますし、50070型に搭載されている直通機器を90000系に供出させることで費用を削減することも可能です。50070型は他の50000系列同様地上専用車で10000系列と30000系の置き換えに回せます。
いかがでしたでしょうか?
今回は東武90000系の本格導入に伴う大規模な置き換え計画に関して説明しました。
改めて、90000系導入による東上線系統の各形式の処遇に関してまとめていくと、
以上の計画で90000系を製造するとなると、
これらを全て足し合わすとなると“39編成”製造する必要が出てきます。
もし仮に50070型の7編成が地下直運用存続となっても、“32編成”製造しなければなりませんので、いずれにせよ90000系が“大所帯”になることに変わりはありません。
現在東武鉄道では、野田線系統の5両化に向けて新型車両の80000系が製造、8000系や10030型の置き換えに奔走していることと、大師線と亀戸線向けにドライバーレス自動運転を行うための新型車両の導入を計画しているため、全てを置き換え切るには長い年月を要しそうですが、今回の90000系導入で間違いなく東武の通勤型車両に対するイメージはガラッと変わりそうです。
東武90000系の置き換え計画、今後も目が離せません!
今回はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました!