皆様、こんにちは。U5swです。
今回は先日発表された、埼玉高速鉄道線の岩槻延伸に関して説明していきます。
まず、埼玉高速鉄道線の概要に関して説明します。
「埼玉スタジアム線」とあるように、本来の建設目的は、2002年に開催された「日韓ワールドカップ」が埼玉スタジアム2002で行われることから、埼玉スタジアムへの観客の輸送を行うため、また、鉄道空白地帯だった埼玉県鳩ヶ谷市に交通網を整備すること、浦和美園の土地開発を行う目的で建設されました。
東京メトロ南北線の終着駅である赤羽岩淵駅から鳩ヶ谷市を通り、JR武蔵野線との接続駅である東川口駅を経由し、埼玉スタジアムの最寄駅である浦和美園駅までを結んでいるため、実質南北線の延長区間の意味合いが強いですが、赤羽岩淵駅を除き全て埼玉県を走行することから、東京メトロ(開業当時は営団地下鉄)の路線として開業せず、埼玉県や沿線自治体などの出資により、第3セクターとして埼玉高速鉄道が誕生しました。
開業当初から東京メトロ南北線、その先の東急目黒線と相互直通運転を行い、2021年現在は東急目黒線の日吉駅まで運行されています。また、2022年には相鉄・東急直通線が開業し、新横浜、さらに相鉄線に乗り入れる予定であり、それに伴う車両増強から、開業当初から6両編成で運行されている車両を一部8両編成化し、同時に埼玉高速鉄道全駅の8両編成対応工事が進められています(ただし、埼玉高速2000系と東京メトロ9000系前期車<B修車>に関しては、6両編成のまま運行させることが濃厚であり、相鉄線に乗り入れない予定である)。
埼玉高速鉄道の駅は開業時からホームが8両編成分用意されているため、対応工事はホームドアを8両分用意するくらいに留まっています。
埼玉高速鉄道線では、自社車両の2000系の他、東京メトロ、東急の車両が乗り入れています。また、2022年の相鉄・東急直通線開業によって、相鉄の車両も乗り入れる予定となっています(ただし、埼玉高速の車両が相鉄直通の対応工事を行わない予定であることから、相鉄車が乗り入れない可能性も考えられる)。
そんな埼玉高速鉄道線ですが、この路線には浦和美園以北への延伸計画が存在します。
それは、「岩槻、そして蓮田への延伸計画」です。
元々、埼玉スタジアムへのアクセス路線を主として建設された埼玉高速鉄道線ですが、日韓ワールドカップ開催に伴い急ピッチで建設されたことから、浦和美園駅までに留まっています。
しかし、スタジアムの最寄駅である浦和美園駅は、埼玉スタジアムとの距離が1.2kmと長く、徒歩15分かかる面からアクセスが断然良いとは言えないため、新たに臨時駅として埼玉スタジアム駅を建設してアクセスを強化すること、および東武アーバンパークライン(野田線、以降UPLと表記)が乗り入れる岩槻駅、そしてJR宇都宮線(東北本線)が乗り入れる蓮田駅に埼玉高速鉄道が進出し、埼玉県内の交通アクセスを強化する計画があります。
現状、埼玉高速鉄道は他路線との接続が東京メトロ南北線の赤羽岩淵駅とJR武蔵野線の東川口駅しかないため、岩槻や蓮田に進出することで、他路線との接続が強化され、より利便性が高まります。また、並行して走っているJR線(宇都宮線、高崎線、埼京線)に何らかのトラブルがあった際に、振替輸送路線としてバイパス機能を果たすことができます。
以上の計画が挙がっている中、先日、ついに延伸の実現に向けて動き出すというニュースが出てきました。そのニュースがこちら!
ご覧の通り、岩槻延伸に向けて本格的に動き出すことがわかりました! 流石に蓮田まで一気に伸ばすのは無茶なので、第1段階として岩槻まで建設することとなっています。
具体的な内容としては、浦和美園〜岩槻間の7.2kmを複線で建設し、岩槻駅周辺は市街地のため地下化され、その他は民家が密集していないため、地下化よりも建設コストを抑えるために高架化されることが予想されます。また、この区間は高架かつ直線区間のため、最高時速110km/hでの運転を予定されているとのことです。
新駅に関しては、先述の通り、埼玉スタジアムでの浦和レッズを始めとしたサッカーの公式戦開催日に臨時駅として営業する「埼玉スタジアム駅(臨時駅)」、延伸区間周辺にある「目白大学」のアクセス駅としての中間駅(「目白大学前駅」が有力?)、そしてUPLの接続駅である「岩槻駅」の計3駅が開業する予定です。
ただし、沿線の地質調査や用地確保などが進んでいないため、延伸開業するのは2030〜40年頃だと考えています。
岩槻延伸と共に気になる話題として挙げられているのが、「埼玉高速鉄道内における快速運転の実現」です。埼玉高速鉄道線内において通過運転を行うことで、沿線の速達化を図る計画があります。
現在の埼玉高速鉄道線は、各駅停車と急行の2種別が運行されていますが、急行に関しては東急目黒線内を急行として運行する列車であり、浦和美園〜目黒間は南北線を含めて各駅に停車するため、100%各駅停車しか走っていません。
快速運転を行う計画がある理由として考えられるのが、「周辺で走る並行路線の存在」だと考えられます。
埼玉高速鉄道線の並行路線として、大宮側ではJR線、春日部側では東武スカイツリーライン(以降、STLと明記)が走っており、JR線では上野東京ラインや湘南新宿ラインといった中距離列車が、STLでは特急や急行といった速達列車が運行されており、都心へのアクセスを強化しています。その並行路線の存在から、速達面において可能な限り対抗馬を用意しておかないと不利になることから、この計画があると考えられます。
もし速達種別が運行される場合、停車駅はどうなるか?ということに関して、利用状況や路線設備の面からこのように予測しました。
赤羽岩淵、鳩ヶ谷、東川口、浦和美園、(埼玉スタジアム)、目白大学前(仮称)、岩槻
赤羽岩淵駅は東京メトロとの境界駅のため必然的に停車します。鳩ヶ谷駅は鳩ヶ谷市の中心駅であり、埼玉高速鉄道線内第3位の乗車人員であり、鳩ヶ谷折り返しの列車も設定されていることから停車が濃厚でしょう。東川口駅はJR武蔵野線との乗換駅であり、埼玉高速鉄道線内第2位の乗車人員であることから、こちらも停車が濃厚でしょう。
東川口駅以北に関しましては、埼玉スタジアムの臨時駅を含めて各駅停車になると予想しました。これは、浦和美園駅の構造と周辺の設備が関係しています。
まず、浦和美園駅の構造ですが、現在は1面2線(1番線、2番線)の島式ホームと、埼玉スタジアム開催日にのみ稼働する臨時ホーム(3番線、2番線と線路を共有する)があります。その臨時ホームにおいて、3番線の反対側に新たに線路を敷設し、4番線を新たに設け、2面3線の構造に出来るような整備を想定して造られています。
また、浦和美園駅の岩槻方には浦和美園検車区が整備されており、車両の入出庫が行われています。
このことから、岩槻延伸時に一部の各駅停車を浦和美園止まりにし、以北は速達種別が各駅停車の代わりを担う上で各駅に停まるのではないかと予想しました。真ん中の2,3番線ホームを折り返しホームとすることで、1,4番線への乗り継ぎがスムーズに行うことが出来るので、より現実的だと思います。
ちなみに、「鳩ヶ谷駅を2面3線化して緩急接続する構想」が挙がっていますが、個人的に実現は厳しいのではないかと考えています。鳩ヶ谷駅は地下にホームがあるため、ホームや線路を増やすとなると新たにトンネルを掘ったり、用地を確保しないといけないため、建設の手間とコストが莫大にかかってしまいます。
実際、埼玉高速鉄道は、荒川の下をくぐるなど莫大な建設費をかけてしまったため、負債が大きく苦しい経営を強いられています。そんな中で鳩ヶ谷駅を改修する余裕はないでしょう。
一方で、浦和美園駅は地上駅のため、改修にそれほど手間とコストがかからないので、鳩ヶ谷駅よりは浦和美園駅をテコ入れするのが無難と言えるでしょう。
一応、この案の懸念点を述べると、通過駅が川口元郷、南鳩ヶ谷、新井宿、戸塚安行の4駅しかないため、そこまで速達化が見込めるかが微妙な所であること(目白大学前<仮>を通過扱いにさせても5駅のみ)、南北線内で急行運転は物理上不可能なため、100%効果が保証できるとは言い難いです。
一部界隈では、岩槻駅でUPLと直通運転を行うのではないかと言われています。その根拠として、UPLの新型車両60000系に前面の非常用扉が設置されているためです。UPLに乗り入れることで、大宮または春日部といった都市とダイレクトで結ぶことができます。
ただし、個人的にはその可能性は極めて低いと考えています。
まず、埼玉高速鉄道線は蓮田まで乗り入れる計画が残っているため、もし蓮田乗り入れが実現した場合、直通運転していると運行形態や線路敷設の面でややこしくなってしまう恐れがあります。
次に、遅延リスクの拡大が懸念されるためです。先述の通り、埼玉高速鉄道線は東京メトロ南北線、東急目黒線と相互直通運転と行なっている他、2022年には相鉄線との直通運転が行われます。また、東急目黒線には都営三田線も乗り入れている他、相鉄線との直通運転開始後は東急東横線やJR線の車両も乗り入れてきます。
そんな中で、UPLと直通運転を行い、万が一遅延が発生してしまうと、その影響が膨大に拡がってしまいますし、悪影響を与えてしまうこととなります。事実、UPLも数本ではありますが、STLからの直通特急「アーバンパークライナー」も運行されていますし…
また、2022年に8両編成の車両が走る埼玉高速鉄道に対し、UPLは6両編成の車両が最長のため、8両編成が走るとなるとホームを延長させる工事が必要ですし、直通に必要な6両編成の車両も用意しなければならない、東武側の車体が埼玉高速鉄道に対応した車体であるか微妙(東武の車体が若干大きいため)ということを考えても、相互直通運転は厳しいと思います。
相互直通運転を行うためには、各会社への直通対応工事やダイヤの調整を行う必要がありますし、沢山の手間やコストがかかることとなります。埼玉高速鉄道沿線⇄UPL沿線の直通需要がそこまで見込まれるかがわからないため、行う必要性はほぼないと言っていいでしょう。岩槻駅では乗り換えるだけで十分だと思います。
鳩ヶ谷駅の待避設備の所でも述べましたが、埼玉高速鉄道は経営が苦しい中での鉄道運行を強いられており、2015年には事業再生ADRを申請し経営を再建する自体にもなりました。
埼玉高速鉄道の話になるとよく挙げられるのが、「ぼったくり運賃」や「埼玉高額鉄道」と言われるように、運賃が高すぎるという課題があります。初乗りは210円と高く、全線乗り通すと僅か14.6kmながら480円もかかってしまっています。
建設費が高騰したこともあり、建設費を回収するために、運賃に割り増していることが高額運賃となっている要因ですが、あまりにも割高すぎることから、利用客はイマイチ伸びず、浦和美園駅周辺の開発も進まなかったことから、想定を大きく下回る利用状況となってしまいました。
最近は黒字になるほど利用客も増えつつありましたが、新型感染症の影響もあり、再び厳しい状況になってしまっています。
そんな中で、岩槻延伸に踏み切った訳ですが、当然建設費のコストはかかりますし、UPLと接続することで効果が格段に出ると100%言い切れないのも事実です。延伸分の建設費を新たに回収しないといけないため、運賃を下げるわけにもいきません。赤羽岩淵〜岩槻間はおそらく600円前後の運賃になると見込まれます。
これまで大宮経由でJR線、または春日部経由でSTLを利用し都心に向かっていた利用客をどれだけ呼び込めるのかが、延伸に向けて問われる所でもあります。
いかがでしたか?
今回は埼玉高速鉄道の岩槻延伸に関する話題について説明しました。
延伸における懸念点やハンデは多いですが、延伸によって良い効果が現れると思うので、個人的にはとても楽しみです。是非、無事に延伸開業できることを願います。
今回はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました!