皆様、こんにちは。U5swです。
今回は、最近東京メトロ10000系が続々と8両化されている理由に関して説明します。
東京メトロ10000系は、2006年にデビューした、東京メトロ有楽町線および副都心線の中心車両です。10両編成が36本製造され、有楽町線、副都心線の他、東武東上線、西武池袋線、東急東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線に乗り入れており、都心から埼玉西部、横浜方面まで幅広く運用についています。
そんな10000系ですが、ここ最近、一部の編成が中間車2両を抜き取り、8両編成として走っています。
副都心線と東横線、みなとみらい線では、8両編成の車両が走っており、2013年からの直通運転開始時には、東京メトロからは7000系、東急からは5000系or5050系、横浜高速からはY500系がそれぞれ8両編成の運用を担当しています。
しかし、ここ最近では、10000系の第1編成、第4編成、第5編成の3編成が8両化され、副都心線、東横線、みなとみらい線の各駅停車および急行の8両編成の運用を担当しているのです。
ではなぜ、10000系の3編成が8両化せざるを得なくなったのでしょうか?その原因は、10000系の先輩車両である7000系と、後輩車両の17000系のそれぞれの事情にあります。
現在、東京メトロ有楽町線と副都心線では、新型車両の17000系を導入し、営団時代から活躍を続けているベテラン車両の7000系を順次置き換えています。
17000系は10両編成が6本、8両編成が15本導入される予定で導入が進んでおり、これは17000系導入前に現存していた7000系の編成数と全く同一です。これにより、通常であれば、17000系を1編成デビューさせるとともに、7000系を1編成離脱させるという置き換え方法をとります。
しかし、2021年10月現在における、営業運転についている7000系と17000系は以下の通り。
このことから、
という状況が発生してしまっています。このことから、8両編成の全体数が5編成足らず、一方で10両編成の全体数が1編成多いというアンバランスな状態が発生してしまっています。
以上のような状態をそのままにしておくと起こる問題として、
「8両編成の車両が不足してしまうこと」
が挙げられます。車両不足が起こると、車両の検査や故障等のトラブルの対策として置いておく予備車がなくなってしまい、検査に回せなかったり、車両故障等の不測の事態に対応できなかったりと、鉄道運行に大きな悪影響を及ぼしてしまいます。特に7000系は先述の通り、ベテラン車両であることから、故障が起こりやすくなっているため、尚更他の車両へのヘルプが必要となっています。
また、東横線とみなとみらい線では、2013年の相互直通運転開始前までは、8両編成の車両しか走っていおらず、直通運転開始後も両路線の各駅停車しか停車しない駅は、8両編成の車両しかホームに停車できないという制約を持っており、8両編成の車両が必要です。
そこで協力してもらったのが、今回の車両置き換えに関わらない10000系の3編成。中間車を2両減車した上で8両編成にし、車両不足を解消しています。
実は10000系の内、初期に製造された5編成に関しては、8両編成に短縮して営業につくことができるような設計となっています。そのため、今回は初期車の第1編成、第4編成、第5編成がその対象となり、8両化されて運用についています。
ここで、なぜ8両編成の17000系のデビュー前に、7000系が続々と廃車となっているのでしょうか?その理由としては、以下のことが考えられます。
まず、故障に関してですが、車両がデビューしてから年数が経つごとに老朽化が進行し、故障が起こりやすくなります。これは電車に限らず全ての製品に起こり得ることです。
通常は故障した車両に関して、修繕工事を行って再び営業運転につかせるという対応を行いますが、7000系は既に17000系に置き換えられることが決定しており、修繕工事をしたところでそこまで長く営業運転につくことはないため、それならば廃車した方が工事にかかる余計な手間やコストをかけずに済みます。
何度も故障しては修理して長く使うよりは、買い替えをしてしまえば、初期費用は高くつくものの、修理にお金をかける必要性はなくなるので、長期的にコストを抑えることができますからね。
次に、全般検査の期限に関してですが、鉄道では、車両を安心安全に動かすために、決まった周期で車両全体の検査を行う「全般検査」を行います。台車や外装部はもちろん、内装や機器類も必要に応じて交換し、車両をピカピカにした状態で、再び営業運転に就かせるよう念入りに行われます。
しかし、先述の故障した場合についての解説同様、置き換えが決まっている車両に対して、手間とコストをかけて検査をする必要性は極めて低く、こちらも検査入場させるよりは廃車した方が効率が良くなります。
この2点と、先述した10000系の初期車が8両編成で代役を務めることができるという事情から、17000系のデビューを待たずして7000系の廃車が行われているのでしょう。
ちなみに、10両編成の17000系が全6編成導入されているのに、10両編成の7000系が未だに1編成残っている理由としては、
と考えられます。とはいえ、8両編成の17000系のデビューは、試運転が積極的に行われていることからすぐに迫っていますし、10000系の当該3編成も、17000系の投入が進むにつれて10両編成に戻されるので、目処が立てばすぐに運用離脱となることでしょう。
以上のことから、10000系が3編成も8両化されているということとなっていますが、実は過去にも10000系が8両化されていたことがあります。
それが、東横線と副都心線の相互直通運転直前の、東横線およびみなとみらい線での先行営業運転です。
2013年3月16日の相互直通運転開始前は、相互直通運転に向けての準備として、それぞれの新規直通先に先行で試運転や先行営業運転に貸し出されました。10000系もその対象であり、2012年に、有楽町線と南北線の短絡線を活用し、東急目黒線を経由して東横線の車庫である元住吉検車区に回送されました。
しかし、直通運転前の東横線、みなとみらい線は8両編成の車両しか走っておらず、10両編成の車両は営業運転につけない状態でした。そこで、10000系を8両化した上で貸し出され(第3編成と第4編成が対象)、試運転を行った他、第4編成に関しては期間限定で東横線およびみなとみらい線での営業運転につきました。これにより、10000系は”地上時代”の東横線ホームに入線した実績があります。
7000系の廃車が早いというのもありますが、8両編成の17000系のデビューが遅いのも要因の1つです。
新型車両の誕生からデビューまでの流れを簡単に説明すると、まずは、車両製造工場から所属している車両基地へ甲種輸送されます。次に、車両基地で機器に異常がないかを確かめ、自社路線並びに相互直通先への路線において試運転を行います。そして、営業運転に入ります。
例として、最近東急目黒線直通用として製造されている相鉄21000系は、第1編成が2021年6月に製造工場から出場し、試運転ののちに、9月に相鉄線内で営業運転を開始しています(その後、第1編成は長津田検車区に甲種輸送され、将来の相互直通先での試運転のために貸し出されている)。
一方で、8両編成の17000系に関しては、第1編成が2021年4月に製造工場を出場したのにも関わらず、未だに自社線内、および相互直通先での試運転が行われており、10月現在は1編成も営業運転についておりません。
これは推測ですが、10両編成の17000系と走行機器が異なっており(10両編成ver.は三菱製のインバータ装置なのに対し、8両編成ver.は日立製のインバータ装置)、信号システム等に悪影響を及ぼす誘導障害の対策が念入りに行われていること、また、相互直通先の東横線、みなとみらい線、西武池袋線、東武東上線でもそれぞれで試運転を行う必要があるため、デビューまでに時間がかかっているものと思われます。
いかがでしたでしょうか?
今回は東京メトロ有楽町線、副都心線10000系の8両化に関して説明しました!
8両化への流れを端的にまとめると、
となります。
一気に3編成が8両化される珍しい現象が発生しており、話題となっていますが、この光景はそう長くは続きません。8両編成の17000系がデビュー間近ですし、続々と投入されると、当該の3編成はすぐに10両編成に戻されることとなります。引退間近の7000系と共に早めに記録しておくことをお勧めします!
今回はここまでとなります!最後までご覧いただきましてありがとうございました!
本日、17000系の8両編成の第1編成である17181Fが、めでたく営業運行を開始したようです。
8両編成は既に第7編成(17187F)まで導入されており、今後試運転ののち、次々と投入されていくでしょう。同時に10000系の3編成も、近々10両編成に戻るものと思われます。
世代交代に向けてまた1歩進みました!
17000系の8両編成も一気に6編成(17186F)までデビューしたようです。これにより、7000系の10両編成で最後まで生き残っていた7101Fが惜しまれつつ営業運行を終了しました。また、8両編成化されていた10000系の3編成は、全て10両編成に戻ったようです。