皆様、こんにちは。U5swです。
今回は、東武鉄道の通勤型車両に対することに関する状況と、通勤型車両の扱いに対して個人的に思ったことを述べていきます。
東武鉄道は、東京、埼玉、千葉、栃木、群馬に路線を展開する、日本の大手私鉄会社の1つであり、路線の総距離は463.3kmであり、これは大手私鉄の中で近畿日本鉄道に次いで第2位の総距離となっています。
東武鉄道には主に2つの路線群に分かれており、一方が伊勢崎線(スカイツリーライン)、日光線、野田線(アーバンパークライン)などの「本線系統」、もう一方が東上線、越生線の「東上線系統」となっています。
両者は直接繋がってはいませんが、東上線の車両が全般検査で日光線の南栗橋に向かう際は、秩父鉄道の寄居〜羽生間で機関車牽引による輸送を介して車両を受け渡しを行なっています(なお、東上線と相互直通運転を行なっている東急東横線と、伊勢崎線と相互直通運転を行なっている東京メトロ日比谷線の線路が中目黒駅で繋がっているが、ここを介した受け渡しは行われていない)。
直通路線も多く設定されており、
首都圏と北関東を中心に展開している東武鉄道ですが、最近の問題点として、
「通勤型車両の事情が本線系統と東上線系統で正反対」
であることが挙げられています。
それぞれの系統でどのような問題が生じているのかを次に説明します。
まず、本線系統に関しては、昨今の新型感染症に伴う列車の減便、運行区間短縮が相次いだ影響もあり、伊勢崎線(スカイツリーライン)の浅草〜館林間、および日光線の東武動物公園〜南栗橋間で運行されている10000系列(10000系、10030系、10050系、10080系)を中心に余剰車が多く発生してしまっています。
2022年6月現在、本線系統で余剰車(休車)の車両は以下の通り。
以上の通り、4両編成6本、2両編成7本が現在休車中となっており、大量の余剰車が発生してしまっています。
※休車編成に関する参考文献↓
さらに、10050系の4両編成で、1996年に製造された11460Fが、余剰廃車という扱いで僅か25年で役目を終えることとなりました。
10000系列の廃車はこの11460Fが最初となり、10000系列の中でも新しく製造された編成であること、10000系列よりもさらに古い8000系が未だ200両以上在籍していることから、この編成の廃車は鉄道ファン含めて衝撃を与えました。
11460Fが廃車された理由としては、
この2点が考えられます。
10000系列はチョッパ制御(11480Fを除く)という古い制御装置を採用しており、この古い制御装置は既に製造が終了しているため、取り替えることが厳しくなっています。そのため、部品取り車両として、他の10000系列の機器に故障や老朽化が発生し、取り替えが必要となった際に活用できるようにしたと考えられます。
また、鉄道車両は製造から30-40年ほどで修繕工事を施行する必要があります。10000系列の中には既にリニューアル改造された編成もありますが、11460Fは未だリニューアル工事は施行されていない編成でした。
10000系列よりも古い8000系がたくさん在籍している中で、通常ではベテランの8000系をお役御免にし、10000系列をリニューアルしつつ長期的に活躍させるのがベターと思いますが、リニューアル工事には大幅な工事期間と手間、そしてコストがかかります。加えて、昨今の新型感染症の影響で経営が苦しくなっていることから、リニューアル工事を施行できる余裕がなくなっている可能性が高く、変に延命して手間とコストをかけるよりは、早期でも廃車にした方が良いと判断したのだと考えられます。
減便や運行区間短縮に伴い、休車や余剰廃車が発生している本線系統に対し、東上線系統は真逆の”車両不足”に悩まされています。車両不足が発生する要因としては以下のことが考えられます。
東上線系統には現在、故障によって長期間営業運行に就けない編成が複数存在しています。その代表編成を2編成以下に紹介します。
営団(現・東京メトロ)有楽町線乗り入れ対応車両として、1981年に9000系の先行試作車としてデビューした、東上線(池袋〜小川町間)の最古参の編成です。
有楽町線内での故障やホームドア設置に伴い、東上線のみでの限定運用にとどまりつつも活躍していましたが、2021年6月の故障を最後に、1度も営業運行に就かないまま、森林公園検車区に留置されたままとなっています。修理される気配もなく、復帰の目処も立っていません。
1985年に登場した10000系の10両固定編成の1つです。東上線(池袋〜小川町間)での活躍を続けていましたが、2019年1月にドア故障を起こしてから、1度復帰の気配はあったものの、現在まで営業運転に就いていません。保安装置も故障しているとのことで、復帰が厳しいものと思われます。中には部品取り要員となっているという噂もあります。
この2編成の共通点としては、先ほどの本線系統の余剰廃車同様、車両が古く、制御装置も古いモーターを使用しており、部品の供給も厳しいことから、営業復帰へのハードルが険しいことが考えられます。かと言ってリニューアル工事を施行すればいいかと言うと、製造から30-40年経った車両に今から施行するメリットや余裕がないため、現実的ではないと言えます。
おそらくこの2編成に関しては、他の9000系や10000系への部品取りを目的とした廃車になることが見込まれます。
車両故障に関する参考文献(動画)はこちら↓
12月7日から8日にかけて、3年間ずっと森林公園検車区におねんねしていた11004Fが、寄居駅まで自走、寄居→羽生間は秩父鉄道線の機関車に牽引された上で回送されました。
そして、12月8日に、旧北館林荷扱所に回送されたことで、
“11004Fの廃車が決定”してしまいました…
いつ修理して復活されるのか…? 誰しもが復活を待ち望んでいた中での今回の移動は、無念の廃車という結末に至りました。
ただ、もし営業運転に復活させるのなら、わざわざ3年も森林公園検車区で放置することはないと思いますし、先述した11460Fも廃車されていることから、11004Fが廃車扱いになってしまうのは致し方ないと思います。今後は11460F同様、部品取り要員として最後の役目を全うするものと思われます。
1985年の落成から約37年間、ご苦労様でした…
今後は動いていない9101Fも、もしかするとカウントダウンは近いかもしれませんね…
先述の通り、本線系統と東上線系統の線路は直接繋がっておらず、本線系統⇄東上線系統の車両のやり取りは、秩父鉄道を介して行われています。
東上線系統の車両の全般検査は、長らく川越市駅横にあった川越工場で行われていましたが、2020年に閉鎖されてしまい、以後全般検査は本線系統の南栗橋検車区の工場で行わなければならなくなりました。
そのため、秩父鉄道を介して南栗橋まで輸送する必要があるため、運用離脱から復帰までのスパンが長くなってしまい、車両運用に余裕を持たせることが厳しくなってしまいました。
東上線の長年の悩みの種であるのが、沿線での事故の発生しやすさ。不名誉なことに東上線は人身事故といったトラブルが起きやすい路線であり、事故による運転見合わせが起こりやすくなっています。
また、事故によって巻き込まれた車両において、編成の一部が損傷してしまったり、機器に故障が発生したりして、営業運転から離脱せざるを得ない状況に陥ることも少なくありません。
これらの車両不足要因が積もり積もった結果、東上線系統の予備車が1つもいなくなってしまったり、最悪列車を運休せざるを得ない事態に陥ってしまったりと、火の車状態と化してしまっています。
一応、東上線の地下鉄直通対応車両を地上運用に回し、東武車の地下鉄直通運用をメトロ車や東急車で代走してもらう形も取れますが、そうなるとメトロ車や東急車の車両のやり繰りをシビアにしてしまうので、得策とは言えません。
ここまで本線系統と東上線系統の車両事情に関して説明しましたが、ここでほとんどの方が思ったこととして、
「本線系統の余剰車を東上線系統に転属させればいいのでは?」
という意見が挙がると思います。
確かに余剰車を有効活用するに越したことはないですし、東上線(池袋〜小川町間)が10両編成のため、4両編成2本と2両編成1本を繋いで10両編成を組成するとなれば3本できるため、東上線に転属させて車両不足を解消することができます。
しかし、本線系統から東上線系統に転属させるには高い障壁が存在しています。それが、
”保安装置の違い”
です。
本線系統に関しては、ATSという、沿線の信号機の色灯現示に従って列車を運行させる保安装置なのに対し、東上線系統(池袋〜小川町間)に関してはATCという、沿線に信号機がなく、運転席の速度メーター周りに表示する制限速度現示に従って列車を運行させる保安装置がそれぞれ採用されています。
東上線系統の車両に関しては、元々東上線がATSだったこと、東上線の小川町〜寄居間がATSであること、全般検査における本線系統での走行を行うことから、東上線系統→本線系統の車両転属は容易に行えます。
しかし、本線系統の車両に関しては、運行当初からATSのままであり、ATCに対応している車両は、東京メトロ半蔵門線や東急田園都市線に直通運転を行っている車両に限定されています。
現在余剰が発生し休車している10000系列は、東京メトロ半蔵門線や東急田園都市線に直通運転を行っていない地上車専用の車両のため、東上線系統に転属する際は、新たにATC対応の保安装置を搭載する工事を行わなければなりません。そのため、簡単に転属できない状況となっています。
また、東上線は東武の中でも屈指のドル箱路線となっており、池袋口を中心に多くの利用者で賑わっています。そのため、もし仮に4+4+2両の編成を東上線で走行させるとなると、中間運転台は4箇所発生することとなり、10両固定編成や6+4両の10両編成よりも、乗客が立ち入ることのできないデッドスペースが多くなってしまって混雑に拍車をかけてしまうこととなってしまいます。
まぁ、車両不足で列車が運休するよりは、多少デッドスペースの多い編成があるに越したことはありませんが…
以上のことから、本線系統の余剰車を東上線系統に転属させるのは不可能な状態となっていると考えられます。
余剰車の転属が厳しいのであれば、新型車両を導入すればいいのでは?と考える方も多いでしょう。
実際、東武鉄道は8000系や10000系列といったベテランの車両が大量に走っているため、新型車両に置き換える必要性が出るのは当然のことでしょう。また、故障で動けない車両を置き換えつつ、車両の全体数を上げることで車両不足を解消することができます。
しかし、現在の東武鉄道において、新型の通勤型車両の導入に関するニュースは、野田線(アーバンパークライン)の8000系、10030系置き換え用の新型車両を導入するのみにとどまっており、車両不足問題に悩まされている東上線系統に関しては、一切新型車両導入に関して触れられていません。
現在の東武鉄道では、本線系統の”特急型車両”の世代交代を進めており、3両編成の一般型特急車両500系「リバティ」の増備が進められている他、2023年には、現在の観光型特急車両100系「スペーシア」置き換え用として、N100系「Newスペーシア」の導入が決定しており、これに野田線用の新型通勤型車両導入を加えるとなると、東上線への新型車両導入はもう少し先となってしまいそうです。
勿論、東武鉄道の1番の売りは「東武特急」であり、世代交代やブランドイメージを一新する上で特急型車両に投資する傾向にあるのは当然であり、通勤型車両はどうしても冷遇されてしまう立場になってしまうのは致し方ありません(これは近鉄も同様の傾向にある)。 また、SLといった観光資源に力を入れるのも決して悪いことではありません(ただ、もう少し通勤車に配慮すべきだと思いますが…)。
しかし、乗客のほとんどは通勤型車両の利用がメインであり、こちらのサービスを維持、および向上していく必要があります。その中で、現在深刻な問題として話題に挙がっている車両不足に対する課題解決は早急に行うべきであることだと思います。
当然、鉄道会社は各年度の経営計画に基づいた上で鉄道の運営を行なっているため、様々な要求に応えられないのは仕方ありません。しかし、現在の課題を長らく放置したり蔑ろにするのは大変まずいことですので、可能な限り早急に課題解決に向けて動いてほしいなと思います。
いかがでしたでしょうか?
今回は東武鉄道の通勤型車両に関する状況と扱いに対して思うことを述べていきました。
本線系統と東上線系統で全く真逆の事象が発生している今日この頃。どちらの問題もどういう風に解決していくのか? 今後の動向に注目です。
今回はここまでとなります。最後までご覧いただきましてありがとうございました!