皆様、こんにちは。U5swです。
今回は、毎年恒例の「春のダイヤ改正シリーズ」より、東武東上線のダイヤ改正に関して紹介していきます。
今回の改正日は2023年3月18日(土曜日、平日は3月20日の月曜日)となります。
まず、改正のトピックは以下の通り。
2013年3月16日より、東武東上線は東急東横線との相互直通運転を開始しています。その東急東横線が、新たに開業する相鉄・東急直通線との直通運転を行うこととなり、この東武東上線からも、相鉄・東急直通線への直通列車が運行されることとなり、川越〜新横浜、相鉄線方面へのアクセスが向上することとなります。
今回、東武東上線と相鉄・東急直通線の直通列車は、1日あたり以下の本数が運行されるようになります。
1番の注目ポイントとして、この直通列車は、朝および夜間の時間帯の運行に限らず、一部日中時間帯のパターンダイヤにおいて、和光市〜川越市間を普通として毎時1本の直通列車が運行することです。この列車は新横浜駅を越えて相鉄線へも直通する予定であることから、車両に関しては東武と相鉄の両方の乗り入れに対応した東急車のみでの運行となる予定です(東武車は新横浜駅までの乗り入れで相鉄は入線不可、相鉄車は和光市駅までの乗り入れで東上線は入線不可となっている、メトロ車に関しては相鉄は入線不可だが、12月時点で新横浜駅への試運転を行なっていないため分からない)。
2008年の運行開始から来年で15周年を迎える座席指定列車「TJライナー」ですが、昨今の時差出勤等による通勤時間帯の拡大から、これに合わせる形でライナー列車の増発を行います。
まず、平日上り(池袋行き)に関しては、現行では4本(森林公園6:02発、6:30発、7:54発、8:18発)のライナー列車が運行されているのに加え、新たに1本(森林公園8:53発)を新設します。この列車は池袋9:49着のため、10時台以降に出勤される方へ配慮した列車となっています。
次に、平日下り(森林公園・小川町行き)に関しては、現行では14本(池袋17:30発から23:30発まで30分おきに発車、最終は23:58発)のライナー列車が運行されているのに加え、新たに1本(池袋17:00発)を新設します。
最後に、これまで設定のなかった土休日上り(池袋行き)にも新たにライナー列車を3本(森林公園8:31発、8:58発、9:27発)に設定することで、都心方面へのお出かけ需要に応えます。
なお、土休日下り(小川町行き)に関しては、変更しません。
2019年3月のダイヤ改正で新設された、東上線で1番新しい列車種別であり、池袋〜川越間を途中朝霞台駅(JR武蔵野線乗り換え駅)のみに停車し、川越方面への観光アクセスを強化するための速達種別です(乗車券のみで乗車可能な最速達種別)。
今回の改正により、川越特急の本数が大幅に増加することとなります。詳細は以下の通り。
なお、今回の改正でここまで増発が行われる(特に上り)理由に関しては、次の章でまとめて解説を行います。
今回の改正で1番衝撃のトピックと言えるのがこちら。各優等種別のそれぞれの改革です。各種別ごとに見ていきましょう。
2008年にTJライナーと共に運行を開始させた快速急行。停車駅を絞って都心〜川越、森林公園方面への速達性を重視した列車種別です。これが、ダイヤ改正で以下のような停車駅に変わります。
なんと、志木駅を通過する代わりに朝霞台駅に停車化、そして、川越市駅から先の各駅に停車し、新たに霞ヶ関駅、鶴ヶ島駅、若葉駅、北坂戸駅、高坂駅の5駅に停車することとなりました。
まず、志木駅を通過する代わりに朝霞台駅に停車化ですが、これは先述した川越特急との停車駅が関係していると思われます。これまでの川越特急と快速急行は、池袋〜川越間において、朝霞台駅に停車するのが川越特急、和光市駅と志木駅に停車するのが快速急行と、千鳥停車の関係になっており、乗り間違いを引き起こす原因にもなっていました。
そのため、今回志木駅を通過する代わりに朝霞台駅に停車することで、乗り間違いを起こすリスクを減らすと共に、JR武蔵野線との乗り換えアクセスを強化することとしました。志木駅を利用されている方からすると、不便を被る形となってしまいますが…
続いて川越〜小川町間各駅停車化、これが皆様にとって驚きでしょう。これは急行と同様であり、最早快速急行とは?となる方も多いと思いますが、各駅停車化した理由としては、川越市以西の速達輸送を川越特急に1本化するためと考えられます。
現行の川越特急と快速急行の、川越市以西の停車駅は同じ(坂戸、東松山以西各駅停車)であり、全体的においても川越特急との差が少ないことから、速達輸送を川越特急に一任し、快速急行は各駅に停車するスタイルに移行して区別しようという意図が伺えます。
先述した川越特急の増発に関しても、夕方上りの池袋行きが大増発している理由は、現行の快速急行が下りTJライナーの間合い運用で設定されているため、川越まで各駅停車の快速急行にしてしまうと折り返し下りTJライナーの運用が苦しくなるため、川越特急に置き換えて運行するものと見ています。
なお、今回の改正で、主に日中時間帯に運行している元町・中華街〜森林公園間のFライナーに関しては、東上線内急行から東上線内快速急行へ格上げとなり、川越方面への速達性が向上します。一方で、志木駅とふじみ野駅が通過となるため、この2駅への利便性は劣ってしまいます(ちなみに、有楽町線および副都心線と東上線の直通列車において、東上線内急行となる列車は改正後も残ります)。
2013年3月の改正により新設された、主に日中時間帯に運行される速達種別です。池袋〜川越間は急行と同じ停車駅であり、川越市以西は若葉駅、坂戸駅、東松山駅〜小川町間の各駅に停車することで、森林公園方面への速達化を担っている列車種別です。
この快速がダイヤ改正をもって、“廃止”となってしまいます。
東上線では僅か10年での運行終了であり、同時に東武鉄道全体で快速の運行が取り止めとなってしまいます(本線系統では既に廃止済み)。
これまで日中時間帯の再速達種別としての役割を担ってきた快速ですが、急行との停車駅の差が僅か4駅しかなく、速達効果が想定よりも小さいことや、昨今の情勢により川越市以西の速達輸送の需要が減っていることが考えられます。加えて、快速の1つ上位種別でもある快速急行が、川越市以西も各駅に停車するようになることが、廃止の決定打となってしまいました。
東上線で最もオーソドックスな速達種別である急行。池袋〜川越間で速達運転を行います。
この急行がダイヤ改正と共に、“朝霞駅”に新規停車することとなりました。
朝霞駅は和光市駅と朝霞台駅の間に位置する駅であり、これまでは準急と普通の2種別のみの停車となっていましたが、今回で新たに急行も停車することとなりました。これによって、急行は成増〜志木間で5駅連続停車することとなります。
今回朝霞駅に停車することとなった要因としては、
この3つが考えられます。
まず、朝霞駅自体の利便性向上を上げることは言うまでもありません。
次に、普通の運行区間短縮ですが、東上線では朝夕の時間帯を中心に、池袋発着、地下鉄直通発着共に志木を起終点とする普通が多く運行されています。これは、成増、和光市〜志木間の各駅需要が高くなるのに加え、急行が通過する朝霞駅を救済する役割を担っています。しかし、朝霞駅に急行が停車することによって、成増〜志木間の各駅に停車することになるため、志木発着の普通を成増発着または和光市発着に短縮することで本数を最適化し、よりゆとりのあるダイヤとすることができます。
最後に、輸送障害発生時における地下鉄線との直通運転中止時に関してですが、東武東上線自体人身事故等が起こりやすい路線であること、および相互直通路線が多く、相鉄直通で更に広がることから、輸送障害の起こるリスクが更に高くなります。
よって、輸送障害の影響を抑えるために、地下鉄直通列車の直通運転を取り止めますが、その際に、地下鉄から直通してくる普通が来ないこと、および、東上線側から地下鉄に乗り入れる列車は、引き上げ線のある志木駅で運転を打ち切ることにより、和光市〜志木間は強制的に減便となってしまい、その中でも急行が通過する朝霞駅は特に本数が少なくなってしまいます(または臨時停車)。
従って、朝霞駅を急行停車駅とすることで、輸送障害時による直通運転中止で大幅な減便にならないようなケアを行うものと考えています。
急行と共にオーソドックスな速達種別です。池袋〜成増間をノンストップで運行するのみで、成増以西は各駅に停車し、普通の代替的役割を担います。
この準急が、改正により“上板橋駅”に新規停車することとなります。これまで池袋〜成増間のみノンストップで本気を出していた準急が、遂にノンストップ運転を終了することとなりました。
今回上板橋駅に停車することとなった要因としては、
この2点が挙げられます。上板橋駅は2面4線のホームを有しており、一部の普通列車が当駅で優等列車の通過待ちを行なっています。これが、準急の停車によって通過待ちだけじゃなく同一ホームで準急と普通の緩急接続を行うことが可能となり、池袋方面から上板橋駅に限らず、普通に乗り換えることで東武練馬駅と下赤塚駅へのアクセスが格段に向上します。また、成増方面から上板橋駅に限らず、普通に乗り換えることでときわ台駅、中板橋駅、大山駅、下板橋駅、北池袋駅へのアクセスも向上します。よって、上板橋駅のみに限らず、普通のみ停車の駅のアクセスを強化する意味での準急停車化と言えるでしょう。
このように、各優等種別の大幅なテコ入れが行われましたが、ここまで大規模な変化があった理由として、
“各駅の利用状況”
がカギを握っているでしょう。ここで、2021年度の東上線池袋〜小川町間の乗降人員と停車駅の変化、および、各駅における接続路線をまとめた表を以下に示します。
この表から考察できることを以下に記します。
こちらに関しては、川越市〜森林公園間の各駅の利用状況が、快速急行および快速の通過駅と停車駅でそこまで大差がないことが大きな理由と考えられます。
坂戸駅は越生線の乗り換え駅でもあるため、乗り換え需要を考慮すると利用客はもっと多いですが、快速停車駅の若葉駅や快速急行停車駅の東松山駅・森林公園駅と、急行停車駅の霞ヶ関駅・鶴ヶ島駅・北坂戸駅・高坂駅の利用状況を比較すると、そこまで大差がないことが読み取れます。
よって、需要の少ない日中時間帯において、川越市〜東松山間で通過運転を行う種別を運行させるメリットが小さいため、快速急行を各駅に停車させ、快速を廃止することに至ったものと考えられます。
こちらに関しては、朝霞台駅の利用者が全体第3位であり、常に乗り換え需要がある駅であること、およびFライナーを東武線内快速急行として運行することから、日中時間帯にも快速急行が走ることとなるため、朝霞台駅に停車することで、快速急行の利用者をしっかり確保できることができると考えられます。
一方で、通過駅となってしまう志木駅においても、全体第5位の利用者数であり、決して需要がないわけではないので、通過駅にするのはシビアすぎる印象にありますが、急行との停車駅差が余計小さくなって川越以西の速達性が欠けてしまうことから、やむなく通過扱いにしたと捉えられます。
こちらに関しては、朝霞駅の乗降人員が全体第6位と結構上位に位置しているため、急行を停車するほどの需要は確保できると読み取れます。急行を停車させることで池袋駅から1本で辿り着けることから、朝霞駅に停車させるメリットは十分あると言っていいでしょう。
こちらに関しては、まず上板橋駅の乗降人員が全体第11位であり、駅自体の利用者が多いことから、準急を停車するほどの需要は確保できると読み取れます。
加えて、隣の東武練馬駅に関しては、普通のみの停車駅ながら乗降人員は全体第8位と上位に位置しており、上板橋駅で準急と普通が緩急接続を行うことで、東武練馬駅を利用される方へのアクセス向上が十二分に期待できるため、この面においても上板橋駅に停車させるメリットは十分あると言っていいでしょう。
以上のことから、今回の優等種別の大幅なテコ入れは、東上線内各駅の乗降人員を踏まえ、全体的に輸送力の適正化を図った結果、このような停車駅の大改革に至ったと考えられます。
いくら速い優等種別を走らせても、一定の利用客と各駅の利便性を考慮しない限り、輸送力は悪くなってしまいますから、このテコ入れはある意味必然的だったのかもしれません。
東上線の乗降人員データに関する参考文献はこちらから↓
改正前と改正後の池袋〜小川町間の種別と停車駅は、以下の表通りとなります。
最後に、日中時間帯の運行本数および運行区間の見直しに関してです。
この区間において、現行ダイヤでは、
の計毎時8本での運行となっています。
これが、改正において、
のみの運行となり、毎時8本から毎時6本へと減便がなされます。
これにより、川越市〜森林公園間において、日中時間帯に通過運転を行う列車がなくなり、所要時間が増加することとなります。但し、改正後は快速急行と急行で概ね10分間隔での運行を行うため、現行の急行、準急の間隔が6~16分と不均等だったことを考えると、改善されたと言えるでしょう。
この区間において、現行ダイヤでは、毎時2本の快速と毎時1本の急行計3本が運行されており、快速は小川町駅で小川町〜寄居間の普通と接続を行なっています。
しかし、ダイヤ改正後は大きく変化し、池袋および元町・中華街方面からやってくる列車のほとんどが森林公園駅までの運行となり、森林公園〜小川町間は小川町〜寄居間の普通を森林公園発着に延長する形で毎時2本での運行となります。
よって、森林公園〜小川町間は毎時2本への減便はもちろん、現在すべての列車が10両編成によって運行されているこの区間に、小川町〜寄居間で運行している4両編成の列車での運行となります。同時に、この区間でも4両編成の車両に限り、ワンマン運転も行います。
池袋〜小川町間で1番の閑散区間である森林公園〜小川町間。利用者が少ない時間帯でも10両編成の列車で統一し、池袋方面へのダイレクトアクセスを確保していましたが、遂に森林公園駅で運行系統を分断することになります。但し、利用者が少ない日中時間帯が中心のため、4両編成での運行は空気輸送を解消する意味でも適正かなと思います。また、かつては東上線の主力車両だったベテランの8000系が、久々に森林公園〜小川町間で営業運行を行えること、森林公園駅付近には森林公園検車区があることから、車両交換が容易になることもメリットの1つだと思います。
まず、志木駅始発の1番列車である普通小川町行きですが、
と6分繰り上げを行います。同時に、普通小川町行きから接続を受ける普通寄居行きは、
と7分繰り上げを行います。
次に、寄居発小川町行きの最終列車ですが、
と51~57分繰り下げを行うと共に、行き先を森林公園行きに変更します。同時に、接続を受ける普通川越市行きは、
と50~51分繰り下げを行うと共に、森林公園始発に変更します。
近年は新型感染症による需要低下により、ほとんどの鉄道会社は始発の繰り下げや終電の繰り上げを当たり前に行っていましたが、東上線はその逆を行く始発繰り上げと終電繰り下げを敢行しました。
これには明確な理由があり、2020年10月31日に開業した「みなみ寄居駅」の利用状況が大きく関わっています。みなみ寄居駅は副駅名に<ホンダ寄居前>と付けられており、その名の通りホンダの寄居工場が駅周辺に在ります。その工場に通勤されている方がみなみ寄居駅を利用するため、工場の始業時間および終業時間に合わせた結果、東上線の始発繰り上げと終電繰り下げが必要であったことから、上記のような見直しが行われました。
平日朝ラッシュ時間帯に池袋駅を7:30~8:30に到着する列車本数を24本から22本に減便します。
また、平日夕ラッシュ時間帯以降(17:30〜終電)の東上線および越生線の一部列車の種別、行き先、列車本数の見直しを行います。
いかがでしたでしょうか?
今回は東武東上線の2023年3月のダイヤ改正内容に関して説明しました!
個人的にはやはり優等列車の停車駅変更、そして日中時間帯の森林公園〜小川町間のワンマン運転開始が特に驚きました。
新型感染症流行により各鉄道会社では大きな見直しが行われていた中、ほぼ原型を保っていた東上線ですが、まさかこのタイミングで大改革が行われるとは思っていませんでした。
今後、東上線のパターンダイヤがどのようになるのか、予想できたら後日公開していこうと思います。
今回はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました!
今回の記事作成の参考となったプレスリリース
https://www.tobu.co.jp/cms-pdf/releases/20221216095003CgiPlyiMuAYy0ETMej1V2g.pdf
今回の改正、利用状況に合わせた適正化を行なった結果このような大改革に至ったわけですが、その中でも特に不憫なのが志木駅の利用者。
こんなクアドラブルパンチを喰らってしまう乗降人員第5位の駅があったでしょうか…? おそらく志木駅の利用者はブーイングの大合唱状態でしょうね…
朝霞台駅の利便性を優遇するのは致し方ないが、もう少し何かしらのケアはあっていいはず…
ちなみにふじみ野駅も改正で不憫な駅になってしまったイメージが強いですが、TJライナーの増発が行われているので志木駅ほど酷くはない…はず。