皆様、こんにちは。U5swです。
今回は、相鉄急行が休止に至った理由と復活の可能性について考察していきます。
相鉄の急行は、相鉄本線の横浜〜海老名間のみで運行している速達種別です。神奈川最大のターミナル横浜と、いずみ野線との分岐駅である二俣川の間をノンストップで運行し、二俣川〜海老名間は各駅に停車しています。主に横浜と二俣川以西の利用客に配慮した速達種別です。
相鉄の急行は、特急が登場する2014年まで、相鉄の最速達種別として大黒柱のような活躍を続けていました。昔からの相鉄ユーザーからすると、海老名発着が急行、いずみ野線直通が各停というダイヤで、二俣川駅で緩急接続を取る形のシンプルな鉄道というイメージを抱かれていたと思います。
その後1999年に快速が、2014年に特急が運行を開始したことで、一部の急行が快速や特急に置き換わりましたが、優等種別の中心は依然急行となっていました。
急行の立場がマイナーとなり始めたのは、2019年11月30日の“相鉄・JR直通線”の開業でした。
開業前の急行は日中時間帯において、横浜〜海老名間で毎時4本の運行<特急は3本、快速は2本>と速達種別で1番多く走っていたのが、開業後は毎時2本の運行<特急は4本(内1本JR直通)、快速3本>と一気に減ることとなりました。
加えて、2021年3月の改正では、新型感染症による利用者数の減少により、運行本数の適正化が行われました。その結果、日中時間帯の急行の運行がなくなる<特急は2本、快速は4本>こととなり、急行は朝夕時間帯の運行に留まるマイナーな種別となってしまいました。
どんどん急行の立場が低くなっていく中、2022年より相鉄・東急直通線の開業に向けて運行概要や運行本数等の情報が続々と発表されていく中、1つの掲出物が話題となりました。
この発車標の下に貼り出された相鉄・東急直通線開業と相鉄線および直通線の路線図、ここの左部分に注目すると、
「二俣川駅、西谷駅には全ての列車が停車します。」
と表記されています。このことから、相鉄の種別で唯一西谷駅を通過している急行が、ダイヤ改正で運行されなくなってしまうのではないかと話題になりました。ただ、掲出された時点で詳細の時刻表が発表されていなかったため、横浜発着を含めた全ての列車なのか、あくまでも直通列車に限った話なのかははっきりしていませんでした。
その後、2023年2月27日に3月18日ダイヤ改正における、相鉄線内の時刻表が発表されました。その結果、
“平日、土休日共に急行列車が全くない”
ことが明らかとなり、2023年3月の改正をもって、
“急行の運行休止が正式に決定”
となってしまいました(後にプレスリリースにおいても運行休止が発表されている)。
西谷駅は、現在は横浜方面の本線と羽沢横浜国大(・新横浜)方面の新横浜線が分岐する運行の拠点の1つとなっている駅であり、横浜発着の列車とJR新宿発着の列車が当駅で対面接続を行なっています。加えて、2023年3月からは東急直通の列車も走ることとなり、運行の拠点の中心駅として機能することとなります。
しかし、過去の西谷駅は2019年11月30日の直通線開業前までは一般の途中駅であり、駅利用者もそこまで多くない(近年は11000~12000人ほどの1日平均乗車人員)から、特急はおろか快速も停車しない、各駅停車のみが停車する駅でした。それが、直通線開業後はJR直通列車が運行されることになったため、西谷駅で横浜方面とJR直通線方面への対面接続の機会を確保するため、特急と快速が西谷駅に新規停車するようになり、加えて直通線開業と共に新設された通勤特急、通勤急行も西谷駅に停車しています。
しかし、急行に関しては、開業後も西谷駅通過を継続しています。これにより、西谷駅には“特急やが停車するのに急行が通過する”千鳥停車を行う駅と化しました。
ここで、急行が西谷駅通過を継続した理由としては、
JR直通線の開業により、念願の都心直通を果たした相模鉄道。しかし、開業後も相鉄沿線の利用客が1番向かう目的地は横浜駅です。また、二俣川〜海老名間の各駅と横浜駅の間の需要も大きく、その間の速達性を確保すること、横浜〜二俣川間の各駅との遠近分離を図るため、敢えて西谷駅に停車せず、横浜〜二俣川間ノンストップを貫いたのでしょう。
勿論、快速もJR直通特急との接続がない場合、横浜〜二俣川間では先着するため、快速でも構わないと思いますが、途中鶴ヶ峰駅、西谷駅、星川駅にも追加で停車することから、朝夕だと乗降が多くなる関係で利用者が余計に多くなり、混雑が激しくなることから、極力平準化させるためにも急行の運行で差別化を図っているものと思われます。
先述の通り、西谷駅は元々各停しか停車しない駅であったため、西谷駅で乗り降りする方はそこまで多くはありません。相鉄本線内の1日平均乗降人員(2021年度版)を以下に示すと、
駅名 | 1日平均乗降人員[順位] |
---|---|
横浜 | 305183人[1] |
平沼橋 | 7595人[18] |
西横浜 | 12974人[16] |
天王町 | 19873人[13] |
星川 | 24031人[10] |
和田町 | 13983人[15] |
上星川 | 20614人[12] |
西谷 | 22430人[11] |
鶴ヶ峰 | 47661人[5] |
二俣川 | 68149人[4] |
希望ヶ丘 | 28247人[9] |
三ツ境 | 46531人[6] |
瀬谷 | 35684人[7] |
大和 | 95234人[2] |
相模大塚 | 12223人[17] |
さがみ野 | 29839人[8] |
かしわ台 | 14949人[14] |
海老名 | 89216人[3] |
本線内において、西谷駅は18駅中11位であり、全体より下位の乗降客数であることがわかります。また、乗り換え駅の二俣川駅や大和駅、海老名駅を除き、単独駅のみを見ると、鶴ヶ峰駅を除いて、横浜〜西谷間の各駅よりも二俣川〜海老名間の各駅の方が比較的利用者が多い状況となっています。このことから、無理に西谷駅をケアする必要がないため、急行は西谷駅通過でも問題ないという判断に至ったと思われます。
最後に、JR直通線の本数が少ないことも挙げられます。JR直通列車は、JR線区間において埼京線や横須賀線、東海道貨物線を経由しているため、他列車との兼ね合いからそこまで本数を増やすことができません。日中時間帯は毎時2本(30分ヘッド)であり、朝時間帯も毎時4本、夕時間帯も毎時3本(20分ヘッド)のみの低頻度運行を強いられています。
一方で、横浜発着の列車はほとんどの時間帯で各停が毎時6本、優等列車が毎時6本以上運行するため、全ての横浜発着の列車が西谷駅でJR直通列車との接続を行うことはありません。
そのため、朝夕の時間帯で西谷駅でJR直通列車と接続を行わない場合、西谷駅を通過する急行を設定できる余裕があります。加えて、先述の横浜〜二俣川間ノンストップ需要が増える時間帯でもあるので、急行が設定されているものと思われます。
このように、JR直通線開業後も横浜〜二俣川間のノンストップ需要があったため、西谷駅を通過する急行が運行されていたわけですが、東急直通線の開業と共に急行は特急、通勤急行、快速に置き換えられる形で休止されることとなってしまいました。
では、なぜ需要の大きかった急行を休止することとなったのでしょうか?その理由としては以下の2つが考えられます。
先述の通り、相鉄新横浜線へは、JR直通列車に加えて東急直通列車が加わることとなります。また、東急直通列車に関しては東横線系統と目黒線系統の2系統があり、JR直通列車の倍以上の本数の列車が発着するため、西谷駅から都心直通列車の発着本数は、現行ダイヤからおおよそ3倍以上となります。
そのため、西谷駅での横浜発着列車と都心直通列車の接続機会も同時に増えることとなります。実際、日中時間帯における改正前と改正後の西谷駅での接続機会回数を比較すると、
よって、接続機会は毎時4回から毎時10回に増えることとなります。これが急行の運行している朝夕時間帯には、都心直通列車が更に増えるため、その分西谷駅での接続機会も増えます。
従って、西谷駅を通過する急行を運行してしまうと、都心直通列車との西谷駅での接続が確保できなくなるため、西谷駅に停車する列車に置き換えたものと思われます。
これは特に二俣川以西の上り列車が対象となりますが、急行は二俣川駅を発車するとノンストップで横浜駅に向かうこととなります。このことから、横浜方面への列車に乗車し、西谷駅で都心直通列車に乗り換えようした利用客が、西谷駅通過の急行に乗ったまま間違って横浜駅に連れていかれてしまうリスクが高くなります。
特に、新横浜駅から東海道新幹線に乗車する方にとっては、間違って横浜駅に行ってしまうと、大幅な時間ロスとなって大変なことになってしまいます。
よって、横浜方面行き、都心直通方面行きどちらの列車に乗っていたとしても、分岐駅である西谷駅に全営業列車を停車させることで、乗り間違いを極力抑えるためだと考えられます。
急行は休止となってしまいますが、平日朝に急行の停車駅に鶴ヶ峰駅と西谷駅を加えた通勤急行は継続して運行します。急行がなく通勤急行は残るという不思議な現象が発生することとなりました。
通勤急行の停車駅は快速の停車駅から星川駅を除いたものとなっており、通勤急行も快速に置き換えられないのか?と疑問に思った方もいるでしょう。しかし、平日朝ラッシュ時間帯に運行する通勤急行は、”遠近分離”の観点から重要な存在となっています。
平日朝ラッシュ時間帯の各停は、星川駅で必ず優等列車(特急や通勤急行)を待避することとなります。この時間帯に星川駅に停車する快速を運行させると、2面4線の星川駅で快速と各停の緩急接続が発生することとなります。これにより、星川駅をはじめ、快速の通過する上星川駅と和田町駅から横浜駅に向かう利用客も、快速に乗り換えることで横浜駅に早く着くことができます。
しかし、利用者が特に多い朝ラッシュ時間帯にとって、快速を運行させてしまうと、星川駅で星川駅から&各停からの乗客が快速に集中してしまい、混雑が悪化して遅延の要因となってしまいます。利用者の目的地はほとんどが横浜駅な以上、快速を運行させてしまうのは適さないため、星川駅通過の通勤急行を設けることで、西谷以西の乗客と上星川〜平沼橋間各駅からの乗客を棲み分けることが可能となります。混雑分散の観点からも、通勤急行の役割は非常に大きいため、通勤急行は休止がなされません。
今回の改正で急行が休止となりますが、大事なのは、
廃止ではなく”休止”であること
です。つまり、今後の改正によっては、急行の運行が復活する可能性も0ではありません。
事実、2019年のJR直通線開業に伴い休止されたいずみ野線特急は、今回の改正で東急直通に限り復活することとなりました。
では、相鉄急行がもし復活するとなれば、どの時間帯、どの方面で復活するのか? 個人的に1番可能性のあるものを予想しました。それは、
平日、土休日の夕方以降の海老名行き
です。こう予想した理由は、
となっています。東急直通線開業後も、相鉄沿線の1番の目的地は横浜駅だと思いますし、帰宅ラッシュ時間帯の下り急行の利用者は引き続き多いと思われるので、設定するメリットはありますし、何より下りは誤乗のリスクを考えなくてもいいというのが1番の要因です。
横浜駅から新横浜駅への移動も、ほとんどの方はJR横浜線および横浜市営地下鉄ブルーラインを利用されると思われます(羽沢横浜国大駅への利用者も一部おられるが、そこまでリスクはないはず)。
そして、夕方の時間帯ですが、これまでは急行:快速=1:1の割合で優等列車が運行されていたのが、改正後は全て快速となるため、急行通過駅(星川駅、西谷駅、鶴ヶ峰駅)の停車本数が過剰となってしまいます。
勿論、星川駅は各停との緩急接続が可能、西谷駅は都心方面からの接続の重要駅、鶴ヶ峰駅は本線乗降客数第5位の駅とそれぞれ停車する役割はあるため、停車が不必要とまでは言いませんが、横浜駅発での各停と優等列車の利用客分散を図るためにも、快速を主体にしつつ快速の一部は急行に戻してもいいのかなと思っています(横浜発の特急の運行もアリかも)。
この件に関しては、改正後の横浜発の利用状況を見てからまた更新していこうと思います。
いかがでしたでしょうか?
今回は相鉄急行の休止理由と復活の可能性に関して考察しました。
今まで相鉄の主力として馴れ親しんだ急行の休止は沿線民含めて衝撃の展開となりましたが、相鉄線を取り巻く環境の変化から休止せざるを得なくなったと思われます。
しかし、今回の休止は直通線の需要がどれくらいあるのか様子を見なければならない、それを踏まえて横浜方面の需要がどのように変化するのかも見る必要があるので、多少お試し的な要素も含まれています。今後の利用状況によっては急行の復活も全然あり得ると思われます。
個人的には、数本でもいいので、ノンストップ需要の高い急行がもう1度復活し活躍する姿を見たいなと思っています。
今回はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました!