皆様、こんにちは。U5swです。
今回は、西武鉄道が導入を計画しているサステナ車両の決定に関して説明します!
“サステナ車両”とは、「無塗装車体、VVVFインバータ制御の車両を、西武鉄道に譲渡して西武線内で使用することを目的とした他社車両」のことであり、西武鉄道が独自に定義した車両のグループです。
この他社の車両を”サステナ車両”として西武鉄道へ譲渡することで、現在西武線内で走っているベテランの車両を置き換える狙いがあります。新造車両に限らず、環境負荷の少ないサステナ車両の導入を進めることで、いち早く”省エネ化(使用電力量の削減等)”や”固定費の削減(メンテナンス効率化や車両リサイクルにおける持続可能性<サステナビリティ>の貢献等)を実現することができます。
2022年5月に、西武グループより発表された中期経営計画における進捗状況より、西武鉄道の車両導入計画の詳細で、完全な新型車両の導入に加えて”サステナ車両”を導入すると明らかにしていました。
現在の日本の鉄道において、車両の制御装置として主流となりつつあるVVVFインバータ制御。この制御方式はこれまでの制御方式(抵抗制御やチョッパ制御など)と比べ、走行時の騒音低減や消費電力の節約を実現しており、この30年でJRや大手私鉄を中心にVVVFインバータ制御の車両が大半を占めるようになりました。
西武鉄道でも、1992年に登場した西武6000系を皮切りに続々とVVVFインバータ制御の車両数を増やしてきましたが、それでもなお、未だに非VVVFインバータ車が沢山走っています。
現役の西武鉄道の非VVVFインバータ車は以下の通り(2023年9月末時点、続々と廃車進行中)。
この内、4000系の観光型車両1本と10000系全編成以外を新型車両とサステナ車両で置き換える予定となっています。
なお、新型車両に関しては40000系50番台を池袋線系統に導入し、西武6000系を池袋線系統から新宿線系統に転属させるような形で進めており、10両編成が常に走る区間(池袋線・有楽町線・新宿線・拝島線)の車両に関しては全て新型車両で置き換える予定です。
上記以外の短編成の列車が走る路線において、”サステナ車両”を導入して、ベテラン車両を置き換えていく予定です。
2022年5月にサステナ車両を導入することを聞き、本ブログにおいても、どの車両が西武鉄道に譲渡されるのかを予想していました。候補に挙げた車両やその理由や運用路線の予想等詳細は以下の記事をご覧ください。
前置きが長くなってしまいました。ここからが本題。
先日2023年9月26日、西武鉄道はサステナ車両の対象車両を、以下の2形式に決定したと発表しました!
ニュースリリースは以下の通り↓
ここからは、今回西武鉄道への譲渡が決まった、東急9000系・9020系と小田急8000形に関してそれぞれ解説します。
東急9000系は、1986~91年の間に製造された4扉の通勤型車両であり、9007Fの1本のみ登場当初から5両編成で落成し大井町線各停用として活躍、その他の14編成は登場当初東横線用として8両編成で落成し、東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線で活躍していました。
その後、2013年の東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転を開始することを受けて、東横線から撤退することとなり、東横線用の14編成は全編成が8両編成から5両編成に短縮され、大井町線各停用車両として活躍を続けています。
但し、全編成が登場から30年以上経っていることと、老朽化や加減速の多さから、近年では故障が相次いでおり、新型車両に置き換えるべきという声も挙がっていました。
そんな中、去る2023年5月に、東急電鉄が発表した「2023年度設備投資計画」において、
大井町線車両新造に着手
という文面が書かれており、東急9000系および東急9020系(元田園都市線用の2000系)を新型車両に置き換える予定であることが明らかとなりました。
この新型車両の導入によって9000系が東急電鉄での役目を終えることから、これをサステナ車両として西武鉄道に譲渡することで、西武の既存のベテラン車両の置き換えに用いることでしょう。
東急電鉄-2023年度設備投資計画
https://www.tokyu.co.jp/image/news/pdf/20230511-3.pdf
その後、NHKのニュースにおいて、9000系は約60両を譲渡するということが明らかになっています。現在の9000系は5両編成での運行を行なっていますが、西武線において5両編成で運行する路線がないため、中間車1両を抜いて4両編成で運行することが有力となっています。よって、9000系の4両編成15本、計60両が譲渡すると考えれば筋が通るでしょう。
なお、譲渡に関する各種改造についてですが、外装に関しては西武鉄道の車両となるため変更がなされます。但し、外装のデザインや内装、座席の改造等に関しては未定です。また、機器更新に関しても、製造当初から使用されている日立GTO-VVVFインバータ制御のままですが、譲渡後にやるか否かは未定です。普通に機器更新する説もあれば、そのまま未更新で使用する説もある(抜いた中間車1両がデハ車のため、部品取り用として残す可能性も考えられる)でしょう。
東急9000系は西武多摩川線、多摩湖線、秩父線、狭山線の4路線でそれぞれ導入される見込みです。その内、狭山線を除く3路線ではワンマン運転を行なっていることから、譲渡と共にワンマン運転対応に改造するものと思われます。
ここからは私見。東急9000系に関しては、ほとんどの鉄道ファンが西武譲渡候補に挙げており、個人的にも可能性があるなと思っていましたが、故障が相次いで起こっていて、廃車が近いと考えていたのと、もし譲渡する場合は、西武より伊豆急に譲渡し、伊豆急8000系(元東急8000系)を置き換えるものだと考えていました。しかし、ステンレス車で他の会社への譲渡が容易な東急車は使い勝手が良いため、西武のサステナ車両にちょうど良いことから、今回の譲渡に至ったと考えられます。
東急9020系は、元々は東急2000系として1992~93年の間に製造された4扉の通勤型車両であり、当初は10両編成として東急田園都市線と東京メトロ半蔵門線(2003Fのみ登場時8両編成で東横線で運用後、中間車2両を増結の上田園都市線に転属)で活躍していました。
しかし、後継の2020系導入と共に、田園都市線を走る全ての東急車10両編成を東武アーバンパークラインの直通運転に対応するため、東武の直通に対応していなかった2000系も置き換え対象となりました。
その後、5両編成に短縮すると共に、機器更新および9020系への改番(2003Fのみ先に5両編成に短縮して大井町線に入るも、すぐに9023Fに改番)が行われ、大井町線各停用として転用され、9000系と共通運用を組んで大井町線での活躍を続けています。そんな9020系ですが、上記の通り、大井町線各停に新型車両を導入することにより、9000系と共に置き換え対象となっています。
今回、9000系の西武譲渡が決定した際、「9020系は譲渡対象外なの?」という疑問が多かったですが、西武鉄道の公式プレスリリースやNHKの報道では9000系のみの両数で譲渡されることから、9020系は蚊帳の外というイメージがついていました。
しかし、譲渡車両発表後の西武鉄道広報への取材によると、
“西武サステナ車両には東急9020系も譲受対象車両であること”
が明らかとなりました。
これにより、東急9000系の一部編成を全車解体する可能性もあれば、60両は超えても9000系・9020系全編成を譲渡する可能性もあります。この動向は現段階では読めません。
東急9020系も譲渡のタイミングで外装の変更は行うと思われますが、内装や座席の改造等は9000系同様行われるかどうかは不明です。また、支線区での運用からワンマン運転の対応工事は行われるでしょう。
ここからは私見。東急9020系は東急9000系よりも少し新しい車両ではありますが、同じく1世代前の車両であるため、置き換え対象に挙がるのは致し方ないでしょう。
しかし、譲受車両が9000系だけということに違和感は感じており、9020系も対象じゃないのか?と思っていましたが、広報によると対象であることが明らかになりました。とはいえ、本当に譲渡対象車両なのか情報が曖昧なので、断定できないのがもどかしいところです。
一応、9000系全15編成と9020系3編成の18編成を西武に譲渡すれば、残存している新101系全7編成と4000系全11編成の18編成を全て置き換えることが可能ですが、一体どうなるのか…
小田急8000形は、1982~87年の間に製造された4扉の通勤型車両であり、4両編成と6両編成がどちらも16編成ずつ、160両が製造されました。
かつては途中駅での分割併合が多かった小田急線ですが、現在はその列車は運行されておらず、基本的に8000形同士(極稀に8000形4両+3000形6両の異種併結)で4両編成と6両編成を繋いだ10両編成での運行で、快速急行や急行、各駅停車(新宿〜本厚木間がほとんど)を中心に運行している他、6両編成単独で小田原線各駅停車(新松田〜小田原間)や日中時間帯の赤丸急行(町田〜小田原間)、江ノ島線各駅停車、多摩線各駅停車でも運行がなされています。
登場当初は界磁チョッパ制御、電磁直通ブレーキ、回転式の2ハンドルマスコンと古い機器を搭載していましたが、2000年代に更新工事が行われ、一部編成を除いて三菱IGBT-VVVFインバータ制御、電気指令式ブレーキ、左手型1ハンドルマスコンと、現代の列車に合わせた機器に取り替えられました。
2020年度より後継の5000形の登場より廃車が始まっており、まずは、チョッパ車のままだった6両編成2本が廃車され、小田急から非インバータ車が全滅しました。また、2019年に脱線事故の被害編成だった6両編成1本も廃車がなされました。
その後、1000形の未更新車が全廃されるまでは、8000形の廃車が進みませんでしたが、1000形の廃車が一段落した後は、8000形のVVVF更新車も続々と廃車されています。2022~23年にかけて6両編成1本と、4両編成6本が既に廃車されており、残存数は4両編成10本、6両編成12本となっています(2023年10月現在)。
そんな8000形ですが、この度6両編成の車両を西武に譲渡の上、6両編成の2000系が走る国分寺線用の車両として活躍を行うとのことです。譲渡車両数は40両であり、編成単位で見れば6両編成が6編成or7編成譲渡されるものと思われます。
ここからは私見。鉄道ファンの誰もが驚いた”小田急8000形の西武譲渡”。私もこれは予想外過ぎました。というのも、サステナ車両の定義において、
無塗装車体の車両
であることが前提となっていたからです。しかし、小田急8000形は無塗装車体ではなく外装全てが塗装車体であるため、本来のサステナ車両の定義からは外れていたためです(ステンレス車体でもなく鋼鉄車体である)。
しかし、今回無塗装車体でない小田急8000形が譲渡されたことから、他の無塗装車体の車両において、6両編成の車両を譲受するための交渉が上手く行かなかったものと思われます。どうしても置き換えのタイミングが合わなかったり、譲渡に関する制約があったりと何かしらの理由があったのでしょう。
事実、譲渡車両の決定におけるプレスリリースにおいて、サステナ車両の説明に”無塗装車体“の定義の説明が省かれていたことから、西武鉄道の妥協によって小田急8000形が選定されたと思われます。
とはいえ、リニューアル改造済みとはいえ、登場から40年が経過している小田急8000形が西武鉄道でセカンドライフを過ごすことになるとは夢にも思っていませんでした。
本当に、この先どんな運命が起こるのかなんてわからないもんなんですね…
ここからはサステナ車両による置き換えとは直接関係ないものの、サステナ車両の導入線区から今後どうなるのか気になる形式が1つあったので紹介します。
それが、“西武9000系”です。
西武9000系は1993~98年の間に製造された車両であり、当初は10両編成として西武池袋線を中心に活躍を行っていました。なお、地下鉄直通用の6000系と同時期に製造されましたが、走行機器は廃車された旧101系を流用したものを使用していました。
その後、2005~08年の間に制御装置を日立IGBT-VVVFインバータ制御に機器更新した上で池袋線で活躍を続けていましたが、2017年より徐々に運用を離脱し、8編成中3編成は全車が廃車、5編成は4両編成に短縮、ワンマン運転対応改造を施行した上で多摩湖線に転属し、多摩湖線の新101系を置き換えた上で活躍を続けています。
多摩湖線の主力車両である西武9000系ですが、この度のサステナ車両の譲渡において、東急9000系が活躍する路線の1つに多摩湖線が含まれており、西武9000系も置き換えられるのか?という疑問が湧いていました。事実、西武9000系はVVVFインバータ車両であるため、サステナ車両による置き換えは対象外です。こうなると、他の線区に転属する編成が現れることとなります。
転属線区の候補として真っ先に挙げられるのが、東村山〜西武園間を結ぶ西武園線です。この路線は今回譲渡されるサステナ車両の導入線区の対象外であり、かつ4両編成の車両が行き来するため、最有力候補として挙げられるでしょう。
但し、西武園線は東村山駅と西武園駅の間に途中駅はなく、路線長も僅か2.4kmしかないのと、東急9000系の導入路線は多摩湖線以外にも西武多摩川線、秩父線、狭山線の3路線があることから、西武9000系の一部編成が西武園線の運用に就き、残りの編成は引き続き多摩湖線で活躍を続けると思われます。
いかがでしたでしょうか?
今回は西武鉄道のサステナ車両の決定に関するニュースをお送りいたしました。
譲渡車両は東急9000系・9020系、小田急8000形であり、
となっています。今後のサステナ車両、および置き換えられるベテラン車両の動向にしっかり注目しましょう!
今回はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました!