皆様、こんにちは。U5swです。
今回は先日発表された、阪急電鉄の新型車両に関して説明します!
去る2023年10月6日、阪急電鉄のプレスリリースにおいて、2024年の夏より、神戸線・宝塚線系統(以下、神宝線と説明)に2000系、京都線系統に2300系をそれぞれ導入することが発表されました。阪急電鉄の新型形式導入は、神宝線では2013年の1000系以来11年ぶり、京都線では2014年の1300系以来10年ぶりとなります。
以下プレスリリース
https://www.hankyu-hanshin.co.jp/release/docs/ff140cb722dfcbc0d5f8628afd6fb8e24e4ae61a.pdf
阪急電鉄の伝統であるマルーンとアイボリーの外装を継承しつつ、前面窓ガラスに曲線を取り入れて”疾走感”をより表現したデザインを取り入れます。加えて、バリアフリー設備の充実や、旧型車両の置き換えによる省エネルギー化の向上を実現する模様です(最新の制御装置を採用することで、既存車両より消費電力量を約60%削減)。
次の章では、2000系と2300系の各導入目的および車内設備に関して、それぞれ説明します。
神宝線では、2013年から2021年にかけて1000系を8両編成20本(1000F~1019F)導入し、旧型車両の置き換えを行いました。今度の2000系も1編成8両で導入が行われる予定です。
↑阪急1000系(PhotoACより引用)、次回導入される阪急2000系も1000系に似た形で導入予定
座席は従来車両と同様のロングシートであり、普通から特急までマルチに運用するでしょう(但し、能勢電鉄乗り入れの特急日生エクスプレスに対応するかは不明、平日朝の10両編成運行時の併結運転に対応するかは不明)。
制御装置は阪急初のフルSiCのVVVFインバータ制御を採用する模様で、これまでの神宝線のVVVFインバータは東芝製のものが採用されているため、おそらく東芝製になる模様です。
神宝線の2000系導入によって置き換え筆頭候補に挙がってくるのは、宝塚線を中心に活躍を続けている5100系と予想します。5100系は1971年から1979年までに製造された形式であり、登場から40~50年が経ったベテランの車両です。
2023年10月時点で、宝塚線系統の5100系は8両編成3本と4両編成2本が残っており、4両編成は箕面線用として直接的な置き換えはありませんが、他形式の車両による転属による玉突きでの置き換えの可能性はあり、8両編成は宝塚線用として早々に置き換えられることが予想されます。
また、現在は今津北線(西宮北口〜宝塚間)の普通列車用として活躍を続けている5000系も、置き換え候補に挙がると予想します。5000系は1968年から1969年までに製造された形式であり、2000年代に大幅なリニューアル改造が実施されたものの、既に製造から50年以上が経過しているベテランの車両です。
2023年10月時点で、5000系は6両編成6本が在籍しており(元々は6両編成7本だったが、2023年6月に1本が編成単位で廃車済み)、8両編成の2000系が直接5000系を置き換えることはありませんが、これに並行して神戸線の主力形式である7000系を6両編成に短縮し、今津北線に転属させて5000系を置き換えることが考えられます。
よって、何編成導入するかは不確定ですが、2000系の導入が
“5000系と5100系の完全置き換え”
を達成するのではないかと見ています。
京都線では、2014年から2022年にかけて1300系を8両編成16本(1300F~1315F)導入し、旧型車両の置き換えを行いました。今度の2300系も1編成8両で導入が行われる予定です。
↑阪急1300系。
但し、1300系は座席がロングシートであり、普通から特急まで幅広い運用に就ける他、大阪メトロ堺筋線への乗り入れも可能な形式であるのに対し、2300系は、
“座席がセミクロスシート”
となっており、車端部がロングシートであること以外は、2+2列の転換クロスシートを採用しており、これは特急を中心に運行を行う9300系とほぼ同様の車内設備となっています。これに加えて、
大阪梅田方から4両目の車両に”座席指定サービス”を導入
することが併せて発表されました。
阪急京都線では、去る2022年12月17日ダイヤ改正のプレスリリースにおいて、2024年に座席指定サービスを導入する旨を発表しており、そのサービスのために今回2300系が新たに導入されることが決まったと考えられます。
導入予定の座席指定サービスは、阪急京都線の特急・通勤特急・準特急において営業することから、2300系もこの3種別専属で運用するものと思われます。
座席指定サービスに関しては、こちらの記事でも紹介しています。
座席指定サービスの詳細は後日発表がなされる予定ですが、個人的に気になるのが、
“座席指定サービス車両のドア数や座席配置”
がどのようになるのかということです。考えられる仕様として、
の2パターンが考えられます。
前者は基本的に特急系統の運用に就きつつも、間合い運用等で普通や準急、急行の運用にも差し支えなく入れるよう、一般車両と極力仕様を変えないパターンで製造することです。条件としては、座席指定サービスを営業する特急列車が、ごく限られた一部であることです。この仕様の似た例としては、東急電鉄で導入されたQシートが挙げられます。
↑参考の東急のQシート。デュアルシートを採用しており、ロングシート状態にすることで、座席指定サービスのない一般列車にも充当可能。
後者は完全に一般車両と区別をつけた車両とし、ドア枚数を減らす代わりに座席のグレードの向上やシートピッチの拡大を行うパターンで製造することです。条件としては、座席指定サービスを営業する特急列車がほとんどであることです。この仕様の似た例としては、JR西日本のAシートや、京阪のプレミアムカーが挙げられます。
↑参考の京阪プレミアムカー。この京阪8000系は、6号車をプレミアムカー仕様に改造した際、ドア数を2ドアから1ドアに減らし、その分座席スペースを増やしている。
個人的には、京阪間で競合する京阪電鉄が、快速特急・特急・快速急行のほとんどの列車において、座席指定サービスのプレミアムカーを営業して運行しているため、これに対抗して阪急京都線の特急・通勤特急・準特急のほとんどの列車に座席指定サービスを導入するものと予想しています。従って、座席指定サービス車両の仕様は後者になるものと考えています。
事実、新型車両導入のプレスリリースにおいて、2300系の中間車の乗車定員数が、“中間車が124人(但し、座席指定サービス提供車両のみ40人)”と記載があることから、京阪のプレミアムカーのような専用車両になる可能性が高いでしょう。
制御装置はこちらも阪急初のハイブリッドSiCとIGBTのVVVFインバータ制御を採用する模様で、これまでの京都線のVVVFインバータは東洋製のものが採用されているため、おそらく東洋製になる模様です。
京都線の2300系導入によって置き換えられそうな車両ですが、2300系は2000系と異なりクロスシートの特急型車両として導入されるため、既存の旧型車両の置き換えに加えて、既存の特急型車両である9300系の今後の処遇に関しても考えていく必要があります。
ここからは、「旧型車両の置き換え」と「9300系の今後の処遇」の2つに分けて予想していきます。
まず、旧型車両の置き換えですが、置き換え候補として挙げられるのが、3300系と5300系の2形式です。3300系は1967年から1969年、1979年に製造、5300系は1972年から1984年に製造された形式であり、登場から40年弱の車両もあれば55年も経った車両もあり、いずれもベテラン車両です。
↑置き換え候補筆頭の阪急3300系。
両形式は1300系の増備から、3300系の未更新を中心に編成単位での置き換えが行われた他、8両編成の3300系と5300系は7両編成に短縮して余剰中間車を廃車にしています。
2023年10月時点において、3300系は7両編成4本(内1本は暫定的に7両編成であり、元々は8両編成)、5300系は8両編成3本、7両編成10本が在籍しています。
個人的には、この2300系の導入によって
“3300系の4本を完全に置き換え、同時に5300系の8両編成3本を7両編成に短縮する”
のが第1目標と予想しています。3300系もリニューアル工事は行われているものの、老朽化が進行しているのは否めないため、優先的に置き換えられることは確実と言えるでしょう。
また、京都線の京都河原町2号線ホーム、および桂車庫と正雀車庫の留置線の一部が7両編成しか対応していないため、7両編成の確保はマストであることから、この2形式の7両編成短縮化も必要であり、8両編成の車両が消滅してしまうのも時間の問題でしょう。
次に、1番気になるのが、現行の特急型車両として活躍している、9300系の処遇についてです。9300系は、2003年にデビューした車両であり、8両編成11本(9300F~9310F)が在籍しています。京都線系統では1300系に次いで新しい車両であり、デビューから20年が経ったばかりの形式であることから、編成単位の廃車はあり得ないでしょう。
↑特急型車両の阪急9300系。
こうなると、今後の車両の処遇に関しては、以下の2つのケースが考えられます。
まず、9300系の4号車の車両を、2300系と同様に座席指定サービス車両に改造or新造して組み込みをさせ、2300系と共に座席指定サービス付きの特急運用に引き続き就くケースです。先述の通り、9300系はまだ登場から20年経った車両であり、置き換えるには早すぎる形式です。
しかし、今後の座席指定サービス導入によって、極力仕様を統一したいと思うでしょうし、2300系もそこまで大量に編成導入できるとは考え難いですから、9300系にも座席指定サービス車両に改造するための措置は取られるでしょう。
そこで、4号車に相当する中間車を一時的に脱車し、改造を施して再度組み込む措置を取るか、9300系用の座席指定サービス車両を新たに製造し、既存の車両を置き換えて組み込む措置を取るかの2択になります。個人的には前者の改造が1番あり得ると考えていますが…(製造コストを抑えられる、余剰車をなくせる、京都線では7両でも運行が可能)
次に、9300系をロングシート車両に改造し、他の一般8両車と共通の運用に就かせるケースです。これは、2300系の導入編成数によりますが、もし座席指定サービス付きの車両を2300系に統一させたい場合、9300系はロングシートに改造して、他の一般8両車と共通運用で就くことになるでしょう。
但し、ロングシートに改造するとなると、改造に対する手間がかかってしまうのと、現行の京都線の8両編成の車両は、9300系を除いた全ての車両が、Osaka Metro堺筋線の乗り入れに対応していることから、堺筋線の乗り入れ対応工事を行わないといけません。事実、車両の規格に関しては堺筋線の乗り入れには対応していますが…
また、他形式と9300系の機器配置の大きな違いとして、MT比が挙げられます(Mは動力車、Tは付随車)。一般8両車のMT比は4M4Tと1:1の割合で構成されている車両がほとんどで(7300系・8300系の8両固定車、1300系が該当)、7300系および8300系の2+6両編成は5M3T、3300系と5300系は6M2Tと動力車の割合が多い編成もあります。それに対し、9300系は3M5Tと動力車の割合が少ない編成となっており、勾配区間が多く加減速の多い堺筋線において、9300系のMT比では運行するのが厳しいという見方があります。そのため、9300系を一般車改造するのに加えて堺筋線の乗り入れに対応させるのであれば、新たに付随車1両を電装化させる必要があり、その改造を行うにも手間やコストがかかってしまいます。
以上のことから、一般車と同様の改造を行うのは、少し無理があるのかもしれません。
ここからは京都線の運用面に関してですが、現行のダイヤにおいて、特急系統のほとんどが特急車の9300系で運行されていますが、車両の予備車確保や走行距離調整等もあり、全ての特急系統を9300系のみで担当することは厳しい状況です。また、ラッシュ時は利用者が多いため、クロスシート車両より乗車定員が多いロングシート車両が準特急を中心に使用されます。
通勤特急は女性専用車両を設定しているため基本的に9300系のみの充当(但し一般8両車が代走する場合女性専用車の設定は解除される)、特急は9300系の他に7300系、8300系、1300系も充当され(最高時速115km/hに対応した車両のみ)、準特急は特急充当車に加えて3300系や5300系も充当されます(準特急は最高時速110km/h止まり)。
阪急電鉄はサービス向上と座席指定料金設定による収益性向上を掲げ、京都線の特急系統のほとんどを座席指定サービス車両付きの車両で運行させたいと考えているでしょうから、現行の9300系に加えて2300系を増備させて、一般8両車の特急運用を可能な限り減らすものと思われます。
以上の考えたパターンを列挙した結果、2300系導入による9300系の処遇は最終的にこうなると予想しました。
この流れが本命かなと思われます。
ロングシート改造や堺筋線直通対応工事に関しては、改造コストが大きいのと、シビアな条件も重なっているため、あまり現実的ではないでしょう。また、9300系は車齢も若い方であり、予算的に2300系はそこまで多くの編成を導入できないことを考えると、上記の流れが現実的かなと思われます。
いかがでしたでしょうか?
今回は、阪急の新型車両2000系および2300系の導入情報と、導入によって置き換えられる車両の予想を行いました!
神宝線用2000系はロングシート車両のため、単純な旧型車両置き換えに留まるものと見ていますが、京都線用2300系はクロスシート車両かつ座席指定サービス付きの編成であるため、旧型車両置き換えに加えて、従来の特急型車両9300系がこれからどうなるのかにも注目する必要があります。
今後発表される座席指定サービス車両の概要も含めて、動向を追っていこうと思います。
今回はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました!