皆様、こんにちは。U5swです。
今回は、2023年8月より営業を開始した東横線のQシートに関する評判と、それに伴う解決策に関して述べていきます。
帰宅ラッシュ時に、混雑を避けてゆったりと座って移動できる座席指定サービスとして運用を行なっているQシートは、2018年に大井町線の急行列車(平日夕夜の大井町→長津田間)で導入された後、2023年8月に東横線の急行列車(平日夕夜の渋谷→元町・中華街間)でも運用を開始しました。
利用する際は、乗車券に加えて500円の座席指定券が必要(但し、みなとみらい線区間は必要なし)であり、課金額を増やすことで、快適に移動できる人権を確保することができます。
Qシートを運用する対象列車は、平日に運行される以下の5列車になります。
また、対象車両は、東急5050系4000番台の4112F~4115Fであり、10両編成の内4,5号車がQシート車両となります(渋谷方から4両目と5両目の車両)。Qシートの車両に関しては、1発で見分けがつけられるよう、赤1色の車体となっているため、判別がしやすくなっています。
大井町線でのQシートの実績を受け、満を持して渋谷と横浜の関東2大都市を結ぶ東横線にも導入されたQシート。夕方時間帯は渋谷→横浜方面への帰宅需要が大きくなるということから、優等種別を中心に混雑が目立つ傾向にあるため、追加料金を支払う代わりに混雑を避けて座って移動できるQシートは重宝される存在だと思われていました。
しかし、現状はそう順調ではないようで…
というのも、実際の東横線Qシートの利用状況は、
“常に満席に近いとは言えず、どの列車も空席が目立ってしまっている”
という、想定を下回る利用の少なさが目立っているとのことです。
せっかく混雑を回避して、ゆとりのある移動ができる座席があるのにも関わらず、ここまで利用が不調な理由はどこにあるのでしょうか?考えられることを以下に挙げてみました。
まず1つとして考えられるのが、座席指定料金が割高であるということです。
座ってゆったり快適に移動できる代わりに、乗車券に加えて座席指定料金を支払う必要があり、東急のQシートは1席あたり“500円”(大人・小児共通)で販売しています。これは、東横線、大井町線共に同額の値段となっています。
しかし、下記に紹介する他の関東私鉄の座席指定サービス<デュアルシート(クロスシート)で運行されるライナー列車のみ、特急型車両は含まない>と比較すると、東急のQシート料金はとても割高となってしまっています。
東武東上線 TJライナー | 上り(池袋行き):大人470円、小児240円 (※ふじみ野から乗車の場合大人370円、小児190円) 下り(池袋発):大人370円、小児190円 |
京王線 京王ライナー・Mt.TAKAO号 | 410円(大人・小児同額) |
西武新宿・拝島線 拝島ライナー | 大人400円、小児200円 |
京急線 モーニング・ウィング号 イブニング・ウィング号 ウィング・シート | 300円(大人・小児同額) (※ウィング・シートを車内で購入する場合は現金のみで500円) |
西武池袋線・東京メトロ有楽町線 S-TRAIN<平日運行> | 大人510円、小児260円 |
西武池袋線・東京メトロ副都心線・ 東急東横線・みなとみらい線 S-TRAIN<土休日運行> | 大人300~1060円(小児は大人料金半額 ※端数切り上げ) (※東急東横線内のみの利用であれば、大人350円、小児180円) |
東武スカイツリーライン・東京メトロ日比谷線 THライナー | 久喜・東武動物公園・春日部⇔日比谷線:大人680円、小児350円 せんげん台・新越谷⇔日比谷線:大人580円、小児300円 |
ご覧の通り、自社線内のみで完結する座席指定サービスの列車に関しては、基本的に500円以下の値段で利用することが可能です。また、複数の会社に跨って運行する座席指定サービスに関しては、各鉄道会社が定めた座席指定料金を合算したものとなっているため、500円以上になってしまうものがほとんどですが、区間によっては500円に近い料金で利用することが可能です。
よって、他社の座席指定サービスと比較した場合、Qシートはどちらかというと“割高なイメージ”がつきやすく、その結果利用者が伸びないという結果に至ってしまっているものと思われます。また、2023年3月のダイヤ改正前まで、大井町線のQシートの座席指定料金は400円だったのが、ダイヤ改正を踏まえて500円に値上がりしたことも影響しているでしょう。
座席指定サービスを営業している列車のほとんどは、全車両が座席指定のライナー列車で運行されていることがほとんどで、かつ、都心に近い主要駅を飛ばしつつ、都心から離れた郊外の主要駅に停車することで、利用者の遠近分離や、長距離利用者のラッシュ混雑による負担軽減や所要時間短縮に役立てています。これらライナー列車の需要は高く、利用が好調であれば増発が実現したりと、上手く座席指定サービスを活用しています。
また、乗車券のみで乗車可能な一般車両に混じって運行している座席指定サービスの車両も、基本的には最優等種別(最も駅を通過し所要時間が早い種別)に充当された上でサービスを展開しています。東急大井町線(田園都市線)のQシートは急行、京急のウィング・シートは快特で運行しており、いずれもライナー種別を除いて最優等種別となっています。
しかし、東横線のQシートに関しては、最優等種別でない“急行”でサービスを展開しています。東横線では座席指定列車のS-TRAIN・特急・通勤特急・急行・各停の5種類の列車種別が運行されており、その内、Qシートサービスが営業される平日夜時間帯においては、“通勤特急”が最優等種別となります。
ここで、“Qシートサービスを通勤特急で運行しない理由”として、
といったことが挙げられます。このような複雑な事情から急行で運行せざるを得なくなったわけですが、東横線の急行は”隔駅停車”と言われるように、ほとんどの区間において1駅通過して駅に停車というのを繰り返したり、中には3駅連続停車する区間があったりととにかく停車駅が多い種別です。東横線の路線とダイヤの都合上、ほとんどの急行は東横線内において全区間で先着するため、優等種別の役割は果たしていますが、速達性のなさからあまりQシートの人気が出ない説はあると思います。
勿論、ラッシュ時の混雑を避けて快適に座れるというメリットを提供しているとはいえ、他のライナー列車や大井町線急行、京急線快特のような速達性も保証されていることで、割りに合ったサービスと言えます。通勤特急での運行が厳しいのは致し方ない部分もありますが、先述した500円の座席指定料金の高さも相まって不評となってしまっているのでしょう。
東急東横線の起点は渋谷であり、新宿(新宿三丁目)や池袋といった副都心へのアクセスは、東京メトロ副都心線に乗り入れる形で実現しています。事実、東横線の武蔵小杉・横浜方面への通勤通学需要は、副都心線の池袋から始まっており、乗客の流れも渋谷〜池袋間で大きく変わっていきます。
よって、座席指定サービスQシートを渋谷からではなく、新宿三丁目や池袋を始発として営業すればいいのでは?という疑問が出てくるでしょう。
しかし、現在の東横線のQシート営業列車は、東横線の渋谷を始発としており、新宿三丁目や池袋から直接Qシートを利用することができません。その理由としては、
一応、副都心線内においては、土休日に座席指定列車”S-TRAIN”が運行されており、座席指定車両の営業に関しては問題ないですが、Qシート自体が東急のみのサービスであり、東京メトロには一切関わりがなく、もし副都心線内でも営業運転を行うのであれば、新たに東京メトロでのQシートの営業に関する乗務員の手配やアナウンス等を行わなければならず、メトロ線内での料金設定を行う必要もあります。
そして、先述の通り、Qシート車両を連結している編成は4編成しかなく、更にはQシートを営業している列車が毎時2本(30分ヘッド)での運行、そして、渋谷〜元町・中華街間の往復が1時間半弱かかることから、1日のQシート専用運用を回すのに必要とする編成が3編成で、1編成を予備or他の東急車10両運用に回す必要があります。よって、運用面において、渋谷以北で営業運転を行う余裕はありません。
東横線のQシートは4号車と5号車の2両体制で行っていますが、そもそも
“Qシート車両が2両あること自体が過剰である”
という声も挙がっています。
東横線は渋谷と横浜の2大都市を結ぶドル箱路線であり、常に利用客の多い路線であり、ラッシュ時は混雑が目立つということから、その分座席指定サービスによる着席需要が多く見込めるという算段から、東急はQシートを2両分設定したものと思われます。しかし、利用状況が思うほど芳しくないという状況から、「2両分ではなく1両分だけで十分なのでは?」という印象を持つでしょう。
もしこのまま利用が伸びないままであれば、1両分だけでも席が足らないことはないと思われるので、今後の利用状況次第では“1編成2両体制を1編成1両体制に変更する”ことも検討する必要はあるでしょう。
ここまでを見ると、「東横線のQシート導入は大失敗なのでは?」という声も多く挙がるでしょう。しかし、せっかく導入したのなら何かしら改善策を講じた上でサービスを活かしていく必要があります。
上記の課題を踏まえて、利用状況を改善する方法を考えてみました。なお、既に東急が実施している改善策もあるため、併せて紹介します。
まず1番取りかかりやすい改善策としては、座席指定料金を値下げすることでしょう。
1席の利用が500円と、他の座席指定サービスと比べても高めな料金設定となっているQシート。勿論、快適な車内空間を提供する上で追加料金は必要となりますが、料金が高すぎると利用を避けられてしまい、利用率が悪くなってしまうため、少額の追加料金でも利用したいと思えるような価格設定に改める必要があります。
そこで、東急電鉄は、利用状況の低さから、去る11月8日に、以下のようなキャンペーンを発表しました。
東横線 有料座席指定サービス「Q SEAT」 おためし半額キャンペーンについて
~期間限定で半額の250円で購入いただけます~
当社は、2023年8月より東横線 有料座席指定サービス「Q SEAT」(以下、本サービス)を開始いたしました。この度、より多くのお客さまにご利用いただくことを目的に、期間限定で、通常1席500円のところを半額の1席250円にて販売する「おためし半額キャンペーン」を実施します。
東横線 有料座席指定サービス「Q SEAT」 おためし半額キャンペーンについて
~期間限定で半額の250円で購入いただけます~
なんと、通常料金の“半額の250円”でQシート車両に乗車することが可能となるキャンペーンを実施しています。キャンペーン期間は11月13日から12月29日までの平日であり、購入方法の限定はなく、インターネット販売or駅窓口での購入となっています。
東急側からすると、流石に利用率が低い現状は不味いと判断したことから、このキャンペーンの実施に至ったと考えられますし、“座席指定料金を下げることで利用率の上昇に繋がるか”という実験を行い、その結果から今後の東横線Qシートの処遇に関して判断を下すものと思われます。
Qシート導入初年度は、利用状況を観察するために、1番帰宅ラッシュのピーク時間帯となる18時台や19時台前半に渋谷始発として出発する急行には、Qシートサービスを導入していません(車両はQシート付き車両が必ず運用に就くようになっている)。
この急行(渋谷18:05発,18:35発,19:05発)に対しても、Qシートサービスを営業することにより、ピーク時間帯で車内の混雑率が最も高くなることから、混雑を避けてゆったりと座りたい利用客が多くなって、利用が増えてくるのではないかと考えています。
また、ピーク時間帯にあえて設定することでQシートサービスの利用価値が上がることで、Qシートに対する認知度も上がっていくのではないかと思います。
勿論、Qシートサービスを営業するとなると、他の一般車両にはより利用客が集中してしまい、混雑が激化することによって、乗車できず積み残してしまうというリスクもあります。かと言って東横線では列車の本数を増やす余裕がありません。
1つ対策として、”副都心線から直通してくる急行元町・中華街行き”を8両編成から10両編成に増強することで、多少の混雑の緩和に繋がるでしょう(2023年3月改正において、この系統の急行列車のほとんどが8両編成での運行となっている)。但し、東横線系統の10両編成は広範囲に運行を展開しているため、簡単に10両運用を増やすことはできません…
もしかすると、次のダイヤ改正において、Qシート営業列車を増やす可能性もあるので、ここは次の改正における注目ポイントと言えるでしょう。
(2024.4.25追記) 来る5月7日からの営業より、新たに渋谷18:35発,19:05発の急行元町・中華街行きにおいて、Qシートサービスの営業運行を開始することが発表されました!
次に、1編成あたりのQシート車両を2両から1両に減らすことで、座席指定サービスの需要と供給のバランスを適正化させるという方法です。具体的には、
“4112F~4115FのQシート車両1両分を、他の東急5050系4000番台の一般車1両分と交換する形で編成組替を行う”
という方法で、Qシート車両を1編成1両分にします(同時に、東急5050系4000番台のQシート車両の組み込み編成を8編成に増やす)。
ここで、東急5050系4000番台の編成構成を以下に示すと、
10号車 クハ 4000 | 9号車 デハ 4900 | 8号車 デハ 4800 | 7号車 サハ 4700 | 6号車 デハ 4600 | 5号車 サハ 4500 | 4号車 サハ 4400 | 3号車 デハ 4300 | 2号車 デハ 4200 | 1号車 クハ 4100 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
4001 | 4011 | 4901 | 4911 | 4801 | 4811 | 4701 | 4711 | 4601 | 4611 | 4501 | 4511 | 4401 | 4411 | 4301 | 4311 | 4201 | 4211 | 4101 | 4111 |
10号車 クハ 4000 | 9号車 デハ 4900 | 8号車 デハ 4800 | 7号車 サハ 4700 | 6号車 サハ 4600 | 5号車 [Q] デハ 4500 | 4号車 [Q] サハ 4400 | 3号車 デハ 4300 | 2号車 デハ 4200 | 1号車 クハ 4100 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
4012 | 4015 | 4912 | 4915 | 4812 | 4815 | 4712 | 4715 | 4612 | 4615 | 4512 | 4515 | 4412 | 4415 | 4312 | 4315 | 4212 | 4215 | 4112 | 4115 |
これを“Qシート1編成1両体制”に変更させるとなると、このようになります(例として、4101F~4104Fの4編成にQシート1両分を組み込んだと仮定する)。
10号車 クハ 4000 | 9号車 デハ 4900 | 8号車 デハ 4800 | 7号車 サハ 4700 | 6号車 デハ 4600 | 5号車 [Q] サハ 4500 | 4号車 サハ 4400 | 3号車 デハ 4300 | 2号車 デハ 4200 | 1号車 クハ 4100 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
4001 | 4004 | 4901 | 4904 | 4801 | 4804 | 4701 | 4704 | 4601 | 4604 | 4501 | 4504 | 4401 | 4404 | 4301 | 4304 | 4201 | 4204 | 4101 | 4104 |
10号車 クハ 4000 | 9号車 デハ 4900 | 8号車 デハ 4800 | 7号車 サハ 4700 | 6号車 デハ 4600 | 5号車 サハ 4500 | 4号車 サハ 4400 | 3号車 デハ 4300 | 2号車 デハ 4200 | 1号車 クハ 4100 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
4005 | 4011 | 4905 | 4911 | 4805 | 4811 | 4705 | 4711 | 4605 | 4611 | 4505 | 4511 | 4405 | 4411 | 4305 | 4311 | 4205 | 4211 | 4105 | 4111 |
10号車 クハ 4000 | 9号車 デハ 4900 | 8号車 デハ 4800 | 7号車 サハ 4700 | 6号車 サハ 4600 | 5号車 [Q] デハ 4500 | 4号車 サハ 4400 | 3号車 デハ 4300 | 2号車 デハ 4200 | 1号車 クハ 4100 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
4012 | 4015 | 4912 | 4915 | 4812 | 4815 | 4712 | 4715 | 4612 | 4615 | 4512 | 4515 | 4412 | 4415 | 4312 | 4315 | 4212 | 4215 | 4112 | 4115 |
仮想組み換えの前後の変化として、
こうすることによってQシート1両体制で、Qシート組み込み車両が倍の8編成分となります。Qシート車両を5号車に合わせることによって、サハ車やデハ車の偏りなく組み換えができます。
事実、東急電鉄は過去に幾度と編成組み換えを行ってきた実績(?)があり、その中でも東急5050系4000番台を含む東急5000系列は、車両増結や6ドア車の関係で、常人には理解不能レベルな組み換えを行っているため、編成組み換えはお手の物です。
但し、組み換えを行うにあたって、発生する問題としては、
“組み換えのために2編成を離脱させないといけず、東急車10両運用の予備車がなくなってしまうこと”
が挙げられます。2023年ダイヤ改正時における東急車10両運用を回すのに必要となる最低編成数は13編成となっており、全15編成体制の内2編成を離脱させてしまうとなると、予備車0の状態になってしまいます。
よって、1編成でも故障した場合、替えが効かなくなってしまいます。特に東急車10両運用しか就けない相鉄と東武を直通する運用も多くあるため、運用面でリスクを伴います。
(2024.4.25追記) 来る5月7日の営業において、4号車のQシートサービスを休止し、5号車のみでQシートサービスを実施することが明らかとなりました! 但し、暫くの間4号車はQシート車両(但し、ロングシートモード固定状態)のままであり、早急な編成組替は行われませんが、Qシートサービス1両化で編成組替の可能性が高まりました!
改善策③を施行したことを前提に、渋谷始発で運行しているQシートサービス付きの急行列車を、池袋or新宿三丁目始発にして、武蔵小杉・横浜方面への帰宅需要が上がる池袋または新宿からの利用客がそのままQシートを利用できる状況にします。
改善策③を施行したことにより、Qシート車両付きの編成が8編成確保されたため、渋谷以北の運用に入れても余裕で運用を回すことができます。副都心線内も急行で運行し、池袋・新宿三丁目・明治神宮前<原宿>・渋谷を乗車専用駅として設定することで、着席需要の向上に努めます。
但し、この改善策の懸念点としては、
が挙げられます。
中々現実味のなく、大変難しい改善案ではありますが、Qシートの利用率向上を最優先するのなら、こういう取り組みまでやってみるのも手だと思います。
いかがでしたでしょうか?
今回は東横線の座席指定サービス”Qシート”の利用状況から見る課題と解決策に関して説明しました!
改めて、東横線のQシートが不評な理由と改善策を簡潔にまとめると、
このようになります。
導入から3ヶ月経った今、決して順調な滑り出しとは言えない東横線のQシート。今後、”邪魔だし要らない”という声をどれだけ”帰宅するために欠かせない”と声に変えれるのかが東急としての勝負となるでしょう。
せっかく導入した座席指定サービス。短命で終わらないことを願いつつ、今後どのような展開を迎えるのか、動向に注目していこうと思います。
今回はここまでとなります。最後までご覧いただきましてありがとうございました!