皆様、こんにちは。U5swです。
今回は北陸地区の普通列車を中心に運行を行なっている、521系に関して紹介します!
まずは521系に関して説明します。
521系は2006年より導入が始まり、2021年まで製造が行われた形式です。521系の導入線区の北陸本線では敦賀〜南今庄間で、七尾線では津幡〜中津幡間で、電化方式の交流と直流が入れ替わる”デッドセクション”を通過する関係で、交流と直流の両方に対応した交直流電車として製造されています。
車両は従来のJR西日本の223系がベースとなった3ドア、転換クロスシート車(車端部はロングシート)であり、1編成2両でワンマン運転に対応しています。また、寒冷地である北陸地区を走行するため、その地域に対応した耐寒設備を有しています。そして、従来車よりも床面を低くしたり、大型の洋式トイレを整備するなど、バリアフリー化を図っています。
521系が導入される前の北陸地区では、国鉄型車両の巣窟であり、寝台急行型車両581系および583系を普通列車用に改造した食パン電車こと419系や、元急行型車両の475系、その475系の機器を流用して車体のみ新造した413系、国鉄型直流電車113系に485系の交流機器を載せ替えて交直流電車化した415系といった国鉄型の車両が、北陸本線や七尾線の普通列車として活躍を続けていました。
よって、座席やドアステップ、トイレといった居住性やバリアフリーにおいて劣っており、また、古い車両ということで老朽化も進んでおり、このようなあらゆる問題に対処するため、521系の導入が行われることとなりました。
最高速度は120km/h、制御装置は三菱製or東芝製のIGBT素子のVVVFインバータを採用しています。223系をベースに製造されましたが、交直流電車のため223系との併結運転はできません。
2006年に製造が開始された1次車は、同年までに2両編成5本(E01~E05編成)が新造され、北陸本線の米原〜福井間、および湖西線の近江今津〜近江塩津間で営業運転を開始しました。この5本はJR西日本の他、滋賀県や福井県も製造費用を負担して製造がなされました。
この時期は、交流と直流の電化区間が切り替わるデッドセクションの区間が、北陸本線の長浜〜虎姫間、湖西線の永原〜近江塩津間から、北陸本線の敦賀〜南今庄間に変更され、北陸本線の敦賀以南において直流電車の乗り入れが可能となったことから、輸送体系を変更する一環として導入されました(同時に、223系による新快速の敦賀乗り入れも開始された)。
先述の通り、滋賀県と福井県が製造費用を負担した経緯があることから、北陸本線の米原〜敦賀間と湖西線の近江今津〜近江塩津間を中心に運用しています。かつて北陸本線の敦賀〜福井間も、敦賀を通しで運行する運用がありましたが、2023年3月改正で定期運用がなくなりました。また、2009年3月改正においては、小浜線での定期運用も存在していましたが、こちらは僅か1年でなくなりました(但し、代走や臨時列車で乗り入れることがある)。
E編成の1番の特徴としては、“保安装置のATS-P型を搭載している”ことであり、ATS-Pを使用している湖西線や北陸本線の米原〜長浜間への乗り入れに対応しています。対して、E編成以外の521系はATS-Pを搭載していないため、上記の区間に入線することができません。
そのため、かつて521系が検査を行なっていた松任工場が閉鎖となったことで、大阪の吹田総合車両所で検査を行うこととなったため、E編成以外の521系が吹田で検査を行う際は、検査入場のためにATS-Pに対応したE編成を伴走車として、併結した状態で持っていくようになりました。
敦賀以南の運用が中心のため、2024年3月の北陸新幹線敦賀延伸後も、車籍は変わらずJR西日本のままとなっており、0番台の中では唯一のJR西日本生き残り編成として引き続き活躍しています。
E編成の導入から3年後の2009年より、金沢地区の国鉄型車両置き換えに伴い、JR西日本の自社負担によって2次車が導入されました。2009年10月~2010年3月にG01~G10編成の2両編成10本が、2010年12月~2011年3月にG11~G15編成とM01~M15編成の2両編成20本の計30本が製造されました。
導入当初は、金沢に配置された編成がG編成、敦賀に配置された編成がM編成と区別されていましたが、2014年にM編成全てが金沢に転属された際にG編成に改番され、G16~30編成となりました。この2次車の導入で金沢、富山方面へと進出し、続々と北陸本線にいた国鉄車を置き換えて行いきました。
2015年3月14日に北陸新幹線金沢〜長野間が延伸開業し、北陸本線の金沢〜直江津間が並行在来線として経営分離されることとなり、これに併せてG編成の内3編成がIRいしかわ鉄道(G05,G09,G25編成)へ、16編成があいの風とやま鉄道(G01-G04,G06-G08,G10-G13,G16,G18,G19,G26,G27編成)へそれぞれ譲渡がなされました。
その後、2023年3月18日の改正と同時に、G編成の内5編成(G20,G22,G24,G28,G30編成)が金沢から敦賀へ転属となりました。これは翌年の改正でハピラインふくいに譲渡するための転属といえます。
そして、2024年3月16日に北陸新幹線敦賀〜金沢間が延伸開業し、北陸本線の敦賀〜金沢間も並行在来線として経営分離されることとなり、これに併せてG編成の内5編成がハピラインふくい(G20,G22,G24,G28,G30編成)へ、6編成がIRいしかわ鉄道(G14,G15,G17,G21,G23,G29編成)へ、それぞれ譲渡がなされました。
従って、2024年3月16日をもって、JR西日本所属の521系G編成は全て消滅し、全編成が第3セクターへ移管された各鉄道会社への所属となりました。元G編成の所属編成数は、
以上のようになります。
G編成に続き、金沢地区の国鉄車置き換えのために、2013年11月より製造が開始されたのがJ編成となる3次車です。性能等は1次車や2次車と同様であり、番台区分も0番台の続番となっていますが、仕様が大きく変更されたのが前面のデザインです。
従来の223系をベースとしたデザインから一変し、既に導入が開始されていた225系をベースに、少し形状を変更したデザインを採用しました。これは、225系より採用された衝撃吸収構造を反映し、衝突事故が発生した際に衝撃を吸収して被害を最小限に抑えるためです。同時に前照灯を従来のハロゲンライトからHID式のライトに変更しました。
この3次車の前面デザインは、以降のJR西日本およびJR西日本から経営分離された第3セクター鉄道の新型車両に大きく反映されており、521系の他に、
沢山の形式でこの前面デザインが採用されています。
J編成は当初2両編成19本(J01-J19編成)が導入され、国鉄車を置き換え、G編成と共に北陸本線の普通列車として活躍し始めました。
その後、2015年3月14日の北陸新幹線金沢〜長野間延伸開業による、北陸本線金沢〜直江津間の経営分離が行われましたが、上記の19本に関しては、引き続きJR西日本の車両として残存し、北陸本線の敦賀〜金沢間で運行を続けることとなりました。しかし、金沢延伸開業直前に製造された2両編成2本(J20,J21編成)は、新製直後にIRいしかわ鉄道へ譲渡がなされました。この2編成は製造当初JR西日本の車両として登場していましたが、JR西日本の車両として営業運転に就くことはなく譲渡された異例の編成となりました。
その後、2017年3月4日にJ編成全てが敦賀から金沢へ転入した後、2023年3月18日に、翌年ハピラインふくいへ譲渡される予定だった10編成(J01,J03,J09-J16編成)が敦賀へ再転入されました。
そして、2024年3月16日に北陸新幹線敦賀〜金沢間延伸開業による、北陸本線の敦賀〜金沢間の経営分離から、J編成の内10編成がハピラインふくい(J01,J03,J09-J16編成)へ、9編成がIRいしかわ鉄道(J02,J04-J08,J17-J19編成)へ、それぞれ譲渡がなされました。これにより、JR西日本所属のJ編成も消滅し、全編成が第3セクターへ移管された各鉄道会社への所属となりました。元J編成の所属編成数は、
以上のようになります。
2015年3月14日より、北陸本線の倶利伽羅〜市振間を経営移管し、第3セクターの鉄道として開業したあいの風とやま鉄道。開業に併せて521系が2両編成16本譲渡されたと明記しましたが、同時に国鉄型車両の413系も3両編成5本が譲渡されていました。
しかし、老朽化が進行している413系は、近々新型車両に置き換えられると予めアナウンスされており、その413系を置き換えるために製造されたのが、521系1000番台です(ここでは4次車と定義する)。車両はあいの風とやま鉄道が自社発注にて導入されており、521系では初となる、JR西日本の車暦のない521系が誕生しました。2017年より製造が開始されました。
基本的なベースは3次車の0番台J編成と同様ですが、既に227系が製造されていたこともあり、種別・行先表示器がフルカラーLEDとなりました。但し、側面窓の構造は従来の521系と同様であり、側面の種別・行先表示器はセパレート型となっています。
2017年に2両編成1本が落成後は、2020年に1本、2021年に1本、2022年に1本、2023年に2本と段階的に導入され、2024年3月時点で2両編成6本(AK17~AK22編成)が0番台のAK編成と共通運用を組み、金沢〜糸魚川間で活躍しています。
北陸本線と各第3セクター鉄道への521系の導入が進み、国鉄車をどんどん置き換えて行きましたが、金沢から途中の津幡で分岐し、七尾へ向かうJR七尾線には、413系や415系,455系といった国鉄型車両が未だに残っていました。
しかし、2019年より、その七尾線の国鉄型車両を一掃するため、七尾線の運行に特化した521系が導入されました。それが100番台です(ここでは5次車と定義する)。
従来の0番台J編成や1000番台に準じた設計とは少し異なり、主に227系をベースとした設計となりました。種別・行先表示器は前面部は1000番台と同様のフルカラーLEDですが、側面部は227系以降に採用された、種別・行先を一体型とした表示器に変更しています。また、側面窓の窓割りも225系以降に採用された窓割りとなっている他、前照灯は521系で初となるLEDライトを採用しました。ラインカラーも従来の青の北陸色と異なり、輪島塗の漆をイメージした茜色となっています。
車内の設備では、七尾線でのワンマン運転開始とICカードICOCAのサービス開始に併せて、車内でICOCAの精算を行えるよう、整理券発行機に併設してICカード読み取り機を搭載した、車載式ICOCA改札機を設置しています。そのシステムの関係から、100番台は金沢〜七尾間の普通列車専属運用となっており、その他の区間での運用はなく、一方で0番台の車両が金沢〜七尾間の運用には入りません。
2019年より100番台の製造が開始され、2020年10月までにJR西日本所属の100番台U編成が2両編成15本(U01-U15編成)が導入され、七尾線の国鉄型を置き換えました。
また、2020年12月には、IRいしかわ鉄道用の100番台が2両編成3本(IR06-IR08編成)が導入されました。これは、金沢〜津幡間でIRいしかわ鉄道線を走行することから、乗り入れに伴う車両使用料を相殺するために導入されました。仕様や性能、ラインカラーはJR車U編成と同様であり、所属のロゴマークのみIRのマークになっていることが判別ポイントです。
以上の100番台18編成が金沢〜七尾間で運行しており、JR車とIR車は共通運用で区別なく営業運転に入っており、2本を連結した4両編成での運行では、JR車とIR車の併結も見ることができます。
100番台の導入をもって、1000番台を除く521系の新製導入はひと段落したかと思っていましたが、2021年に0番台としては6年ぶりの導入となる増備車が2両編成2本製造されました。なお、編成番号はJ編成の続番となり、J22,J23編成となりました。
この2本に関しては、1000番台とほぼ同様の構造となっており、0番台では初となる種別・行先表示器がフルカラーLEDタイプとなった車両です(1000番台ではなく0番台なのは、導入先を明確化させるためと思われる)。なお、ドア開閉時に盲導チャイムが鳴るようになったのが特徴的です。
他のJ編成やG編成同様、JR西日本所属の編成として敦賀〜金沢間の普通列車運用に就いていましたが、2024年3月16日の北陸新幹線敦賀〜金沢間延伸開業に伴い、J22編成がIRいしかわ鉄道へ、J23編成がハピラインふくいにそれぞれ譲渡がなされました。
2024年3月16日以降の521系の運用範囲は以下の通りとなります。なお、JR→JR西日本、HF→ハピラインふくい、IR→IRいしかわ鉄道、AK→あいの風とやま鉄道と表記しています。
次に各車両ごとの運用範囲をまとめると、
以上全ての編成、および番台区分を紹介したので、以下の表にまとめました。
521系全体の所属先をまとめると、
以上、2両編成82本の521系が北陸地区で活躍を続けていますが、JR西日本の車両として誕生したこの形式が、2015年および2024年の北陸本線経営分離による譲渡で、気がつけばJR西日本所属の521系より、各3セク会社に譲渡&3セク化後に新造された編成の方が多くなるという”異例の形式”と化してしまいました…(JR西日本所属の割合が24.4%、第3セクター所属の割合が75.6%)
2024年3月16日にJR西日本からハピラインふくい、およびIRいしかわ鉄道へ譲渡された521系は、運用の都合より譲渡後もJR西日本時代の北陸色を纏って引き続き運用に就いている編成がほとんどです。
2024年譲渡車において、各3セク会社への塗色に移行した編成は、ハピラインふくいが元J16編成のHF15編成のみ、IRいしかわ鉄道が元J22編成のIR24編成のみとなっています。但し、今後3セクの塗色に随時変更される予定であり、次第に北陸色の編成は減少していくことでしょう。特に、225系をベースとした前面デザインの北陸色塗装は完全に消滅してしまうので、記録は今のうちに。
あいの風とやま鉄道では、521系1000番台の導入によって413系を置き換えましたが、413系が3両編成だったのに対し、521系は2両編成であるため、3両編成5本=計15両の413系を2両編成6本=計12両の521系で置き換えた構図となり、全体の両数としては3両分減車となっています。
しかし、あいの風とやま鉄道は、県内の輸送力増強のために、521系全体としては初となる”中間車”を新たに製造し、既存編成に組み込んで3両編成化する計画を立てているとのことです。
https://www.pref.toyama.jp/documents/34663/shiryou4_1.pdf
中間車両は製造コストの観点から、モーターのつかない”サハ車”が導入されるものと思われ、乗車定員は現行の約250人から約400人と150人ほど増加させる見込みです。
中間車両は3両分増備されるとのことで、組み込み対象の編成は現段階では未定です(個人的には車齢差の短さを踏まえて1000番台のAK20~AK22編成と予想)。もし中間車が導入されれば、あいの風とやま鉄道発足後に導入された521系の全両数が15両分となり、413系の置き換え両数15両分と揃うこととなります。
3セク化によってより地域輸送へ特化するようになった分、普通列車の本数が増加し、より多くの利用客を確保し経営を安定していくために、投資を惜しまないあいの風とやま鉄道。今後の展望にも目が離せません!
いかがでしたでしょうか?
今回は北陸地区の普通列車を中心に活躍する521系電車に関するまとめ記事でした!
国鉄車の置き換えを完了させ、北陸本線の経営分離に伴う3セク移行で、主に北陸地区の地域輸送に特化する顔として走り続けている521系。これからもまだまだ進化する要素があるので、今後の展開が楽しみな形式と言えるでしょう。
今回はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました!
※今回の記事作成にあたり、以下のホームページの一部内容を引用しております。
[1]JR編成表、配置表 <https://sirasagi683kei.wiki.fc2.com>
[2]JR西日本521系電車-Wikipedia