皆様、こんにちは。U5swです。
今回は、東京メトロ南北線の品川延伸に関する話題に関して説明していきます。
東京メトロ南北線は、1991年に開業した東京の地下鉄路線であり、2021年現在では目黒区の目黒から白金高輪、麻布十番、後楽園、駒込、王子を通り、北区の赤羽岩淵までを結んでいます。目黒からは東急目黒線の日吉まで、また、赤羽岩淵からは埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線の浦和美園まで、それぞれ相互直通運転を行っています。さらに、目黒~白金高輪間は都営三田線との共用区間であり、三田線の車両も乗り入れています。
なお、2022年下旬には、相鉄・東急直通線が開業する予定であり、それに合わせて日吉から新横浜、さらに相鉄線に直通する予定となっています。また、南北線のホームを6両編成から8両編成に延長し、8両編成の車両が運行される予定となっています。
加えて、埼玉高速鉄道線も、浦和美園から先、東武アーバンパークラインとが通る岩槻まで延伸される計画があります。詳細記事はこちらから↓
このように、たくさんの路線と相互直通運転を行い、首都圏の長距離ネットワークの心臓部の役割を担う南北線ですが、その南北線にも、まだ延伸計画があることをご存知でしょうか?
それは、品川への延伸計画です。
南北線と三田線の合流地点である白金高輪から線路を東方向に伸ばし、都心への南の玄関口である品川まで延伸する計画があります。これにより、麻布十番、六本木、永田町といった都心の中心部から、東海道新幹線や、羽田空港に向かう京急線が出ている品川までダイレクトに結ぶことができ、アクセスがより強化されます。詳細はこちらから↓
現在の品川駅は、東海道新幹線、山手線、京浜東北線、東海道線、横須賀線、京急本線が乗り入れており、意外にも地下鉄路線が1つも乗り入れていません(京急本線が1つ隣の泉岳寺で都営浅草線に乗り入れているが)。そのため、地下鉄路線を中心に交通網を張り巡らせている都心の中心部と品川のアクセスに課題を抱えています。
この課題を解決する方法として最有力なのが、南北線の品川延伸です。最近、品川延伸に向けて動き出すという情報が明らかとなったため、建設がより具体的になるものと思われます。参考となるリンクは以下の通り。
では、実際に品川まで延伸されるとして、乗り入れる列車は一体どのような列車になるのでしょうか?
現在の南北線、そして三田線の運行状況から判断するとなると、
「白金高輪止まりの列車をそのまま品川まで運行させる」
のが1番シンプルでしょう。
2021年現在、南北線と三田線の日中時間帯パターンダイヤでは、以下の列車が運行されています。
南北線(1時間あたり10本運行、白金高輪~赤羽岩淵間は6分ヘッドで運行、急行は南北線内各駅停車)
三田線(1時間あたり10本運行、白金高輪~西高島平間は6分ヘッドで運行、急行は三田線内各駅停車)
このまま白金高輪止まりの列車を全て品川まで延長運行(三田線の列車も乗り入れさせると仮定)させるとなると、品川には1時間あたり8本が乗り入れることとなります。都心基準で考えると1時間に8本は少ない方ですが、本数は十分確保できることはわかります。
しかし、この品川延伸をきっかけに、南北線の直通事情に大きな変化が起こる可能性があると考えています。考えられる可能性として、
「南北線が東急目黒線との相互直通運転を終了し、品川~赤羽岩淵、浦和美園間のみの運行になる」
ということが挙げられます。
一瞬、え?と思うかもしれませんし、東急目黒線沿線や目黒、白金台から南北線沿線から乗り換えが必須になり、かえって不便になるだろ!という声が大きくなるでしょう。
しかし、直通運転が終了する可能性がある根拠はいくつか挙げられます。それは以下の通り。
以下に、理由の詳細を述べます。
先述の通り、白金高輪は南北線と三田線が合流する駅です。そのため、駅の構造は2面4線と大きな駅となっています。乗り場は以下の通り。
内側を南北線が、外側を三田線の列車が行き来し、それぞれ麻布十番方面、三田方面へ分岐していきます。対して、目黒方面は外側を目黒、日吉方面に向かう列車が使用し、内側の2線は白金高輪止まりの列車が折り返す引き上げ線になっています。
これが品川延伸になると、引き上げ線をそのまま品川まで延伸させることとなります。
ここで、目黒方面〜南北線直通の列車と、品川方面〜三田線直通の列車を同時に運行させるとなると、白金高輪駅の目黒方面の分岐ポイントで、同時に列車を出発、到着できない「ポイント支障」が発生してしまいます。この支障はダイヤを作成する上で1つの制約が発生してしまう他、遅延が発生した際に信号待ち等が起こってしまいます。
この交差支障を解消するためには、ポイントを交差する列車を無くせばいいので、品川延伸の際に、南北線を走る全ての列車を品川方面に振り分け、目黒方面に直通させなくします。同時に、目黒、および東急目黒線に直通させる列車を全て三田線に任せます。そうすることで、白金高輪の交差支障問題は解決します。
実際、目黒方面〜南北線および品川方面〜三田線は白金高輪でホームタッチで乗り換えられるため、乗り継ぐ手間はかかりません。また、仮に東急目黒線内やもうすぐ乗り入れるであろう相鉄線内でトラブルがあり、遅延が発生したとしても、南北線に直通しないことで、遅延の影響を受けずに済むというメリットがあります。
ここで、品川〜三田線各駅において、三田〜大手町間はJR山手線および京浜東北線の田町〜東京間とほぼ並走する形で路線が伸びていることもあり、品川からの直通便を走らせてもそこまで需要がないことが見込まれます。大手町以北に関しても、JR中央線各停の水道橋駅や、JR山手線の巣鴨駅で接続しているため、品川駅からの需要があるかと言われると微妙です。
一方で、品川〜南北線各駅においては、都心の中心部を走り、JR線だけではカバー仕切れない区間を走行しているため、品川から一定の需要が見込まれる可能性は高いと考えられます。
次に、相鉄直通に関することです。2022年下期に相鉄・東急直通線が開業する予定であり、現在工事が進められています。開業することによって、東急目黒線の日吉駅から新横浜線にそのまま直通し、新横浜駅へ。そしてその先の相鉄線に直通し、海老名、湘南台方面まで乗り入れるという、首都圏の大規模ネットワークが構築される予定です。
これと同時に、南北線、三田線、東急目黒線、埼玉高速鉄道線では、相鉄直通関係や沿線の混雑緩和のため、6両編成から8両編成に対応するためのホーム延長工事が進められており、2022年度を目処に上記路線で8両編成の車両が走れるようになります。
しかし、南北線と直通先の埼玉高速鉄道線に関しては、現存車両の8両編成増車および相鉄直通に関しては、ここまであまり積極的ではないというのが現状です。
まず、南北線の9000系の初期車8編成(B修繕車)と埼玉高速鉄道線の2000系全編成に関しては、既に8両編成に増車されないことが決定しています。これにより、相鉄・東急直通線が開業しても、最長で新横浜までしか運行されません。
続いて、南北線9000系の初期車以外の15編成に関しては、今のところは中間車2両を組み込んで、8両編成に増強することとなっているようです(一部編成は半蔵門線の8000系の中間車を転用するとの噂も?)。ただし、現在は増結のための中間車2両を製造している等の音沙汰はなく、仮に製造するとしても直通線開業まで8両化が間に合うのかは微妙です。
メトロ以外の各社においては、相鉄線が直通用車両の21000系を導入、東急線が相鉄直通に向けて改造工事を進行中、三田線が新型車両6500形の導入と、直通および8両化に向けて着々と準備が進んでいますが…
このことから、1つの可能性として、先述の品川延伸によって南北線の車両を全て品川発着に振り分けることで、南北線の車両全編成において、相鉄直通対応も行わないどころか、増結対応等をそもそも行わないということが考えられます。
増結対応をしないことによって起こるメリットとしては、
「直通対応機器の取り付けや中間車製造を行うことがなく、コストを抑えられる」
ことです。コストは極力抑えたいと思うのは当然ですし、改造に伴う手間もかけずに済みますからね。
また、全ての車両が引き続き6両編成で運行されることや、直通を切ることによる、線内の行き先がほぼほぼ統一されることで、より利用しやすくなるのではないかと考えられます。
相互直通運転を行うことによって、今まで乗り換えを必要としていた区間を1つの列車で移動することができますが、一方で、どこかで列車がストップしてしまうと、巻き添えを食らって遅延が広がってしまい、利用客に迷惑がかかってしまいます。
南北線はそもそも埼玉高速鉄道と東急目黒線で相互直通運転を行っており、三田線とも並行して運行されています。加えて、2022年下旬には、相鉄・東急直通線が開業する予定であり、相鉄線にも乗り入れる列車が現れるため、更なる遅延のリスクが大きくなってしまいます。相鉄・東急直通線には東横線の車両が乗り入れる可能性が高いですし、2019年からは相鉄・JR直通線が開業しているため、遅延拡大リスクの増加は否めません。
そこで、東急目黒線および相鉄線に乗り入れる車両を全て三田線からの列車に統一することで、南北線、および埼玉高速鉄道線は上記路線の遅延の影響を受けないで済みます。逆にもし、南北線や埼玉高速鉄道内で何かトラブルが起きたとしても、東急目黒線や相鉄線に遅延が広がることはありません。
実際、元は相互直通運転を行っていましたが、過去に終了した路線として、「東京メトロ日比谷線」があります。2013年3月までは、中目黒駅から先、東急東横線の菊名駅まで乗り入れていましたが、東急東横線が東京メトロ副都心線と相互直通運転を開始し、さらに西武池袋線や東武東上線とも乗り入れを行うことから、乗り入れ路線が過剰になってしまい、遅延が発生した際の影響が広範囲に及んでしまうことから、直通運転を終了しました。
実際、当時の日比谷線の車両が他路線と規格が異なり、東急東横線のホームドア設置のネックになっていたのもありました(現在は日比谷線の車両も他路線に合わせられた規格の車両に統一された)が、日比谷線は北千住駅から先、東武スカイツリーライン(伊勢崎線)とも相互直通運転を行っており、東横線よりも乗り入れ列車が多いこと、東武スカイツリーラインが伊勢崎や日光、鬼怒川方面や、半直系統も乗り入れる広範囲な路線網を形成していることから、これに5社直通運転を行う東横線に乗り入れを継続させてしまうと、万が一の時に大変では済まされないこととなってしまいます。
このことから、東横線との直通運転を終了し、遅延のリスクを抑えました。
この日比谷線の例が、南北線にも適用される可能性は0ではないかなと考えています。
ここまで、直通を切った場合のメリットを中心に述べて行きましたが、当然デメリットや疑問点も出てきます。実際に考えたものを以下に示すと、
これは誰でもわかる話ですが、品川延伸はそう簡単に実現できるものではありません。特に地下鉄ということもあり、トンネルを掘削していかないといけない、トンネルを掘削するための地下パイプ類等の工事を行わなければならないなど、多くの労力と手間を要します。もしこのまま順調に建設するとしても、開業はおそらく2030年頃までかかってしまうこととなるでしょう。
また、実際に実現できるかどうかも確定事項ではないというのも事実です。個人的に品川延伸はメリットをもたらす部分が多いので、実現に向けて進んで欲しいと思いますが…
もし南北線が全て品川発着に振り分けられ、目黒〜白金高輪間にメトロの車両が一切乗り入れないとなると、この区間は都営単独の路線になります。
しかし、ここで問題となるのが、中間駅の白金台駅。この駅はメトロと都営の共用駅とは言いつつも、駅の管轄はメトロが管轄しています(白金高輪も同様、目黒は東急が管轄している)。
その結果、白金台に南北線の車両が乗り入れないとなると、駅の管轄をメトロから都営に移管しなければなりません。駅の設備等は全て南北線基準で整備されているため、駅の営業においてどうやり繰りして行くかなど引き継ぎを必要とするので、多少の手間がかかるでしょう。
メトロから都営にわざわざ業務を引き継いでまで、運行を切り離すかと言われると、わざわざそこまでやるのか疑問に感じるところです。
直通を切ってしまうと、これまで直通で乗り換えしていた区間が必ず乗り換えしなければならないこととなり、不便を強いられてしまいます。幸いにも白金高輪駅が対面乗り換えが可能な構造であり、階段やエスカレーターを利用してまでの乗り換えは発生しませんが、できれば、「そのまま1本の列車で目的地へ行きたい」と思う方がほとんどでしょう。
実際の利用者の流れやダイヤ作成の面からも、完全に分断するか否かは慎重に考える必要があると思います。また、相鉄直通が始まってから、利用客の流れがどう変わるかで、今後の直通関係が変わってくるでしょう。
いかがでしたか?
今回は、東京メトロ南北線の品川延伸と、それに伴う直通列車の流れに関して説明していきました。
未だ不確定要素が多いため、必ずしもこうなるとは限らないですが、品川延伸は、東京都心の交通ネットワークに1つの革命をもたらすと考えています。
現在は相鉄直通の話題に注目しがちですが、こちらの延伸計画と直通の流れに関しても引き続き注目していきたいものです。
今回はここまでとなります。最後までご覧いただきましてありがとうございました。