皆様、こんにちは。U5swです。
今回は神奈川県の臨港部を走る鶴見線と南武支線に関して、新型車両および転属車両の導入のニュースが入ってきたので、その情報と、車両の導入に関する気になる点、今後の展望に関して私見も交えて紹介します。
まず、鶴見駅を起点に扇町駅、大川駅、海芝浦駅を結び、主に京浜工業団地の通勤客輸送を担っている鶴見線。この路線には過去に山手線など別の路線で走っていた通勤型車両の205系を、一部先頭車改造の上、3両編成9本が活躍しています。
鶴見線の205系↓
その鶴見線に、新型車両E131系1000番台を導入し、205系を置き換えることが、JR東日本のプレスリリースで発表がなされました。2023年冬からの営業運転を予定しています。
https://www.jreast.co.jp/press/2023/yokohama/20230724_y2.pdf
編成構成は従来の205系と同様の3両編成であり、座席はロングシート、車内トイレなしの仕様となるでしょう。導入本数は3両編成8本と205系より1本少なくなる模様ですが、おそらく8編成でも鶴見線全体の運用を回せるものかと思われます。
車両の外観に、沿線の海をイメージしたスカイブルー、E131系の特徴である前面のドットには、過去に鶴見線で活躍していた車両のカラーであるブラウンとイエローを纏うこととなりました。側面のラインは、現行の205系と同様のブルーとイエローのラインを纏っています。
車両の設備等には、これまでのE131系で導入された最新システムを採用しています。ドア上部のLCDによる運行案内表示器(千鳥配置)や車椅子スペース、側面の乗降確認カメラ(ワンマン運転に対応)、線路モニタリング装置(一部編成に導入、番台区分は1080番台が濃厚)を採用して、安全性及び快適性の向上を図ります。
房総・鹿島地区の0,80番台の導入を皮切りに、相模線用の500,580番台、宇都宮線末端部及び日光線用の600,680番台と、主にローカル線区間の導入に充て、従来車両の置き換え及びワンマン運転の実現を主目的に活躍範囲を広げているE131系。
相模線で活躍しているE131系500番台↓
今回は第4陣として、鶴見線に導入されることとなりましたが、この鶴見線用のE131系は、これまでのE131系と異なる仕様で製造されることとなります。その異なる仕様というのが、
“拡幅車体ではなく、ストレート車体で製造されるということ“
です。これまでのE131系は全て拡幅車体で製造されており、車体の幅を広げることによって乗車定員の増加や快適な居住性の確保を実現してきましたが、今回鶴見線で導入されるE131系は、拡幅車体で製造されないこととなりました。
その理由としては、“鶴見線の線形や駅ホームが、拡幅車体に対応していないから“ということが挙げられます。鶴見線は工業地帯の間を縫うように路線網を広げており、かつ沿線に急カーブが多く、国道駅のように急カーブの間にある駅も存在するため、拡幅車体で製造してしまうと、おそらく、拡幅した構造急カーブに対応できなかったり、ホームと車体が干渉してしまう恐れがあったりすることから、ストレート車体で製造することとなったのでしょう(明確な根拠がないためあくまでも予想です)。
実際に首都圏の通勤型車両であるE233系を例に挙げると、ほとんどの車両が拡幅車体で製造されている中、常磐緩行線用の2000番台は、東京メトロ千代田線に乗り入れる関係上、トンネルの構造上拡幅車体の車両が乗り入れられないため、ストレート車体にしつつ前面デザインも変更して導入しています。このようなケースはありますが、鶴見線は全て地上を走る路線であるため、上記とはまた別の事情が絡んでいることとなっています。
これまでのE131系導入の全てにおける共通の主目的として、“導入線区でのワンマン運転の実現“が決まり文句として挙げられますが、今回の鶴見線へのE131系導入も主目的はワンマン運転の実現でしょう。鶴見線は全列車が3両編成という短い編成ですが、205系による運行から依然車掌が乗務している”ツーマン運転”を全区間で行っています。
近年のJR東日本では、短編成の路線を中心に、人件費削減を主目的としたワンマン運転化を進めており、今回の鶴見線もE131系の統一により全線でワンマン運転を開始するものと思われます。
続いて、南武線の尻手駅から鶴見線の浜川崎駅までを結ぶ南武支線です。こちらも過去に山手線等で活躍していた205系を転用、先頭車改造、ワンマン運転対応にして、2両編成3本が現在も活躍を続けています。
南武支線の205系↓
その南武支線に導入されるのが、かつて新潟地区で活躍していたE127系です。こちらは2023年9月13日より営業運転を開始する模様です。こちらも同タイミングでJR東日本よりプレスリリースで発表がなされています。
https://www.jreast.co.jp/press/2023/yokohama/20230724_y1.pdf
E127系は1995年に登場した車両であり、新潟支社に0番台、長野支社に100番台が導入されました。その内、新潟支社の0番台は2両編成13本が導入され、新潟都市圏を中心に活躍を続けていました。
E127系(新潟時代)-PhotoACより引用↓
しかし、新潟地区に後継のE129系が登場したこと、2015年3月の北陸新幹線開業に伴い、信越本線(妙高高原〜直江津間)が第3セクターのえちごトキめき鉄道妙高はねうまラインに転換されるのに合わせ、13本中10本がえちごトキめき鉄道に譲渡(ET127系に改番)され、JR東日本には2本(元V12編成,元V13編成)が残りました(なお、1本は事故廃車済み)。
JR東日本に残存した2本は、主に弥彦線で細々と活躍を続けていましたが、E129系の増備に伴い、2022年改正で一旦運用から外れました。
しかし、2022年6月落雷に伴うE129系の電気系統の故障で長期離脱を余儀なくされ、車両不足が発生したことから、緊急で運用から電撃復帰し、上越線で代走を行いました(代走時は2本を繋げた4両編成で運用に就いていた)。その後、E129系が復活したことで再度運用から離脱し、新潟地区から去ることとなりました。
多くの鉄道ファンが、この2本の今後どうなってしまうのかに関して気になっていました。長野転属?えちトキ譲渡?余剰廃車?まさかの南武支線転属?と色んな予想が立てられていました。その結果…
“まさかの南武支線転属”
という結果に。そもそも地方用の車両が、首都圏の路線に転属すること自体滅多にないため(逆はある)、このニュースを聞いて衝撃を受けた方は多かったでしょう。
南武支線転属において、ラインカラーの変更等改造を行い、2023年7月時点では既に南武支線で試運転が行われています。南武支線は元々ワンマン運転を行っており、E127系も新潟地区でワンマン運転を行っていたこと、座席もオールロングシートであることから転用は容易でした。また、ドア数は205系よりも少ない3ドア車ですが、日中の南武支線は40分に1本と比較的本数は少なめのため、4ドア車が主流の首都圏でも問題はないと考えられます(但し、比較的本数が多めな朝ラッシュ時は、遅延等少し懸念がありますが…)。
今回のE127系の導入に伴い、南武支線用の205系も置き換えられることとなりますが、南武支線用の205系が2両編成3本に対し、E127系は2両編成2本と1本少なくなっており、1日の営業運転で2本が営業車、1本が予備車という扱いになるため、E127系のみで南武支線の運用を全て賄うことは不可能であるため、205系を完全に置き換えることはせず、1本は残存します。そのため、首都圏から205系が完全淘汰されるわけではありません。
今回、新潟でお役御免となったE127系。製造年が1995年と今季で28歳となる車両であり、鉄道車両の寿命が大体30~40年ほどであると考えると、廃車にするにはまだ早い車両でもあります。加えて、車両の機器更新も既に完了しており(東洋GTO-VVVF→東洋IGBT-VVVFへ換装)、E127系より古い205系が未だ残存しているとなると、まだまだ使える車両と言えます。
しかし、上記の通り、全ての205系を置き換えることはできず、1編成だけ残す中途半端な状態となります。205系も古い走行機器を使用しており、かつ機器の製造も終了していることから、205系の寿命もそう長くはありません(今回のE127系置き換えも、運用離脱編成を部品取り要員にして残った205系を延命させる目的があると考えられる)。
このことから、E127系導入から暫くした後、南武支線の車両状況はどうなるのか?可能性として挙げられるのが、以下の2つのケースです。
1つ目の南武支線への新型車両導入ですが、鶴見線と同様のE131系(またはその後継車)を導入し、E127系と205系を一気に置き換える方法です。E127系も数年で製造から30年を超えるため、置き換えされてもおかしくない時期であること、205系を完全淘汰できるという点で現実味はあるでしょう。
JR東日本は今回の鶴見線用のE131系の製造に加えて、横須賀線・総武快速線用のE235系1000番台の製造を続けているため、製造ラインの容量を踏まえた上で、このタイミングで南武支線用の新車を導入しないとも考えられます。
2つ目の試験車両「HYBARI」による205系置き換えですが、HYBARIは2022年に製造され、水素を燃料とし、空気中の酸素と化学反応によって電力を生み出す燃料電池装置と、制動をかけた際に駆動用モーターを発電機として使用して生み出すエネルギーによって電力を生み出す主回路蓄電池によるハイブリッド方式によって車両を動かす電車です。形式名は「FV-E991系」で、2両編成で3つドアと、E127系と同様の構成になっています。
水素電車の詳細はこちらの記事を参照願います。
現在は鶴見線と南武支線において走行試験を行っていますが、もし試験結果が良好で営業用として実用化できれば、営業用の水素電車が新製され、205系を置き換えてE127系と共に南武支線で活躍する可能性もあるでしょう。
現段階では水素電車において未知数な部分が多いため、実用化に至るかは不透明ですし、試験車両がそのまま営業用車両となる可能性は低いので何とも言えませんが、もし実用化できれば南武支線の世代交代と共に、鉄道車両の製造に新たな1歩を踏み出すこととなるでしょう。こちらの動向にも注目です。
いかがでしたでしょうか?
今回は鶴見線に新型車両E131系、南武支線に転用車両E127系をそれぞれ導入するニュースを紹介し、そのニュースに関する詳細や個人的な私見、さらに今後の展望を述べました。
2021~22年に相模線、2022年に宇都宮線・日光線の205系が全てE131系に置き換えられ、205系の活躍範囲がどんどん狭まっていく中、今回鶴見線に205系キラーと言えるE131系を新製導入、南武支線に異例とも言える新潟からE127系の転属導入によって、いよいよ首都圏で活躍する205系は、南武支線に予備車として残る1編成のみとなってしまいます…
ここ数年で205系が貴重な存在となり始めた今、記録をするなら今しかありません!
今回はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました!
過去に予測した、今後E131系が導入されるであろう路線に関する記事↓
過去に予測した、205系の今後の去就に関する記事↓