【なぜ?】JR西日本で1番混雑する路線が可部線である理由と解決策を解説!(2021.12.28更新)

鉄道
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皆様、こんにちは。U5swです。

今回は、2020年度のJR西日本で1番混雑する路線が「可部線」である理由と解決策に関して解説していきます!

可部線とは?

まず、可部線に関して簡単に路線の説明をします。

可部線の全体図。

可部線は、広島市西区にある、山陽線との接続駅横川から北に伸び、下祇園、大町、可部を経由して、広島市安佐北区のあき亀山までを結ぶ、総距離15.6kmのJR西日本の路線です。

かつては可部から更に北西方向に路線を伸ばし、加計、三段峡までを結ぶ路線でしたが、利用客が少なく採算が採れなかったことから、2003年に可部〜三段峡間が廃線となりました。

しかし、安佐北区の河戸地区および亀山地区において、再び交通の需要が増えてきたことから、2017年に、廃線跡を活用し、可部〜あき亀山間が延伸開業されました。一旦廃止された路線が再び復活する事例はJRで初めてのことであり、当時はとても話題となりました。

2017年に開業したあき亀山駅。元々安芸亀山駅が2003年まで営業していたが、場所が大きく異なることから、「あき」とひらがな表記になっている。

全区間が広島市内にあることと、可部線の列車は全て横川から山陽線に乗り入れ、広島まで乗り入れることから、主に市内北部から中心部への生活路線としての役割が大きいです。全線において、広島シティネットワークの対象となっています。

そんな可部線が、2020年度のJR西日本において最混雑路線に!

この可部線ですが、昨年度の最混雑率がJR西日本の中でなんとトップに躍り出たとのことです。ソースとなる記事はこちらから↓

2020年度の最混雑率発表。西日本最混雑区間は意外なあの路線-鉄道プレスさんより

2020年度の最混雑率発表。西日本最混雑区間は意外なあの路線
国土交通省は、2020年度における朝ラッシュ時の最混雑区間を会社別に発表しました。 コロナウィルスの影響で、普段は上位の路線がガラガラだったり、逆にそうでもない

昨年度といえば、新型コロナウィルスに伴うステイホームやテレワークにより、鉄道の利用客が大幅に減少するなど、鉄道利用に関する1つの変革が起こった年でした。

各路線において、利用客の減少に伴う混雑率の減少が起こった中、可部線に関しては混雑率が132%(可部→広島間)とトップに! 2位の学研都市線(鴫野→京橋間)でも120%となっており、可部線がいかに混雑しているかが数値でも読み取れます。ちなみに、2019年度は学研都市線がトップ(139%)、可部線が2位(122%)でした。

では、なぜ可部線が混雑率トップとなっているのか? 次の章では、その原因に関して詳しく説明していきます。

可部線が混雑する理由

まず、今回この記事を書くことになったキッカケとしては、私の以下のツイートが予想以上に伸びたためです。それがこちら↓

そのツイートの中で記した、「可部線が混む理由」に関して深掘りしていきます。

有効長が4両しかない

有効長とは、「その路線に入れる車両の最大両数」のことです。両数が多い分、多くの利用客を運ぶことができ、効率的な輸送を実現することが可能ですが、可部線は、

4両編成までしか入れません。

あき亀山駅のホーム。▲の乗車位置マークに注目すると、手前が2でその奥が3である。▲印は3ドア車を示すため、2の奥には3と4が3つずつ並んで終わる。このことから、4両分しか確保されていないことがわかる。

同じ広島シティネットワークの山陽線、呉線に関しては、幹線の路線ということもあり、8両編成まで入線することが可能であり、国鉄気動車が多く走る芸備線でも、ラッシュ時には6両編成が運行されるなど、大量輸送に適応している中で、可部線は全線において4両編成までしか対応しておらず、輸送力に課題を持っています。この有効長が混雑率の上昇を招いている要因の1つでしょう。

元々可部線が軽便鉄道規格で開業したこともあり、ほとんどの区間が道路や民家に挟まれていることから、ホームの延伸が困難であるという路線事情もあります。

三滝〜安芸長束間を走る227系。側道には線路とのフェンスがなく、向こう側は道路と太田川放水路が並行している。

しかし、ラッシュ時に4両編成は厳しいですよね…

全線単線で増発できない

「両数が増やせないのなら、列車の本数を増やせばいいじゃない。」

それが実現できていれば既に混雑は緩和されています…

この可部線は、横川〜あき亀山の全区間において、

単線の路線

となっており、列車同士の行き違いは全て駅で行われています。そのため、行き違い待ちが発生するだけでなく、駅間ですれ違いができません。加えて、大町、七軒茶屋、上八木、中島、河戸帆待川の5駅は単式ホームであり、列車交換すら行えません。

大町駅に到着する227系。 乗り場が1つしかない単式ホームである。

以上のことから、本数を容易に増やせないことが伺えます。

2021年3月改正時における、可部線の平日朝ラッシュ時(6~9時台)の列車本数は以下の通りです。

可部駅(広島方面行き)

6時台→3本、7時台→2本、8時台→3本、9時台→2本

大町駅(広島方面行き)

6時台→4本(内2本は緑井始発)、7時台→5本(内3本は梅林始発)、8時台→6本(内3本は緑井始発)、9時台→3本

これを見ると、1番多くて1時間に6本しか運行できず、また、緑井、梅林折り返しの列車が半数を占めるため、梅林以北の駅ではラッシュ時でも最大で3本しか増やせません(増やせない理由は梅林~可部間の途中駅である、上八木と中島の2駅が単式ホームであることが、増発のネックとなってしまっているため)。

加えて、上記で説明した「4両編成までしか入線できない」というネックによるダブルパンチによって、ラッシュ時の混雑率を上げてしまっています。

4ドアロングシート車を3ドアクロスシート車に置き換えたこと

可部線では現在、2015年より導入された新型車両の227系0番台「レッドウイング」に統一され、2~4両編成で運行されています。

2015年より広島地区で導入された227系。

この227系の前に走っていた車両は、国鉄型車両の103系と105系がほとんどでした(一部113系や115系も乗り入れていた)。この103系と105系は、片側に4つのドア(一部3つのドアもアリ)の車両で、座席は側窓を背にして座るロングシートを採用している車両でした。このことにより、多少本数や両数が少なくても、ドアの数の多さ、ロングシートを採用することによる立ちスペースが確保されていたため、ラッシュ時の大量輸送にはそれなりに順応していました。

かつて可部線でも運行されていた105系。

しかし、これらの車両を一気に227系に置き換えたことにより、車内サービスが大きく変わりました。

まず、片側のドア数が3つになり(これは、可部線をはじめ、山陽線(三原~岩国間)、呉線で片側3つのドアに統一させたため)、車内の立ちスペースが減少しました。それに加えて、座席がロングシートから、列車の進行方向(あるいはその逆方向)に向かって座るクロスシートの車両に統一され(ただし、車端部はロングシート)、更に車内の立ちスペースが少なくなってしまいました。

227系の車内。クロスシートのため、中長距離の輸送に適しているが、ラッシュ時の大量輸送には適さない構造となっている。

この他にも、車内トイレがバリアフリー化に対応し、スペースが広めに確保されていることや、4両編成での運行時は、2両編成を2本繋げた編成で運行することによる、連結面の乗務員室がデッドスペースとなってしまうことから、車内全体的に立ちスペースが少なく、混雑を激化させてしまっています。

元々227系は、山陽線(三原~岩国間)や呉線でもこの形式に統一されており、運行に制約がでないよう車内設備が共通化されています。しかし、可部線のほとんどの列車は広島発着であることから、103系や105系が可部線を中心に専属的な運用に就いていた頃と同様、可部線の利用実態に合わせた車両を導入してもよいのかなと考えています。

その他の理由

最初に、ツイートの1番下にある「2両編成で走る」というのは、夕ラッシュ時間帯で見られたことであり、朝ラッシュに関しては基本的に4両編成が運行されています(詳細に関しては現地から遠く離れていることもあり不明)。

ツイートで発した理由以外に考えられることとしては、

「競合路線の輸送力や運行ルート」

の問題が考えられます。可部線の代表的な競合路線として、

「アストラムライン」(新白島~大町間)

があります。

アストラムライン

1994年に開業した新交通システムのアストラムラインは、広島市の中心部の本通から、サンフレッチェ広島のホームスタジアムである、エディオンスタジアムの最寄り駅、広域公園前を結んでいます。

アストラムラインの全体図。

アストラムラインの開業とともに、可部線の大町駅が開業し、アストラムラインとの接続が確保され、更に2015年には、これまでただ交差するだけだった山陽線(可部線)とアストラムラインの両方に「新白島駅」が開業し、新たな接続駅となりました。これにより、可部線の新白島~大町間において競合路線となり、混雑の分散化を図りました。

2015年に新たに開業した新白島駅。JRとの接続が強化された。
可部線とアストラムラインの競合区間。時間、距離、本数ではアストラムラインが上回るが…

可部線が単線なのに対し、アストラムラインは複線で建設されており、ラッシュ時の本数も多く確保されています。平日朝ラッシュ時(6~9時台)の大町駅における、本通行きの本数は以下の通り。

  • 6時台:7本
  • 7時台:19本
  • 8時台:16本(内4本当駅始発)
  • 9時台:7本

これを見ると、可部線とは比較にならないほどの本数であることがわかりますね。

しかし、それでも可部線の混雑の解消にはあまり役立っていません。その理由としては以下のことが考えられます。

  • 新白島~大町間の中間駅の利用者数が多い
  • アストラムラインは広島駅方面に行かず、広島駅方面(JR)と広島市内中心部方面(アストラム)で分散されている
  • アストラムラインの車両が小さすぎ(1両分の車体長が8mでドアが1つのみの6両編成、一方227系は19m3つドアの2~4両編成)て、乗客を多く収容できない(本数でカバーしているとはいえ、市内中心部に近づいていくにつれて積み残しも出ている)
  • アストラムラインの運賃が高めである(参考:新白島~大町間がJR:210円、アストラム:290円)

特にアストラムラインが広島駅方面に行かず、車両が小さく、JRよりも運賃が高いという点では可部線に流れてしまうのも無理はないでしょう。

私が考える可部線の混雑緩和対策の最有力策はこれだ。

ここまで、可部線の混雑に関する現状と理由に関して説明していきましたが、次では混雑率の低下に向けてどうするべきかの対策案を述べていきます。

日本全体的に、鉄道の混雑率はコロナ渦により減少している中、特に減少しているわけでもない可部線において、どうすれば混雑が緩和できるでしょうか?

結論を言えば、

「ロングシートの4両固定編成を可部線向けに導入すること」

が1番の最善策でしょう。

まず、両数増加に伴うホーム延長や、本数増加に伴う複線化はあり得ないと言っていいでしょう。そもそもどの区間においてもホーム延長や複線化の用地はありません。

次に、交換設備の増強ですが、「JR可部線活性化連携計画」において、上八木駅を単式ホームから、交換設備のあるホームに増強し、緑井~あき亀山間の本数を増やすということを検討しているようです。ただし、これは2014年の情報であり、現在も実現に向けて進んでいるとは言いづらく、加えてコロナ渦に伴う経営の悪化から、実現は厳しいと考えています。実際、上八木駅周辺を見ると、交換設備を設けられるスペースがあるとは思えないので…

「JR可部線活性化連携計画」の資料は下記のリンクより。

https://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/24375.pdf

以上のようなことから、混雑率を下げるために有力となるのは、「使用車両を改善すること」に限られてきます。

元々103系や105系といった通勤型車両が行き来していた可部線において、これらの車内サービスとほぼ同等な車両を導入することによって、収容力の向上に繋がり、輸送に余裕が出てくると思います。また、4両固定編成にすることで、とことん収容力UPを突き詰めていけるのもポイントです。

ここで疑問なのが、

  • どこかからロングシート車両を転属か譲渡によって持ってくるのか?
  • 現在走っている227系を新たに番台分けさせた上で増備導入するのか?
  • 現存している227系のクロスシート車両をロングシート車両に改造させるのか?

もし何か策を講じるとなれば、上記の3つが考えられます。

ロングシートの車両を転属か譲渡で持ってくる

まず、他線区や他の会社で活躍しているor活躍していた車両を転属や譲渡で持ってくる案ですが、私が有力候補として挙げているのが、

JR東日本の相模線、または宇都宮線、日光線で活躍してきた205系

です。こちらの車両は両者とも新型車両のE131系によって置き換えられることとなり、既定路線であれば205系は廃車解体or海外譲渡となります。

もうすぐ相模線から撤退する205系。
もうすぐ撤退する宇都宮線、日光線の205系。

しかし、両者とも4両編成のロングシート車両であること、半自動ドアボタンが設置されていること、JR西日本でも現在205系が走っていることを踏まえると、205系を譲渡させるのが、可部線の混雑対策にベストだと考えています。

数年前に広島地区の電化区間(山陽線、呉線、可部線)では全定期列車を3ドアの車両で統一しましたが、ホームドア導入はなく単純なドア枚数統一だったので、4ドアの205系を運行させる上で障害は発生しません。

ただし、JR西日本に譲渡するため、保安装置の対応工事や、行き先表示等の対応が必要となりますし、広島車両区の収容力も考慮しなければなりません。また、非インバータ車のため、部品調達が厳しいという課題もあります。

また、民営化後他のJRグループに譲渡するという事例は、 JR東日本の415系をJR九州に譲渡した以外聞いたことがありませんので、同様の事象が起こる可能性は低いと思います。しかし、新型車両を製造したり、座席を改造したりするのもそう簡単にできることではないので、早急に解決したい場合は、205系の譲渡がベストと思われます。

なお、JR西日本のアーバンネットワークで活躍している通勤型車両、207系も最初候補として挙げていましたが、新型車両を導入しないため、単純な転属だと車両不足を起こしかねないので、候補から外しました。

あとは、かつて可部線でも活躍しており、福塩線や宇部線で未だ活躍を続けている105系を転属させることも考えられます。105系は3ドア車ながらロングシートのため、可部線の輸送に適した車両です。特に岡山地区では、もうすぐ新型車両も導入されることが発表されているため、玉突きで転属させることも十分考えられます。しかし、105系も老朽化が進行しているため、転属させてもそこまで長持ちしないことが懸念点です。

ロングシート仕様の227系を追加投入する

次に、227系のロングシートver.を新たに製造して導入することですが、和歌山線やきのくに線等で活躍している1000番台がロングシートのため、導入にあたって差し支えはないでしょう。

ただし、製造には当然時間を要することと、車両の新造にはJR西日本の毎年度ごとの経営計画に基づいて行われるため、突然計画を変更して導入を進めるとは考えられません。

既存の227系の一部編成をロングシートに改造する

最後に、既存の227系の一部車両をロングシートに改造する案ですが、JR西日本が過去にクロスシートの車両をロングシートに改造したという実績は聞いたことがありません(113系や115系をボックスシートから転換クロスシートに改造する工事はあるが)。

ただし、座席を改造するには工場に入場させなければならず、予備車が足らなくなってしまうので、車両のやりくりに気を遣わねばなりません(コロナ渦で減便しているとはいえ)。

まとめ:可部線の課題は解決できるのか?

いかがでしたでしょうか?

今回は可部線の混雑率がトップであることに関して、その理由と解決策を説明していきました。

今後の情勢の変化や少子高齢化に伴う利用客の減少等で大きく変わる可能性もありますが、混雑緩和は鉄道会社の課題でもあるため、今後どのような対策が行われるのか注目しましょう。

今回はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました!

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