皆様、こんにちは。 U5swです。
今回は先日発表された近鉄の新型車両に関して説明します!
2024年秋に待望の新型車両導入へ!
2022年5月17日、近鉄は2024年秋を目処に一般列車用の新型車両を導入することを発表しました。
まずは4両編成10本を奈良線、京都線、橿原線、天理線に導入し、既存の旧型車両を置き換えます。
座席は5800系や5820系などに採用されている、ロングシートとクロスシートの切り替えが可能な「デュアルシート」を採用した「L/Cカー」となっており、LCDの車内案内表示器も搭載する予定となっています。
導入に関するニュースとプレスリリースは以下の通り。
https://www.kintetsu.co.jp/all_news/news_info/sinngatasyaryou.pdf
外装を見てみると、前面のデザインはこれまでの車両にはない独特かつ奇抜ないかついデザインとなっており、今までの近鉄のイメージを覆すものとなっています。
側面の配色はこれまでの近鉄電車を象徴する赤と白の配色が採用されているのに加え、グレーのラインが追加されたデザインとなっています。これは、2004年までにプロ野球球団として運営されていた「近鉄バファローズ」の当時のユニフォームのデザインをイメージしているという声も挙がっています。
一般型車両の導入は実に16年ぶりに!
近年の近鉄で言われている決まり文句が、
「一般型の新型車両が全く導入されない」
「一般型はいつまでも古い車両ばっか」
となっています。
それもそのはず、近鉄の一般型車両で1番新しく導入されたのが、
9020系の9039F(2両編成のシリーズ21)と9820系の9830F(6両編成のシリーズ21)であり、製造年は
“2008年”
となっており、実に10年以上新型車両が導入されていません。
ちなみに、近鉄線で活躍する一般型新型車両としては、2022年3月にデビューした、京都市営地下鉄烏丸線の20系となり、デビュー時は「やっと近鉄に新車が入ったか」と話題になっていましたが、20系デビュー前の新型車両は、2011年に増備された阪神1000系の1212Fと1213Fにまで遡ります。
今回の発表により、近鉄としては“16年ぶりの新型車両導入”となります。
これまで古いというイメージがつきがちだった一般型車両が、今回の導入で変わることとなります。
なぜ新型車両がここまで導入されなかったのか?
では、なぜ2008年の導入を最後に、新型車両は導入されないままだったのか?理由を以下に挙げてみました。
特急車両の導入とリニューアルによる投資に専念していたため
近鉄電車の運行の中心は「近鉄特急」であり、大阪、京都、奈良、名古屋、伊勢志摩、吉野を起終点とし、大都市同士や観光地を結ぶ大動脈を形成しています。そのため、様々な用途に合わせたビジネス特急やリゾート特急が多数運行されています。
ここで、2008年以降の近鉄特急の動きを簡単にまとめました。
- 2009年→<標準軌用汎用特急車両>22600系「Ace」デビュー
- 2010年→<狭軌用汎用特急車両>16600系「Ace」デビュー
- 2011年→<狭軌用観光特急車>22600系「さくらライナー」リニューアル工事施行
- 2012年→<標準軌用観光特急車両>23000系「伊勢志摩ライナー」リニューアル工事施行(2013年に完了)
- 2013年→<標準軌用観光特急車両>50000系「しまかぜ」デビュー
- 2015年→<標準軌用汎用特急車両>22000系「ACE」リニューアル工事施行(2020年に完了)
- 2016年→<狭軌用観光特急車>16200系「青の交響曲」デビュー(一般通勤型車両6200系を改造)
- 2020年→<標準軌用名阪特急車両>80000系「ひのとり」デビュー
- 2022年→<標準軌用阪京(観光)特急車両>19200系「あをによし」デビュー(標準軌用汎用特急車両12200系を改造)
以上のことから、多くの特急車両がデビュー、およびリニューアル改造を受けていることから、いかに近鉄が特急を重視して投資を行なっているかがわかります。勿論、ビジネスから観光、帰省、お出かけと様々な用途で重宝される特急車両を、一般車両より優先しない理由がないですよね。
また、車両の製造費も大変お高くついており、特に50000系「しまかぜ」と80000系「ひのとり」に関しては、
- 50000系「しまかぜ」→1編成51.5億円(2編成が18.5億円、1編成が14.5億円。1両あたり約2.8億円相当)
- 80000系「ひのとり」→72両で184億円(1両あたり約2.5億円相当)
と他の車両とは比較にならないくらいの値段となっています。
これだけのお金を使うとなると、一般型車両の導入は予算面からかなり厳しいことが伺えますし、容易に導入できなかったことがわかります。
新型感染症以前より、ダイヤや停車駅の見直しで車両に余剰が発生していたため
近年は新型感染症の影響から、多くの鉄道会社で列車の減便や廃止が相次いでいますが、近鉄に関しては、感染症流行以前から、一般列車の見直しが行われていました。
以下に見直しがメインのダイヤ改正の代表例を2つ挙げていきます。
2012年3月20日のダイヤ改正
この改正においては、輸送の効率化による減便や運行区間短縮、種別の新設・統合が行われていました。一般列車の見直しを一部挙げていくと、
- <京都・橿原線>昼間時間帯の京都〜橿原神宮前間の普通を、一部京都〜新田辺間に短縮
- <京都・橿原・天理線>昼間時間帯の京都〜天理間の急行を削減
- <京都・奈良線>昼間時間帯の竹田〜奈良間の急行を削減(烏丸線直通便)
- <大阪線>昼間時間帯の大阪上本町〜青山町間の急行を、一部大阪上本町〜名張間に短縮
- <名古屋線>名古屋〜富吉間の準急を削減
- <湯の山線、鈴鹿線>昼間時間帯の普通を削減
その他詳細は以下のプレスリリースをご覧ください。
https://www.kintetsu.jp/news/files/120120daiyahenkouteisei120319.pdf
2018年3月17日のダイヤ改正
この改正においては、大阪線、名古屋線の急行の停車駅が追加されたことにより、各線区で運行区間の見直しが行われました。
- <大阪線急行>:大和朝倉駅、長谷寺駅に追加停車
- 大阪上本町〜榛原間の区間準急、普通の大半を大和朝倉駅or五位堂駅折り返しに短縮
- <名古屋線急行>:南が丘駅、桃園駅に追加停車
- 名古屋〜伊勢中川間の普通の大半を津新町駅折り返しに短縮
- 白塚〜賢島間の普通の大半を伊勢中川駅折り返しに短縮
その他詳細は以下のプレスリリースをご覧ください。
https://www.kintetsu.co.jp/all_news/news_info/2018daiyahenkouv3.pdf
このような減便、運行区間の短縮が行われたことにより、運用数が少なくなって車両に余剰が発生することとなります。このことから、運用に必要な編成数が少なくなることから、仮に老朽化によって旧型車両を廃車しても新型車両を導入する必要がありません。
以上の面において、一般車の新型車両が暫く導入されなかったと考えられます。
新型車両はどの車両を置き換える?
以上のような理由もあり、一般の新型車両の導入が見送られ続けていましたが、旧型車両の老朽化による置き換えがすぐそこまで迫っていることや、特急車両の導入に目処が立ったことで、一般型車両にもようやくテコ入れが行われることとなりました。
第1陣が奈良線、京都線、橿原線、天理線に導入されることから、置き換えの対象は8000系列(8000系、8400系、8600系、8800系)になるでしょう。
この系列は1964年から1980年まで製造されたグループであり、登場から既に40~50年経っているベテラン車両です。一部内装をリニューアルした編成もありますが、老朽化の進行は否めず、世代交代が必要となっています。
2022年現在の8000系列の現役車両(編成数)は以下の通り。
- 8000系→4両編成7本
- 8400系→3両編成7本(田原本線ワンマン運転対応)、4両編成6本
- 8600系→4両編成20本、6両編成1本
- 8800系→4両編成2本
以上のように4両編成がほとんどを占めている8000系列のため、新型車両の第1陣が4両編成で製造されることとなったのでしょう。特に古い8000系の置き換えを優先して導入を進めるものと思われます。
阪神線、京都市営地下鉄烏丸線の乗り入れは実現する?
近鉄電車は大阪難波から神戸三宮まで阪神なんば線、阪神本線に、竹田から国際会館まで京都市営地下鉄烏丸線と、それぞれ相互直通運転を行なっています。
そこで気になるのが、今回導入される新型車両が、両路線に乗り入れることはあるのか?ということ。
実際、今回導入される新型車両の直通の可否は既に出ており、
「両路線共に乗り入れる設計ではなく、今後の増備車も乗り入れ対応仕様にはしない」
とのことです。
相互直通運転に関する可否に関しては、こちらの記事で明らかとなっています↓
乗り入れを行わない理由としては、以下のことが考えられます。
- 阪神線、烏丸線の両路線に乗り入れない8000系列を置き換えるのが主目的なため
- <阪神線>従来の乗り入れ車両との併結運転に対応しない予定のため?
- <阪神線>4両固定編成は乗り入れを行なっていないため(2両編成、6両編成のみ乗り入れを行なっている)
- <阪神線>従来の乗り入れ車両で十分直通運転が行えるので、追加で対応編成を導入する必要がないため
- <烏丸線>第1陣が4両固定編成なのに対し、烏丸線は全て6両固定編成のため
- <烏丸線>従来の乗り入れ車両が余剰気味なので、導入する必要がないため
いずれにしても、近鉄線内のみのベテラン車両を置き換えることが目的なので、乗り入れは行わないものと思われます。
1991年から導入されている1020系(一部阪神乗り入れ車)や、1986年から導入されている3200系(烏丸線乗り入れ車)といった、登場から30年以上経っている直通対応車両もありますが、それ以上に活躍しているベテラン車両が多すぎるので、直通対応車両を置き換える必要もありません。
他形式車両との併結運転は行われる? ブレーキ方式の違いから予想
近鉄電車は特急型車両も一般型車両も、一部形式を除いて新旧関わらず併結運転を行うことで有名です。そのため、古い車両と新しい車両において「ブレーキ方式」に違いが見られます。
それが、「電磁直通ブレーキ」と「電気指令式ブレーキ」です。
電磁直通ブレーキは主に古い車両に採用されているブレーキであり、常用ブレーキから非常ブレーキに入れる際、ブレーキに必要な空気を一気に抜くため、「ジャ!」と大きな音を出すことが特徴です。終着駅でよく見られ、地下駅では特に大きく響くため、音の大きさにビビってしまう方が多いでしょう。
近鉄の一般型車両の大半がこの車両であり、電気指令式ブレーキが普及し始めた1980-90年代に登場した1020系列や5200系、5800系も古い車両と併結するため、電磁直通ブレーキを採用しています。
一方で電気指令式ブレーキは、電磁直通ブレーキで必要としていた直通管やブレーキ弁を持たず、電気信号のみで制御を行うブレーキであり、電磁直通ブレーキよりも省力化よ軽量化を実現できることから、主に新しい車両で導入が進められています。電磁直通ブレーキとは異なり、非常ブレーキをかけた際に「ジャ!」と大きな音が鳴らないことが特徴です。
近鉄の一般型車両では他形式と併結運転を行わない烏丸線乗り入れ車両(3200系、3220系)やけいはんな線の7000系、7020系、および近鉄線に乗り入れる阪神電車、京都市営地下鉄烏丸線の車両は全て電気指令式ブレーキを採用しています。
この電磁直通ブレーキと電気式ブレーキは、ブレーキの仕組みが異なる点から、基本的にこの両者の併結運転はできないのが基本となっています。
しかし、2000年代から登場した3220系以外のシリーズ21も電気指令式ブレーキを採用しているものの、古い車両と併結運転ができるように、電磁直通ブレーキ式の空気圧と電気指令を相互変換する読替装置を搭載しています。そのため、電気指令式ブレーキでも非常ブレーキをかけた際に、「ジャ!」と大きな音が出ます。
ここで、今回導入される新型車両はどうなるでしょうか?
個人的な予想としては、「他形式との併結は行われない可能性がある」と考えています。
今回の新型車両は8000系列といった古い車両を置き換えることが目的となるため、古い車両との併結運転に対応する必要性が薄いことや、電磁直通ブレーキ対応車との併結運転に対応する機器を搭載することによるコストが増えてしまうということから、他形式と併結しない単独の運転、あるいは新型車両同士での併結運転に限定するものと思われます。
阪神電車に直通しない理由にも挙げていましたが、阪神電車に直通する近鉄車は現在、1020系列や5800系という電磁直通ブレーキ車と、3220系以外のシリーズ21という、読替装置を搭載した電気式ブレーキ車が共通で区別なく運行されているため、新型車両を入れるとかえって運用に制約がかかって柔軟に車両をやり繰りできない事態になってしまう可能性があるものと思われます。
もしかするとシリーズ21同様電磁直通ブレーキ車と併結可能な読替装置を搭載して他形式と併結できるような仕組みにすること可能性も十分にあり得ますが、車両導入の目的から見ると他形式と独立して運用に入る可能性も考えられます。
まとめ:新型車両のデビューが待ち遠しい!
いかがでしたでしょうか?
今回は近鉄の一般型新型車両に関する内容を紹介しました!
個人的にも近鉄は馴染みのある私鉄ですが、昔から新型車両は少なく、古い車両が多いなというイメージが付いていました。
沿線の方をはじめ、待望の新型車両が入るということで、近鉄のイメージがどのように変わっていくのか、非常に楽しみです。2年後のデビューが待ちきれませんね!
今回はここまでとなります。最後までご覧くださいましてありがとうございました!
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