皆様、こんにちは。U5swです。
今回は日本の長大路線の1つである山陰本線の内、関西圏のアーバンネットワーク圏内に入る嵯峨野線(京都〜園部間)に関して紹介します。
嵯峨野線は、京都〜幡生間を結ぶ山陰本線の内、関西圏のアーバンネットワークの範囲にある京都〜園部間の区間で使用されている路線愛称です。
嵯峨野線の愛称は1988年3月より使用されています。京都駅での乗り換え案内では”嵯峨野山陰線”という案内もされており、山陰本線の路線であることも示しています。
京都駅を起点に、梅小路蒸気機関車館や京都鉄道博物館の最寄の梅小路京都西駅、京都市営地下鉄東西線との接続駅である二条駅、日本有数の観光地で嵯峨野観光鉄道との接続駅である嵯峨嵐山駅、2020年にJリーグクラブの京都サンガF.C.の新たなホームグラウンド「サンガスタジアム by KYOCERA」の最寄駅となった亀岡駅を経由し、南丹市の中心駅である園部駅までの34.2kmを結んでいます。
30年ほど前までは、非電化かつ単線のローカル線のような路線であり、主要時間のかかる路線でしたが、輸送力の改善に向けて大きな改革が施されました。
1989年3月には、現在の嵯峨野観光鉄道が走行する旧・山陰本線の嵯峨(現在の嵯峨嵐山)〜馬堀間を複線の新線に切り替えを行い、スピードアップと走行距離短縮による所要時間短縮を実現しました。また、太秦駅が開業し、並河駅と吉富駅に行き違い設備を新設して増発等の利便性向上に努めました。
翌年の1990年3月に京都〜園部間が電化され、国鉄型車両の113系や117系が運用に入るようになりました。
1996年に二条〜花園間が高架化された他、山陰線の園部〜福知山間の電化から、電車特急の運行が開始され、国鉄型特急車両183系の運行が開始されました。4年後の2000年には二条〜花園間に円町駅が新規開業したと同時に複線化され、快速列車の運行も始まりました。
2008〜2010年の間で京都〜園部間の全線複線化事業が進み、2010年3月に全線複線化が完了、全ての快速・普通列車が221系と223系5500番台の運行に統一されました。
2011年3月より新型特急車両287系がデビュー、2012年に日根野支所所属の381系が転属し、183系を置き換えていきました。また、2015年には、その381系を置き換えるため、特急車両289系の運行が開始されました。
最終的には、2019年に梅小路京都西駅が開業し、現在に至ります。
嵯峨野線で活躍する車両は、以下の通りとなります。
1989年に東海道・山陽本線の新快速用車両、および関西本線の大和路快速用車両として導入された、JR西日本分割民営化後最初の近郊型車両です。
2008年に網干へ223系が導入されたことにより、網干にいた221系の一部編成が京都に転属し、嵯峨野線での運用に就き始めました。その後も網干や奈良から京都に転属がなされ、2010年3月の京都〜園部間複線化完了と同時に、嵯峨野線内での113系,115系の運用を全て置き換え、同線の快速・普通列車は221系と後述する223系5500番台に統一されました。
その後も嵯峨野線の主力車両として活躍を続けていましたが、2021年より奈良所属201系の置き換え、および2023年3月改正より、おおさか東線の直通快速を奈良所属221系が担当することとなったため、4両編成の221系の一部編成が奈良に転属し、代わりに網干、宮原、日根野より223系が、京都所属113系の置き換えも兼ねて転属しているため、2023年現在では223系の方が編成数が多くなっています。
しかし、今でも嵯峨野線を中心に湖西線、草津線の運用も担当しています。
その一方で、117系の置き換え用に6両編成の221系が他所から転属および編成組み替えにより増えており、2023年3月改正からは6両編成の221系も嵯峨野線の営業運転に入るようになりました。
2023年3月27日時点での221系(京都所属)は、
が在籍しています。
1999~2008年にかけて、阪和線および関西空港線の関空・紀州路快速用の223系0番台の増発による編成増強、および編成組み替えに伴い製造された形式です。関西空港への空港アクセスの観点から、1+2列の転換クロスシートを採用しています。
最近までは全車両が日根野支所に所属していましたが、近年の新型感染症に伴う利用者低下によって、減便や運行区間短縮が相次ぎ、運用数が減少しました。よって、車両に余剰が出たことから、余剰車の有効活用および113系の置き換え用として、2022年から23年にかけて8編成の2500番台が京都に転属しました。
転属してから長らく営業運転に就いていませんでしたが、2023年3月18日の改正より、営業運転を開始しています。
転属した2500番台は、2500番台同士の連結に限らず、221系や223系5500番台、223系6000番台との併結運転ができるような性能に改造しているため、221系や223系6000番台と共通運用を組んで嵯峨野線や湖西線での営業運転を行なっている他、嵯峨野線では福知山の223系5500番台との併結も実現しています。
2023年3月27日時点での223系2500番台(京都所属)は、
が在籍しています。
2008年に、当時福知山支所に在籍していた113系や115系を置き換えるために導入された2両編成の車両です。北近畿地区のワンマン運転に対応した形式であり、同時期に嵯峨野線で営業運転を開始した221系と併結運転ができるよう、最高時速を120km/hに抑えています(従来の223系は130km/h)。
主に福知山支所が管轄する普通列車の運用(山陰本線:園部〜福知山〜城崎温泉間、福知山線:篠山口〜福知山間、舞鶴線)が中心ですが、先述の通り、嵯峨野線の快速・普通運用にも入ります。嵯峨野線の運用に入る際は、223系5500番台単独での運用はなく、必ず京都方に221系or223系2500番台or223系6000番台の4両編成を併結して運用に就いています。
2023年3月27日時点での223系5500番台(福知山所属)は、
が在籍しています。
2021年に221系の4両編成2本が奈良支所に転属したことによる補填として、223系2000番台4両編成2本が京都支所に転属され、6000番台化(最高時速を120km/hに落とす)された後、3月に営業運転に入りました。その内1編成は、「森の京都QRトレイン」ラッピング電車として活躍しています。
先述の221系や223系2500番台と共通運用を組んでおり、221系、223系2500番台、223系5500番台との併結運転も行なっています。
2022年に入り、関西圏のあらゆる路線において、新型感染症による需要低下から減便や運行区間短縮を行ったことで、網干と宮原から余剰となった223系たちが続々と京都に転属しており、113系や117系の置き換え用、および奈良に転属した221系の補填分として数を増やしつつあります。主に嵯峨野線と湖西線で活躍を行なっています。
2023年3月のダイヤ改正からは、6両編成の223系も嵯峨野線で活躍しています。
2023年3月27日時点での223系6000番台(京都所属)は、
が在籍しています。
なお、223系の転属に関しては、こちらの記事で詳しく説明しています。
2011年3月に、国鉄型特急車両183系を置き換えるために導入された特急型車両です。嵯峨野線では「きのさき号」「はしだて号」「まいづる号」の電車特急のほとんどの列車で運用に入っています。
2015年3月に、北陸新幹線(長野〜金沢間)が開業したことによる北陸地区の在来線特急の再編成に伴い、「しらさぎ号」で使用されてきた683系2000番台を、交流機器を外して編成組み替えを行い、289系として福知山支所(日根野支所)に転用され、2015年10月より営業運転に入りました。これにより、国鉄型特急車両381系を置き換えています。
289系は福知山線特急「こうのとり号」の運用が中心なため、2022年現在では嵯峨野線では「きのさき号」2往復の運用に留まっています。
1996年に当時の北近畿タンゴ鉄道が導入した気動車特急です。当時は「タンゴディスカバリー」という列車愛称が付けられており、2011年の特急列車愛称再編までは特急「タンゴディスカバリー号」として、嵯峨野線を始め運用に就いていました。
特急列車愛称再編後は「はしだて号」「まいづる号」として他の電車特急と共に北近畿特急を支えており、2015年からはリニューアル工事によって列車愛称が「丹後の海」に変更され、2022年現在も「はしだて号」「まいづる号」の併結列車2往復の運用を持ち、嵯峨野線で活躍を続けています。
この他、臨時観光列車として、主に山陰本線と山陽本線を周遊する寝台列車(クルーズトレイン)の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の87系気動車が、ごく稀に嵯峨野線に顔を出します。
嵯峨野線には、特急、快速、普通の3種別が運行されています。
北近畿地区の特急であり、「きのさき号」「はしだて号」「まいづる号」の3種類の愛称があります。その内まいづる号は必ずきのさき号orはしだて号に併結する形で運行しています。
ほとんどの時間帯で毎時1本運行されています。嵯峨野線内での停車駅は全ての特急列車で統一されており、京都・二条・亀岡・園部の4駅に停車します。乗車には乗車券の他指定席特急券(グリーン券)が必要です(2022年3月より、自由席が廃止)。
使用車両は287系、289系、KTR8000形です。
京都〜亀岡間で通過運転を行う速達列車です。京都〜亀岡間の停車駅は京都・二条・円町・嵯峨嵐山・亀岡で、亀岡〜園部間は各駅に停車します。
運行本数は下り(園部方面)は日中時間帯毎時1本、夕方時間帯毎時2本であり、上り(京都方面)は朝時間帯毎時1~3本、日中〜夕方時間帯毎時1本運行されています。日中時間帯の快速は、亀岡で亀岡発着の普通と接続を取り、朝・夕方時間帯の快速は亀岡以外に嵯峨嵐山でも普通と接続を取ります。また、朝1本の京都行きは、亀岡で特急の待避を行います。
京都〜園部間の運行が主体ですが、朝夕時間帯は胡麻始発や福知山発着がある他、サンガスタジアムでJリーグの試合が開催される際は臨時列車として京都〜亀岡間の快速が運行されます。
使用車両は221系と223系です。
全区間各駅に停車する種別です。日中時間帯は京都〜亀岡間で毎時3本(20分ヘッド)運行されており、2022年の改正からは亀岡〜園部間での運行が取り止められています(快速が普通の代替を果たしている)。その他の時間帯では毎時1~5本の運行となっています。また、嵐山の観光シーズン時やサンガスタジアムの試合開催日には増発がなされます。
使用車両は221系と223系です。
駅名 | 普通 | 快速 | 特急 |
---|---|---|---|
京都 | ○ | ○ | ○ |
梅小路京都西 | ○ | | | | |
丹波口 | ○ | | | | |
二条 | ○ | ○ | ○ |
円町 | ○ | ○ | | |
花園 | ○ | | | | |
太秦 | ○ | | | | |
嵯峨嵐山 | ○ | ○ | | |
保津峡 | ○ | | | | |
馬堀 | ○ | | | | |
亀岡 | ○ | ○ | ○ |
並河 | ○ | ○ | | |
千代川 | ○ | ○ | | |
八木 | ○ | ○ | | |
吉富 | ○ | ○ | | |
園部 | ○ | ○ | ○ |
ここ30年でより発展した嵯峨野線ではありますが、発展した分たくさんの課題を抱えています。それが、
「嵯峨野線の混雑問題」です。
以下に、嵯峨野線の混雑が問題となっている要因を挙げています。
まず、嵯峨野線は全体的に列車本数が少なすぎるという課題が挙げられています。
嵯峨野線は嵐山といった観光輸送、サンガスタジアムのサッカー観戦客輸送を担っており、シーズン時やピーク時においては列車の増結、および臨時列車の増発を行なって、乗客の大量輸送に対応しています。
しかし、この2つの輸送に加えて、平日朝夕ラッシュ時の通勤通学輸送も担っています。嵯峨野線は沿線に学校も多く、京都駅や二条駅といった他路線の接続路線もあることから、上下線において学生の利用が多くなっています。また、嵯峨野線は沿線に住宅街となっている場所も多く、京都市内、および大阪方面へのベッドタウンの役割も担っているため、朝は上り(京都方面)、夕方以降は下り(亀岡、園部方面)において、通勤利用客が多くなっています。
以上のことから、ラッシュ時間帯には多くの列車を走らせる必要がありますが、ここで、二条駅の平日朝夕ラッシュ時における列車の発着本数を見てみると、
ご覧の通り、京都市内の中心部に近い二条駅でも、これくらいの本数で運行されており、個人的には少ないなと感じます。
確かに、嵯峨野線の周辺には多くのバスや鉄道路線がありますし、近年の新型感染症の影響により需要が低くなったことから、単に本数増やせ!というのは軽率かもしれません。
しかし、バスや他の鉄道路線と比較すると、速達面では明らかに嵯峨野線の方が有利ですし、運賃も区間によっては嵯峨野線の方が安い区間もあります。そして、京都駅に直結するというだけでも通勤通学需要はとても大きくなります。特に、京都駅に近づくにつれて利用者はどんどん増えていくため、最悪積み残しが発生する場合もあります。
よって、個人的には、
これくらいはやっていいのかなと考えています。なお、運行区間に関しては、特に混雑の集中する京都〜嵯峨嵐山、亀岡間の運行が良いでしょう。
とはいえ、列車本数を簡単に増やせるかと言われると微妙です。
元々嵯峨野線は全区間において単線の路線であり、列車同士の行き違い待ちを駅で行わなければならず、速達性は勿論、本数の増発も厳しい状況でした。しかし、2010年3月に京都〜園部間が全線複線化されたことで、所要時間の短縮と列車本数の増発が可能となり、全区間単線時代より確実に利便性は向上しました。
とはいえ、全線複線化とは言いつつも、厳密に言えば一部単線の区間が残ってしまっています。それが、「京都駅構内」です。
この京都駅構内は、元々嵯峨野線が単線で走っていたことから、単線分の用地しか確保されておらず、また、京都駅構内はJR京都線(東海道本線)と並走しているため、線路を増設するスペースが残されていません。加えて、一部区間では、京都〜関西空港間を結ぶ特急「はるか号」の関西空港行きが線路を共用する場所もあります。
そして、京都駅の嵯峨野線ホーム(関空特急はるか号用も含む)は、
となっており、快速・普通列車は32,33番乗り場の2線でやり繰りしなければならないので、本数を増やしすぎると京都駅手前で列車がつっかえてしまいます。
JR中央快速線の東京駅みたいに、嵯峨野線のホームのみ高架に移せられたらスムーズに列車を捌けられると考えられますが、こちらも周辺の用地に余裕がないためあり得ません。
よって、この少しだけの単線区間が、列車の本数を増やしにくいボトルネックとなってしまっており、しかも1番利用者の多い京都駅構内にある以上、増やしたくても増やせない大きな悩みの種となってしまっているのです。
先述した通り、列車本数を増やしにくい原因を抱えている以上、次に考えられる混雑緩和対策は、「編成両数」をできるだけ長くすることが挙げられるでしょう。
ここで、嵯峨野線のホーム有効長は全ての駅で8両編成まで対応しています。
次に、嵯峨野線の快速・普通列車の編成両数ですが、
の3種類となっています。また、2022年現在運用中の編成において、
となっているため、
という構成で運行しています。
先述の通り、嵯峨野線は通勤通学路線かつ、観光路線、サッカー観客路線と3つの需要を持っており、時間帯とシーズン、イベントが重なるとより混雑が激化します。よって、このような場合は6両編成や8両編成の列車が多く走ります。
しかし、嵯峨野線の快速と普通のほとんどは「短い4両編成」での運行が中心となってしまっています。これが需要の少ない早朝・深夜や平日日中時間帯ならまだ4両編成でも賄えますが、問題は「混雑の集中する朝夕ラッシュ時にも平気で4両編成の列車が走っていること」です。特に朝夕の上り(京都方面)列車は、京都駅に近づくにつれて混雑がピークとなり、最悪の場合積み残しが発生してしまっています。
上記の動画を見ても、4両編成が多いことで車内がぎゅうぎゅう詰めと化しており、輸送力不足であることがわかります。特に京都方の編成においては、嵯峨野線ホームの立地上、改札や他路線のホームに1番近いということもあり、混雑の密度が高くなってしまっています。これに関しては利用者がもう少し分散乗車に努めるべきだと思いますが、園部方の車両に乗るほど改札出場や乗り換えに多くの時間を要してしまうため、時間に余裕がなければ厳しいというのが問題です。
ここで、嵯峨野線の4両編成の列車がなぜ多いのかという理由ですが、京都支所の車両の編成数と運用数、運用範囲が大きな要因となっています。
2022年9月現在、京都支所で運用に入っている221系は4両編成22本、223系6000番台は4両編成7本となっており、もしこれらで8両編成を可能な限り組成するとなると14編成組成することができます。
しかし、京都支所の221系&223系運用数は平日で22運用(内3運用は冬季霜取り対策で2パンタ車固定)あるため、予備車を留置しておくことを加えても、全列車を8両で運行することができません(特に朝ラッシュは22運用全てが運用入りする<内1運用は草津線運用>)。加えて、朝ラッシュ時以外は嵯峨野線以外に湖西線や草津線の運用にも就かなければならず、嵯峨野線の運用に集中的に入れられません。
また、福知山支所の223系5500番台と組成して6両で運行する運用もありますが、223系5500番台の運用は北近畿地区での普通列車の運用が中心なので、6両の運行も限定的となってしまいます。
以上が4両編成が多い理由となりますが、先述の通り、嵯峨野線は運行本数が少ない方かつ運行本数を増やしにくいという特性があるため、混雑対策には編成両数を増やすのが最善の選択肢ですが、現状の編成数と運用から、増結も厳しいという状況となってしまっています。
なお、運用に関しては、こちらのサイトを参考に説明しています。
そして、嵯峨野線の車両が、ラッシュ時や観光シーズン時、サッカー開催時に大量に乗客を運べるような仕様になっていないのも、混雑を悪化させている原因となってしまっています。
現在嵯峨野線を走る221系や223系は、”近郊型車両”という「中長距離の列車を中心に運用に就く車両」であり、車内の座席は「2+2の転換クロスシート」が搭載されています(ただし、223系5500番台の一部座席はロングシート)。また、長距離の移動を考慮し、園部方の先頭車両にはトイレが設置されています。
以上のことから、「クロスシート車両」で統一されている嵯峨野線は、ロングシートの車両を走らせている路線より収容力が低く、大量輸送に不向きです。
快適な移動がしやすいのがクロスシート車のメリットですが、嵯峨野線においては、混雑における時間帯やイベントが多く発生するため、クロスシート車のデメリットの部分が多いことが現れています。
混雑緩和対策として挙げられる筆頭候補として、「ロングシートの車両を導入する」とか「ドア枚数の多い車両を導入する」といったことが考えられがちです。
まず、ロングシートの車両を導入するということですが、もし嵯峨野線に導入するとなると、運用が限定的になって使いづらいという問題が生じます。
仮に221系や223系の代わりとして京都支所にロング車を導入した場合、従来の221系や223系が湖西線や草津線の運用も兼ねており、その線区でのロング車での運用は距離的、需要的には少し効率が悪くなってしまうのと、嵯峨野線内でも、混雑が集中する区間は最短でも京都市内、最長でも亀岡駅までとなるので、閑散区間内でのロング車運用における快適性の問題等も出てきます。
また、一部223系5500番台との併結運転もあり、JR西日本では基本的にロング車とクロス車の混在編成は、車内格差による混雑の偏りを防ぐためにも実施されていません。
新型車両の導入も、車両計画や予算面でそう簡単にできないのも実情ですね。
以上より、ロングシート車の導入は不適であると考えます。
次に、ドア枚数の多い車両を導入するということですが、嵯峨野線には近年4扉の車両が入線できなくなってしまいました。
それが、2019年開業の梅小路京都西駅です。こちらの駅は開業当初からホームドアが完備されており、そのホームドアは3扉の車両のみに対応したドアとなっています。そのため、物理的に4扉の車両は入れません。
このような事情もあり、今後も3扉クロス車での運用が続くものと思われます。
嵯峨野線に限らず、JR西日本では通勤時間帯に混雑が激しい路線でも容赦なく3扉クロス車に限定されているところが多く、近年では4扉ロング車が走っていた区間を3扉クロス車に置き換える路線もある(例:おおさか東線、可部線)ので、難しいところでもあります。
京都、二条〜亀岡、園部間を混雑を避けて早く快適に利用するにうってつけなのが特急列車。ほとんどの時間帯で毎時1本走っており、短時間でもゆったり利用することができます。主に通勤ラッシュ時間帯や、サンガスタジアムでの試合開催日において、嵯峨野線内での短区間利用が見られます。
しかし、2022年3月のダイヤ改正より、これまで一部車両に設けられていた自由席が全て廃止され、全車指定席となりました。
これにより、指定席よりも安く利用できていた自由席が使用できなくなったことで、従来の自由席利用者からすると、値上げを強いられることとなりました。
実際の料金は以下の通り(~50kmまでの料金のみ)。
指定席特急券の特徴に、時期において特急料金が変動するシステムがあり、日にちによって料金が安くなったり、高くなったりとなっていますが、それでも割高になってしまっています。
但し、先日のニュースリリースにおいて、2023年4月より、現行の指定席特急料金を更に値上げすることが発表されました。それが、「B特急料金のA特急料金化」です。
指定席特急料金の中にも、A特急料金とB特急料金の2種類があり、値段はA特急>B特急となっています。A特急料金の対象特急はJR北海道の全特急、JR東日本の「サフィール踊り子号」と「成田エクスプレス号」であり、それ以外の在来線特急はJR東日本近郊区間の特急列車を除いてB特急料金が適用されています。
しかし、昨今の経営状況から、JR西日本の近畿圏の特急列車を、B特急料金からA特急料金に統一する予定となりました。嵯峨野線の特急もその対象に含まれることとなり、A特急料金に改定された場合の特急料金(~50kmまで)は、
となり、従来よりも更に100円値上げとなります。
近年ではチケットレスサービスによる割引等も多く出ており、新幹線と利用すれば乗継割引で半額となったりとお得なサービスもありますが、それでも値上げされていることに変わりはなく、ここ数年で気軽に特急列車を利用できなくなってしまいます。こうなると、利用客が混雑を我慢して快速・普通列車に流れてしまうのも無理はありません。
ここまで、嵯峨野線の混雑問題に関して説明していきましたが、
といった原因が積もり積もってしまっています。これらの問題を解決するためには、
という方法となります。
しかし、今後の情勢と車両の事情によっては、ある意味解決が期待できそうな要素もあります。
まず、京都支所では、現在も湖西線や草津線で活躍している国鉄型車両の113系と117系を置き換えるために、近年の減便で余剰となった221系や223系を転属させて置き換える準備を行っています。
その転属した車両の中で特に注目しているのが、
の2種類の車両です。
まず、6両編成の221系と223系ですが、2022年9月現在、京都支所には6両編成4本(内221系2本、223系2本)が在籍しており、これらの編成は117系を置き換えるために他所から転属及び編成組み替えで留置されています。
これらの編成は湖西線や草津線の117系の運用を差し替えることが主目的ですが、同時に嵯峨野線における4両編成の運行を差し替えれば、6両編成の車両を嵯峨野線で走らせることが可能であり、混雑緩和につなげることができます。
事実、湖西線や草津線より嵯峨野線の方が利用者が多いので、改正のタイミングで新たに6両1編成の運用が嵯峨野線で誕生する可能性も考えられます。
次に、衝撃の転属で話題となった元日根野車の223系2500番台ですが、現在は4両編成2本が転属の上留置されています。この車両ですが、他の223系や221系と異なり、「座席配列が1+2の転換クロスシート」を採用しています。つまり、2+2の転換クロスシート車よりも座席が少ない分、立ち客のスペースが増えるため、混雑のピーク時間帯を中心に嵯峨野線の運用に入れる可能性が高いです。
転属と共に座席配列を2+2に改造する説も考えられますが、混雑が発生しやすい嵯峨野線において、1+2の2500番台の活用は混雑緩和対策に有効と言えます。
また、日根野支所の運用が大幅に減らされていることから、2編成が転属した現在でも日根野車の予備車は多く残っているため、今後の改正次第では、更に2500番台が転属する可能性も考えられます。
いかがでしたでしょうか?
今回は嵯峨野線の紹介と、嵯峨野線の抱える混雑問題に関して説明しました!
新型感染症の流行で減便の煽りを受け、流行前のような利用状況に戻らないと言われていますが、嵯峨野線には、
といった3要素によって鉄道利用は今後も保ち続けるものと思われますし、混雑のピークが重なることで多くの利用客で賑わうこととなるでしょう。
今後嵯峨野線が課題にどう立ち向かっていくのかを、注目して見ていこうと思います。
今回はここまでとなります!最後までご覧いただきましてありがとうございました!