皆様、こんにちは。U5swです。
今回は、最繁忙期に設定されるのぞみ号の全車指定席化に関して説明します!
東海道・山陽新幹線の東京〜博多間を結ぶ主力列車、のぞみ号。同路線の最速達種別かつ最も本数の多い列車であり、首都圏〜中京圏〜京阪神〜山陽〜福岡圏のアクセスの大動脈となっています。中でも東海道新幹線区間では、最繁忙期において、1時間に最大12本ののぞみ号を運行するほど、日本の交通アクセスで重要な役割を担っています。
全列車がN700系orN700S系の16両編成で運行されており、座席の種類は普通車自由席・普通車指定席・グリーン車指定席の3種類が設定されています。各号車ごとの座席の割り当ては、
となっています。
1~3号車を自由席としているのぞみ号ですが、この度、JR東海およびJR西日本が、1つのプレスリリースを発表しました。それがこちら。
https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000042944.pdf
東海道・山陽新幹線では、3大ピーク期(※1)において「のぞみ」号を「全席指定席 (自由席設定なし)(※2)」として運行することとし、今年度の年末年始期間(2023 年 12 月 28 日~2024 年1月4日)よりスタートします。
この冬、年末年始は「のぞみ」号を全席指定席として運行します ― 3大ピーク期に「のぞみ」号の指定席を増やし、ご予約いただきやすくします ― この冬、年末年始は「のぞみ」号を全席指定席として運行します ― 3大ピーク期に「のぞみ」号の指定席を増やし、ご予約いただきやすくします ―
東海旅客鉄道株式会社 西日本旅客鉄道株式会社
ご覧の通り、最繁忙期と言われている3大ピーク期(GW、お盆、年末年始)において、1~3号車の普通車自由席を”普通車指定席”に変更し、全てののぞみ号を”全席指定席”で運行すると発表しました。
今回の全席指定席化に至った背景としては、以下のようなことが挙げられます。
最繁忙期は主に帰省客や観光客で新幹線の利用が集中し、その分新幹線の座席が埋まります。特に、この時期は家族連れや複数グループでの移動が多く、1箇所に固まって利用するためにも座席を指定できる指定席の需要は高くなります。
よって、指定席の利用が集中してしまう最繁忙期は、早い段階で指定席が埋まってしまい、利用ができなくなってしまいます。たとえのぞみ号が毎時12本走るダイヤであろうが、指定席は一瞬にして満席になってしまいます。
そこで、1~3号車を指定席に変更することで、1列車あたり約2割指定席が増えることで、より多くの利用客に予約して着席できる機会が与えられます。
自由席は乗車駅と降車駅を予め設定しておくことで、その区間であればどの列車に乗車することができますが、座席が埋まっているか空いているかは列車に乗ってみないと分からず、また座席が全て埋まってしまった場合は、空席が出るまでデッキor通路で立って移動しなければなりません。
よって、最繁忙期の自由席利用者は、座席を確保できるように始発駅から乗車するようになりますが、その傾向が強くなるあまり、始発駅以外の途中駅から乗車する場合、座席が埋まり切ってしまって着席ができなくなってしまいます。
そこで、敢えて全席指定席にすることで、指定券を購入した方は始発駅でも途中駅でも不自由なく乗車することができます。
自由席は指定席と比べて安い値段で利用できること、座席や列車を自由に選べることから、繁忙期になると多くの自由席利用者が殺到します。そのため、1つの列車が来たとしてもすぐ座席は埋まってしまいますし、埋まった後も立ち客で満杯となるため、乗りたい列車に乗れなくなる自体はしばしば発生します。
そのため、いつどの列車に乗れるよう、自由席利用者はホームないしはコンコースで待機を強いられることも多く、あまりにも利用者が多いと長時間待たされる羽目になってしまいます。
また、多くの自由席利用者が待機列を作ることにより、ホームやコンコースでは長い待機列が発生してしまい、その待機列のせいで、自由席利用以外の乗客からすると、動線の妨げになってしまい、邪魔だと感じることでしょう。
特にのぞみ号の始発列車が多い東京駅や新大阪駅でその傾向がよく見られますが、こういった駅は新幹線に限らず常に利用者の多い駅となっているため、たくさんの利用客が行き交う大ターミナル駅において、極力このような待機列を作る機会は設けたくないでしょう。
そこで、のぞみ号の自由席をなくすことにより、自由席利用者の待機列を解消することができます。長時間待機することもなく、指定席のため必ず座席を確保できるため、待機列も自然と解消されて、動線の妨げもなくなることが期待できます。
自由席利用者は、自由席特急券を持っているだけでどの列車の自由席車両にも乗車することができます。そのため、自由席利用者からしたら、なるべく来た列車にいち早く乗車したいという心理が働き、立ち席での乗車だろうが多少無理してでも乗り込む方がおられるでしょう。
但し、そうなった際に、多くの乗降客が駅で乗り降りをすることで、自由席車両の乗降に時間をかけてしまいます。特に、立ち客が多いとなると、列車から降りる客が立ち客に動線を邪魔されてスムーズに降り口に辿り着けないことがよくあります。
こうなってしまうと、列車が決まった時間に出発することができず、遅延が常態化してしまうリスクが発生してしまいます。新幹線には遅延を回復できるシステムが備わっているとは言えど、中々回復させるのは難しいでしょう。
そこで、自由席車両をなくすことで、自由席車両に見られた、多くの乗客が集中してしまうことによる遅延の常態化を極力抑えることが可能となるでしょう。
ここからは個人的な私見ですが、近年の鉄道は在来線特急において全車座席指定席化の傾向が進んでいる中で、ついに1番主要な新幹線の”のぞみ号”にも全車座席指定化へのテコ入れが入ったかと思っています。
歴史を遡ると、1992年ののぞみ号運行開始から暫くは全車座席指定制を敷いていました(2000年からは満席ののぞみ号に限り、のぞみ料金を少し値下げした立ち席特急券も販売されていた)が、のぞみ号主体のダイヤになってきたため、2003年10月1日のダイヤ改正でのぞみ号にも自由席が設定されるようになりました。即ち、全車座席指定化は登場当初のスタイルに戻ったとも言えます。
最繁忙期に全車座席指定化に至った理由としては、上記のような背景が全てと言えますが、個人的には、これらの背景に加えて、快適な居住性の確保や、ひかり号やこだま号への乗車率向上、最繁忙期以外での新幹線利用促進も目的に挙げられると考えています。
加えて、エクスプレス予約といったチケットレスサービスも定着してきており、これらのサービスを利用することで、普通に指定席券を買うよりもお得に買える場合もあるため、そちらのサービスの利用を促進される働きもあるのでしょう。
また、JR東海やJR西日本からすると、
“のぞみ号を全車座席指定化させて運行させた場合、新幹線の利用や乗客の流れ、定時性をどれだけ確保できるのか?”
という社会実験的な要素を持った取り組みを行おうという考えもあるでしょう。自由席をなくすことでどのような変化が起きるのかを試しつつ、収穫点や課題点を洗い出して、今後のサービス向上に努めていく狙いもあると言えます。
このように、最繁忙期に全車座席指定化を行うのぞみ号ですが、自由席特急券を持っている方が絶対のぞみ号に乗車できないわけではないようです。
実は、自由席特急券を持っている乗客でも”のぞみ号に乗車することは可能”です。
但し、“座席に着席することはできず、普通車のデッキ等の立ち席での利用のみ”に限ります(座席に着席する場合は、その場で指定席料金を支払う必要がある)。
また、のぞみ号以外の列車の自由席が混雑した場合、自由席特急券を持っている乗客に対し、のぞみ号の普通車のデッキ等で立ち席扱いで利用を勧める場合があるとのことです。その場合は係員の指示によって、どの車両に乗車するか従う必要があります。
ここからは私見ですが、個人的に懸念していることとしては、
「立ち席の自由席特急券の乗客が集中してデッキに立つことで、ほとんどの号車で乗降に時間がかかってしまい、かえって遅延が常態化してしまうのでは?」
ということです。自由席特急券を持っている乗客は、1つの列車に乗車するのに制限人数がなく、車両に乗れるだけ乗れる形となってしまいます。そのため、自由席利用者がデッキ等に集中してしまい、しかもその車両が普通車指定席車両の全てに適用するとなれば、ほとんどの号車において、デッキ等に利用客が集中してしまうことで、駅での乗降に時間がかかってしまう恐れがあります。そうなってしまうと、かえって遅延を常態化してしまうのではないかと考えています。
勿論、日本の主要幹線である東海道・山陽新幹線において、繁忙期は多くの乗客が殺到するため、立ち席なしの全車座席指定制を敷いてしまうと、乗客を捌ききれなくなるため、立ち席に限り自由席特急券を持っている乗客でも利用できるようにしていると思われますが、上記のような定時性に対するリスクが大きくなってしまう恐れがあるため、正直どうなのかなと思っています。
もし立ち席の乗客を乗せる場合は、自由席特急券での乗車ではなく、”列車指定制の立ち席特急券”を数量限定にして販売した方がいいのでは?とも思います。そうすれば、乗降の際に乗客が多いことで、乗降の時間が長引いてしまうことによる遅延リスクを最低限抑えられるのでは?と考えています。
次の年末年始の”のぞみ号”がどういう人の流れに変わるのか、注目して見ていきたいところですね。
今回の全車座席指定化の対象列車は”のぞみ号”のみであり、他の列車である”ひかり号”、”こだま号”、および山陽新幹線のみ並行して走る”みずほ号”、”さくら号”には、それぞれ自由席が設定されています。これらの列車において、のぞみ号を回避して有効活用できる手段はあるのか?各列車ごとに説明します。
東海道新幹線区間では1時間に2本運行されているひかり号。自由席は16両編成中、1~5号車の5両分設定されており、従来ののぞみ号よりも2両分自由席車両が多くなっています。
その内、毎時1本運行されている、東京〜岡山間の”Sひかり”は、新横浜〜名古屋間は静岡駅や浜松駅といった静岡県内の駅に停車する代わりに、名古屋〜京都間はのぞみ号と同様ノンストップで運行するため、名古屋〜京都・新大阪・新神戸間においてはのぞみ号の代わりとして有効活用できます。
一方、もう毎時1本運行されている、東京〜新大阪間の”Tひかり”は、新横浜〜名古屋間は途中小田原駅または豊橋駅のどちらかに停車するのみであり、しかも両駅において後続ののぞみ号に一切抜かれないため、東京・品川・新横浜〜名古屋間においてはのぞみ号の代わりとして有効活用できます。
なお、山陽新幹線内は本数が少なく、Sひかりに関しては各駅停車なので、代わりとしては少し厳しいです。
ひかり号の停車駅と時刻に関しては、こちらの記事で詳しく紹介しています!
ほとんどの区間で毎時1~2本運行しているこだま号。自由席の車両も多く、
と多くの自由席車両が確保されています。
しかし、こだま号は”全区間各駅停車”の列車であり、ほとんどの駅において後続列車に抜かれまくる列車であるため、こだま号の利用は、”速達性を完全に捨てた移動”が前提となってしまいます。
1日に8往復の運行と本数は少ないですが、新大阪〜博多間ののぞみ号と同等の速達性を持っており、自由席も1~3号車に設定していることから、のぞみ号の代わりには十分なり得る存在です。但し、短い8両編成での運行ということもあり、最繁忙期だと自由席に座れない可能性も大いにあり得るので、気をつけた方がいいでしょう。
みずほ号の停車駅と時刻に関しては、こちらの記事で詳しく紹介しています!
山陽新幹線内では毎時1~2本の運行となっているさくら号。のぞみ号よりも停車駅が1~2駅多い列車となっていますが、下りは山陽新幹線内全区間において先着する列車が多いのに対し、上りは徳山駅でのぞみ号の通過待ちを行う列車が多い傾向にあります。よって、のぞみ号の代わりとしてさくら号を利用する価値はほぼあると見ていいでしょう(1度ほどの通過待ちを許容することを前提とした移動ならば)。
但し、みずほ号同様、短い8両編成での運行ということもあり、最繁忙期だと自由席に座れない可能性も大いにあり得るので、こちらも気をつけた方がいいでしょう。
さくら号の停車駅と時刻に関しては、こちらの記事で詳しく紹介しています!
いかがでしたでしょうか?
今回は、最繁忙期における、のぞみ号の全車座席指定化に関するニュースを説明しました。
のぞみ号の自由席をメインで利用されてきた方にとって、苦渋の選択を迫られることとなりますが、
これらの豊富な選択肢の中で、どれを選択して利用するのかは貴方次第。このことからも、のぞみ号の全車座席指定化は、最繁忙期の移動を見直す上でいい機会になるのではないでしょうか?
全車座席指定化後ののぞみ号によって、最繁忙期の新幹線はどうなるのか? 私も状況を見ていきたいなと思っています。
今回はここまでとなります。最後までご覧いただきましてありがとうございました!