皆様、こんにちは。U5swです。
今回はデュアルシート車両で運行している座席指定列車の状況に関してまとめていきます!
前回投稿した「S-TRAIN」の記事において、
と紹介し、後者の利用状況の改善案に関して述べていました。
そこで、他の大手私鉄の鉄道会社における、”デュアルシート車両で運行される座席指定列車”の利用状況はどうなっているのか? 今回はこの列車たちを見ていこうと思います。
デュアルシートは、
の2種類の座席を両方に切り替えられる座席のことを指します。
基本的にライナー列車運行時は「クロスシート」、それ以外の一般列車は「ロングシート」で運行しています。
対象の座席指定列車、および対象の車両を以下にリストアップします。
「デュアルシート車両を使用したライナー列車」の先駆けとなったのが、東武東上線の「TJライナー」です。TJライナーの運行開始に合わせて、東武のカボチャシリーズ50000系のデュアルシートver.である50090型が10両編成6本製造されました。
当初の導入目的は池袋駅から帰宅時間帯に、混雑を避けてゆったりと帰宅できる列車が必要だったためです。東武鉄道では、「スペーシア」といった特急専用車両を保有していますが、これらは全て伊勢崎線や日光線を始めとした「本線系統」のみの所属であり、「東上線系統」には特急専用車両がなく、全て乗車券のみで乗車できる列車のみの運行でした。但し、東上線系統に特急専用車両を導入してしまうと、特急列車のみでしか運用に就けず、運用効率の悪化や車庫容量の逼迫に影響を及ぼすデメリットがありました。
そこで東武は、特急専用車両を導入するのではなく、ライナー列車と一般の通勤型列車どちらでも併用できる車両を導入し、特急列車の代わりとなるライナー列車の運行を行うことを決めました。
“池袋駅から混雑を避けて座って帰宅することができる”ことが大きな強みとなった結果、利用は好調であり、改正のたびに運行本数を増加させていき、2016年には平日朝ラッシュ時に池袋行きのTJライナーの運行も開始されました。
新型感染症の影響で利用者は落ち込むものの、ダイヤ改正での減便等が行われていないことを踏まえると、「TJライナーの運行は大成功を収めている」と言って良いでしょう。この TJライナーの成功が、後々の座席指定列車導入ブームへと繋がることとなります。
なお、車内サービスに関しては、2008年製造ということもあり、ドリンクホルダーや電源コンセント等の設備はありません。また、東武50000系列は座席が硬いで有名であり、この50090型も例外なく硬いため、乗り心地は断トツで良いとは言い難いです。
ちなみに、東武50090型のクロスシート運用はTJライナー以外に、
でも運行されており、これらは乗車券のみで乗車できるので、クロスシートの列車に乗車しやすくなっています。
(2023.7.11追記) 2023年のダイヤ改正で、平日下り1本と上り1本が増発、また、これまで設定のなかった土休日上りのTJライナーが新設され、3本運行されるようになりました。
TJライナーの登場から10年、これまで全列車が乗車券のみで乗車できる列車を運行し続けてきた京王が初めて有料座席指定列車を導入することとなりました。それが「京王ライナー」です。
京王ライナーの運行開始に合わせて、デュアルシート車の京王5000系が新規製造され、2023年現在では10両編成7本が在籍しています(2022年10月に1本が新製)。
運行開始当初は下り京王八王子行きと橋本行きのみの運行であり、その1年後には上り京王八王子発と橋本発の運行を開始しました。また、土休日の行楽シーズン時において、高尾山方面への観光・ハイキング客を目的とした、高尾山口発着の臨時ライナー列車が運行されており、当初は下りも上りも新宿〜高尾山口間ノンストップの列車が運行されていました。
その後、2021年10月のダイヤ改正で新宿発高尾山口行きのノンストップライナー列車「Mt.TAKAO号」と、高尾山口発新宿行きの「京王ライナー」が、土休日に限り定期列車されました。
また、これまでは明大前は通過(但し、保安装置の関係で運転停車)扱いとなっていましたが、井の頭線の下北沢・渋谷方面および吉祥寺方面へのアクセス向上のために、2021年10月の改正で土休日のみ、2022年3月の改正で平日の全列車が明大前に停車するようになりました。
元々京王は運賃が安いことと、世界一の大ターミナル新宿駅を起点としているため、全体的に利用者が多く、ラッシュ時を中心に混雑が目立つ路線でした。
また、新宿〜京王八王子、高尾間はJR中央快速線、新宿〜京王永山、京王多摩センター間は小田急小田原・多摩線と競合区間であり、前者は多くの快速列車に加えて全車指定の特急列車(八王子のみ)も運行されており、後者は2017年の小田急小田原線代々木上原〜登戸、向ヶ丘遊園間の複々線化完了に伴う増便および時間短縮を実現したことから、有効な対抗策を提示することが求められていました。
そこで、大都会新宿と多摩地区、相模原を混雑を避けて座って快適に移動することができるライナー列車が必要となり、京王ライナーが登場したと考えられます。
全体の利用状況を踏まえると、京王がほぼ直線的に新宿と多摩地区を結んでいること、運賃の安さが強みなこと、登場からここまで増便、新規設定のライナー列車が増えていることから、「京王ライナーの運行は成功」と言っていいでしょう。唯一の懸念点は高尾山口発新宿行きのライナーの利用状況がそこまで良くないことでしょうか。
車内サービスに関しては、フリーWi-Fi、電源コンセント、空気清浄機、暖色の照明(ライナー運行時のみ暖色)等が完備されており、座席もそこまで硬くないことから利用しやすいと言えます。
なお、デュアルシート車全体の欠点として挙げられる、「座席のリクライニング機能が搭載できない」ことに関してですが、以前京王が「リクライニング機能を有したデュアルシートを搭載した京王5000系」を新たに導入する計画を発表しており、これが実現すればさらに快適な移動ができるものと思われます。この件に関しては、こちらの記事でも紹介しています。(2022年10月に7編成目となる5737Fがデビューし、その編成がリクライニング機能付きの座席を搭載している)
また、検討段階ではありますが、京王5000系の増備によって、日中時間帯にも京王ライナーを運行する計画があります。今後の発展に期待です。
西武新宿、高田馬場から拝島線沿線への帰宅ラッシュ時間帯に運行されるライナー列車です。S-TRAIN用に製造された西武40000系を使用しており、全6編成の内2編成を活用して運用を回しています。
高田馬場→小平間をノンストップで走破し、かつ小平駅で東村山・所沢・本川越方面の列車と接続を取るため、小平以遠の座って快適に帰りたい沿線ユーザーのために活躍しています。ライナー料金も400円(元は300円だったが値上げ済)と安い方であり、新宿→拝島間ではJR中央快速線・青梅線の競合相手として有力な存在でもあります。
車内サービスはドリンクホルダーや電源コンセント(但し、窓側のみ)が各席で完備されており、4号車には車内トイレも設置してあります。
小平以遠のユーザーに対して利用しやすく、ライナー料金もお手頃価格ということから、平日を中心に利用者はとても多く、「拝島ライナーの運行は成功」と言っていいでしょう。
今後の拝島ライナーの発展策として、上りの朝時間帯に拝島ライナーが新たに設定されるのかが注目です。線路容量や西武40000系の運用の都合で現段階では厳しいと思いますが、JRとの対抗やラッシュ時の着席保証の需要を踏まえた時、運行させるメリットは十分あると考えています。今後の更なる発展に期待です。
(2023.7.11追記) 2023年3月のダイヤ改正において、待望の上り拝島ライナーが平日朝に設定されました! これにより、拝島線沿線および小平から都心方面への着席需要が高まり、より快適に通勤できるようになりました。
2008年から運行を開始した大井町線急行ですが、平日夕ラッシュ時に大井町駅を発車する急行の一部列車において、7両編成の内1両(3号車)を座席指定車両「Qシート」として、2018年12月より営業運行を開始しました。Qシートの営業開始に伴い、大井町線急行運行開始時より運行している6000系の2編成を、また、急行増発用に新規製造された6020系の3号車を、デュアルシート搭載の車両に置き換えています。
Qシート車両は、他の一般車両と区別をつけるために、オレンジ1色の塗装となっています。Qシート運用時にはクロスシート状態、その他の急行列車はロングシート状態で運行しています。
※但し、折り返し運用がQシート運用の急行列車の場合、大井町行き急行の3号車はクロスシート状態で座席指定料金なしで乗車できるようになっている(座席の向きは逆向き)。
車両にはフリーWi-Fi、電源コンセント、カップホルダー等が備え付けられています。
大井町線の都心部および、他の東急との接続駅に停車し、田園都市線の郊外への帰宅需要に応えた車両となっており、この時間帯の急行列車はかなり混雑するため、Qシートの需要は大きく、「Qシートの運用は成功」と言っていいでしょう。その効果として、2023年には東横線にもQシートが導入されることが発表されています。
但し、Qシートは一般列車の中の一部車両に組み込まれて運行を行なっているのが、他のライナー列車との違いであるため、Qシートを運用している急行列車では、他よりも一般車両の混雑度が上昇しております。特に、Qシート車両の両端にある2号車や4号車は特に混雑します。また、田園都市線内に限れば、基本10両編成の列車が走る路線に短い7両編成の急行列車が乗り入れており、Qシートを運用している場合は一般車両が6両分しかないことから、二子玉川、溝の口あたりではピークに達してしまっています。
よって、今後導入される東横線においても、他の一般車両との混雑対策をどう講じていくのかが課題です(東横線のQシートは2両分導入される予定)。
Qシートに関しては、以下の記事でも紹介しています。
(2023.7.11追記) 2023年3月の改正より、たまプラーザ→長津田間はフリー乗降区間で、指定券を購入されていない方でもQシート車両を利用することが可能でしたが、フリー乗降区間が撤廃され、終点長津田まで降車専用駅となりました。これにより、Qシート車両を乗車券のみで利用することはできなくなりました。また、座席指定料金も400円から500円へと値上げされています。
この改革に関しては、フリー乗降区間をなくすことで、Qシート課金利用者が全区間において、途中フリー乗降区間から乗客が入って来ず、全区間快適に利用できるためのサービス向上策と考えられます。また、値上げに関しては、東急全体の増収策(運賃改訂も同時に実施)およびQシートサービス向上の目的があると思われます。
東武線と日比谷線を直通する初のライナー列車として設定されました。THライナー運行にあたり、ライナー時はクロスシート状態、それ以外の普通列車運用時はロングシート状態で運行するデュアルシートを搭載した東武70090型が6編成製造されました。
車内にはフリーWi-Fi、ドリンクホルダー、電源コンセント、荷物フック等を用意しており、車内での移動しやすさを保証しています。
東武伊勢崎線のベッドタウンと言われる主要駅と、日比谷線の主要駅を結び、通勤輸送から都心へのお出かけ需要に応えたライナー列車ですが、現状はとても厳しく、運行区間全体において座席がガラガラな状態となっています。そのため、「THライナーの運行は失敗」と言わざるを得ません。
THライナーの運行が躓いてしまっている理由として、
ことが考えられます。
これはS-TRAINの際にも述べましたが、複数の鉄道会社を跨ぐ場合、各鉄道会社が設定したライナー料金を合算するため、他のライナー列車よりも割高になってしまいます。また、運賃も複数の鉄道会社がそれぞれで設定した運賃を合算するため、1つの鉄道会社を乗り通すより高くついてしまいます。
このライナー料金の高さが、利用者から敬遠される大きな原因になってしまっていると考えています。
ちなみに、西武池袋線と東京メトロ有楽町線の2社を直通運転している平日のS-TRAINは大人510円、小児260円で運行しているのに対し、東武伊勢崎線と東京メトロ日比谷線の2社を直通運転しているTHライナーはそれ以上の値段がかかってしまっています。会社が異なるためそれぞれの取り決めがあるとはいえ、これだけ利用率が低い場合、ライナー料金の見直しを図る必要があると思います。
THライナーは伊勢崎線、日比谷線両路線で途中駅を通過する運行を行なっています。この内伊勢崎線は特急や急行と言った優等種別が運行されているため、速達性は確保されていますが、問題なのが日比谷線です。元々日比谷線は全ての列車が各駅に停車しており、THライナーが日比谷線内で初めて通過運転を行う列車となりました。そのため、日比谷線内で優等列車を待避できる設備はなく、ライナー列車は駅を通過しても先行の普通列車に詰まってしまい、ノロノロ運転を強いられています。特に、日比谷線は短い間隔で高頻度運転を行うことから、常に低速で日比谷線を走らなくてはなりません。
よって速達性の面で大幅にデメリットが生じており、その遅さから利用率が低くなっているものと思われます。
東武の象徴と言えば東武特急。快適な車内で速く移動することができ、東武の経営を支える大黒柱となっています。
その東武特急ですが、THライナーと並行して走る北千住〜久喜間においては、北千住が全ての特急が停車駅、せんげん台・春日部・東武動物公園・久喜が一部特急の停車駅となっており、これらの駅では当然ライナーより特急に流れてしまっています。特に北千住駅はライナーが停車しません(但し、乗務員交代による運転停車を行う)が、全ての特急が停車すること、日比谷線を初めとする多くの鉄道路線と乗り換えが可能なことから、日比谷線オンリーのライナー列車より、乗り換えを挟んでも多くの路線を利用できる特急を選ぶ方が多いでしょう。
また、車内サービス面においても、特急専用列車と一般列車の運用も兼ねた通勤型列車では明らかに車内サービス面で優劣が生じており、サービスの充実度から特急に流れるのは宿命でしょう。
個人的に特急が停車しない駅で需要を賄う必要があると考えており、2021年4月から6月にかけて下りのTHライナーで実証実験を行った「草加駅停車」といったことをやっていくべきだと考えています(但し、そこまで効果がなかったので停車化しなかったと言われると否定はできないが…)
これは久喜と上野or恵比寿の間を利用する方に限った話ですが、これらの利用は割高かつ速達性に欠けるTHライナーより、並行して走るJR宇都宮線(湘南新宿ライン)に利用者が流れてしまいます。
JRの場合、都心部は主要駅しか停車しない中距離列車であり、速達性が確保されている他、乗車券のみでの乗車に加えて「普通列車グリーン車」を連結しており、車内の快適性も保証されています。
そのため、今の運行区間だとTHライナーを久喜まで運行するメリットはほぼありません。思い切って館林方面まで運行させるか、日光線の南栗橋へ運行を変更させるか、運行区間を短縮するかといった見直しを行う必要があります。
以上の現状から、今後利用者アップに繋げるための課題を以下に挙げるとすると、
これくらいは徹底的に行う必要があると考えています。
平日朝ラッシュ時に横須賀地区から都心を座って快適に移動できる「モーニング・ウィング号」の内、3号のみ2020年に製造された1000形1890番台が使用されています。
この形式はウィング号やイベント列車の際はクロスシート、それ以外の通勤列車ではロングシートで運行できる「デュアルシート」を採用しています。中間車に車内トイレを設置し、座席には電源コンセント、ドリンクホルダー、荷物フックを採用するなど、京急2100形には採用されていない設備を搭載しています。
三浦海岸→金沢文庫間は、1000形の4両編成単独運転で運行を行い、金沢文庫で前に2100形8両編成を連結し、金沢文庫→品川間を12両編成で運行しています。
元々モーニング・ウィング3号の利用者が多く、12両編成での運行が求められていたこと、三浦海岸と横須賀中央からの需要は4両編成で十分なことから、「1000形1890番台によるモーニング・ウィング3号の運行は成功」と言っていいのかなと思います。座席指定料金も300円でリーズナブルです。
但し、1000形1890番台の利用が三浦海岸と横須賀中央からの乗車でしか利用できず、金沢文庫、上大岡からの乗車は2100形に限られます。また、1000形と2100形の間は通り抜けができず、電源コンセントや車内トイレ等が利用できないので注意が必要です。
また、今のところ座席指定列車はこの列車以外全て2100形の運行となっており、今後1000形が充当される可能性は低いですが、今後ライナー列車に改革が生じれば、1000形の活躍範囲も広がると思うので、これからの動向に注目です。
いかがでしたでしょうか?
今回はデュアルシート車を活用した座席指定列車の利用状況に関してまとめました。
改めて整理を行うと、
という形となりました。このことから、
であることがわかります。後者が上手くいかない理由としては、
この3つが大きな要因と考えられます。
これらの課題を解決するために、失敗気味の座席指定列車に関しては可能な範囲で手を打っていただきたいものです。
2023年には東横線でQシートが導入するなど、今後も座席指定列車の拡大はあちこちで進むものと思われるので、今後の発展に期待しましょう。
今回はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました!